南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

土橋真二郎の新作「ツァラトゥストラへの階段」

2007-11-14 00:08:17 | 読書
 土橋真二郎さんの新作、「ツァラトゥストラへの階段」読みました。
 この人の前作「扉の外」が非情に気に入ったので読んでみたのですが、それほど期待はしていませんでした。
 なにせあらすじがこんな感じ。

「大昔の神と崇められる存在や、歴史上の英雄などは、パルスをコントロールしていた存在なのよ」

 得体の知れない”存在”――パルス。パルスは人の精神に寄生する。パルスに寄生されると宿主となった人間の知力・体力があがり、また特殊な力が生まれる場合もあるという。
 そんなパルスに感染していることが発覚した高校生・福原駿介の運命は一気に動きはじめた。パルスを制御しようとする組織の存在。そして、同じくパルスに寄生されている少女との出会いが――。
 緊迫のストーリー、開幕!

 てな、感じですよ。
 このあらすじを読む限り、どう考えても能力バトルです。
 きっと「扉の外」のような路線が読者から受け入れられず、編集者から路線変更命令が出たんだな、と勝手に解釈しておりました。
 で、いざ読み出してみたら、
 ちっとも変わってねええええ!
 これは嬉しい誤算ですよ。
 もう最初からカイジだかSAWだかのような展開です。
 目をさますと、鎖でつながれている主人公。まわりには同じような男女が十人。
 人形によって、脱出のためのルールが説明されますが、例によってかんじんなルールは説明されず、試行錯誤で推理していくしかない。
 もう、ほんとにこんな展開がだいすきですねえ、土橋さん。もちろん南野も大好きですよ。
 この中で、裏切ったり騙したりの展開がくり広げられていくわけです。
 ところが、これはパルスを覚醒させるための試練でしかなかった。
 こうして、パルスに目覚めた主人公、福原は、自分の姉がやはり一度はパルスに目覚めたあと、ある組織によってプリズナーとして、ゲームのコマになっていることを知ってしまいます。
 そして姉を捜すためのゲームに参加するわけです。その内容というのがまたぶっとんでます。
 ライトノベルなのに仕手戦やってるぜ!
 仕手とは株を大量に買い、株価の値上げを誘導しつつ、自分は高値のまま売り抜けるというやつです。
 はっきりいって南野、こんな言葉、福本伸行の「銀と金」を読むまで知りませんでしたよ。
 普通の中学生や高校生が知ってるわけもありません。
 無謀だ。あまりにも無謀だ。だが、それがいい。
 福原は前のゲームの賞金一千万と自分自身を担保に借りた金で、相場を操作しようとするのです。
 相場といっても現実の株式市場ではなく、人工的な世界のもの。プリズナーに落とされた女達がバトルガールとしていろんな武器で戦うのですが、その勝敗などによって武器や、バトルガール自体の相場が上がったり下がったりするわけです。
 で、戦うと言っても、実際に彼女たちが武器を使って戦うわけではなく、感染しているプレーヤーたちが武器やバトルガールの株を売買することでレートが動き、攻撃力や守備力が変化していくといったもの。
 まさに仕手戦を女同士の戦いに具現化したようなものです。
 そうか。福本伸行にオタク成分を注入するとこうなるのか?

 まあ、純粋に能力バトルを期待して読んだ中学生はどう思ったか知りませんが、これは傑作です。
 読むべし。

ツァラトゥストラへの階段 (電撃文庫 と 8-4)
土橋 真二郎
メディアワークス

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