goo blog サービス終了のお知らせ 

生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

福島原発事故104:原発リスクと地球温暖化リスク(8)

2011年04月26日 22時26分47秒 | 生命生物生活哲学
2011年4月26日-7
福島原発事故104:原発リスクと地球温暖化リスク(8)

 飯田哲也氏は、「緊急会議 飯田哲也×小林武史 (2) 「なぜ原子力を選んだのか?」
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110408_5008.php

で、自然エネルギー発電が推進されず、(核分裂型)原子力発電が推進された事情を語っている(ようだ)。

  「原子力はコスト以前にリスクが問題なのです。これは安全性のリスクよりもむしろ、金融投資リスクなんです。実は世界的には、特に金融機関が原子力には怖くて投資や融資ができないというトレンドがはっきりあります。」
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110408_5008.php

と述べている。原子力発電所の建設に膨大な金がかかるかららしい。しかし安くても、放射性物質の処理はできないに等しいのだから、原子力発電所は、運転中のも止めるべきである。

 また、

  「スウェーデンやデンマークやドイツ、オーストリアでは、実はチェルノブイリではなくてスリーマイルの事故によって、原子力政策が死んだんです。そのあと日本で唯一、国全体の大きな議論に原子力が上がりかけたのがチェルノブイリ原発事故(1986年)です。それも、その後の地球温暖化の議論のなかで、原子力が有効だという話に掻き消されてしまった、というのが大きな流れかなという感じですね。」
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110408_5008.php

と述べている。地球温暖化脅威論の影響力あるいは利用価値は大きかったようだ。
 日本での生活環境全体の安全を考えれば、地球温暖化対策よりも、原発を止めることが優先するべきだと思うのだが、日本での原発リスクは計算されたのだろうか?
 放射性物質はそれ自体が毒物であり、核種もたくさんある。原発による温排水のよる直接の温暖化と、海水温上昇による二酸化炭素の放出量はどれくらいなのか? IPCC報告書に見積もりはあるのだろうか?

 検索すると、
 「地球温暖化対策には、原子力エネルギーの平和利用の拡大が不可欠」という主旨の委員会決定を見て、「原子力発電は、直接人為的に地球を温暖化すると考え」て、「地球環境保全・エネルギー安定供給のための原子力のビジョンを考える懇談会報告(案)」への意見または質問を寄せたものに対して、

  「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書によれば、現時点で温室効果ガスとして蓄積された二酸化炭素による温暖化効果(放射強制力)は 1.66W/平方メートルとされており、地球全体では約846,600GWとなります。これに対して、合計約370GWeの世界の原子力発電所が発生する熱は、効率を33%と仮定すると最大でも約1110GWであり、二酸化炭素による温暖化効果の約0.13%となります。
したがって、原子力発電所が発生する熱による地球温暖化への影響は、温暖化効果ガスの影響に比して、無視しうるほど小さいものと評価できます。
一方、合計370GWeの世界の原子力発電所の代わりに火力発電を利用したとすれば、最も温室効果ガス排出量が少ないLNG 複合サイクル発電を用いた場合でも、世界の二酸化炭素排出量は、年間11 億トン(2005 年の世界総排出量の4%)増大することにとなり、原子力エネルギーの利用が温暖化防止に貢献していると言えます。」(内閣府原子力委員会)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/qa/iken/iken-q94.htm

と回答されていた。原発周辺の海水温上昇による空中への二酸化炭素放出はどれくらいなのだろうか?
 IPCC報告書の主張の妥当性はわからないが、環境問題を温室効果ガス排出、とりわけ二酸化炭素だけを問題とするという他の危険性を考慮しないという構えのように思える(部分知)。
 環境保護団体は、温室効果ガス排出よりも、日本での原発運転のほうが、今そこにある危険だとは思わなかったのだろうか? 今も、有毒廃棄物をどんどん製造しているのである。予防原則の適用の優先順位は、評価しなかったのだろうか? 
 中西準子『環境リスク学-不安の海の羅針盤』では、タバコの健康(発癌?)リスク〔危険性〕が、取り上げられたなかでは最も高かったと思う。放射性物質のポロニウムを肺に吸い込むことにもなっているらしい。

 The New York Timesの2006年12月1日の「Puffing on Polonium」と題する、
http://www.nytimes.com/2006/12/01/opinion/01proctor.html?ex=1322629200&en=4ee500d84a3216dc&ei=5089&partner=rssyahoo&emc=rss

を紹介している
http://blog.goo.ne.jp/cancerit_tips/e/d35d5b67239f5909513171c38899e275

によれば、

  「ウラニウムは土壌に自然に存在しており、それが選択的にタバコの木に吸収され、そこで崩壊して放射性ポロニウムとなる。高濃度のリン酸を含む肥料は、ウラニウムがリン酸と結びつくことからさらに事態を悪化させる。
  1968年、〔略〕タバコ1本平均0.04ピコキュリーのポロニウム210を喫煙者が吸引していると判明した。
  〔略〕ポロニウム210の半減期は138日で、初期の原爆の核燃料より何千倍も強い放射性物質なのだ。」
http://blog.goo.ne.jp/cancerit_tips/e/d35d5b67239f5909513171c38899e275

 歩行喫煙の副流煙によって、われわれが歩いている生活空間にも放射性物質をまき散らしていることになる。実際、副流煙による発癌率も大きい。

 http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09010403/02.gif
によれば、生の魚製品1kg中のポロニウム210の放射能濃度は、2000 mBqである。米ソの核実験と原発からの放出によって、地球は汚染されてしまっているということだろう。

 
 さて、飯田哲也氏は、

  「「経産省は、建前は再処理推進を装いながら、実質的には差し止めろ」と部下に命じて、経産省の経済合理派の役人は、六ヶ所再処理工場を止めるほうにまわった〔略〕。〔略〕「六ヶ所があまりにも経済合理性に合わないから、あんなものを作っていたら日本の原子力は逆にダメになる」という、日本で初めて生じた経済合理性をめぐる対立だったのです。しかし、それも結局は原子力ムラの人たちにつぶされてしまった。あれが2004年なので、そこからの7年間は、日本では原子力政策に関して、まっとうな理論がまるでできない、本当に歯止めのない期間でした。
   〔略〕
   電力の既得権益には大きく分けて2つのセクターがあるんです。独占を守りたい人たちと、原子力に思い入れがある人たち。この両方にとって、自然エネルギーのような小規模で分散型なエネルギーが広がっていくというのは、非常に面白くない。」

と述べている。
 では、自然エネルギーの問題点は何か、それが過渡的なものだとすれば、早急にどのような電力源を開発し利用すべきか?