過労労災を解決した橋さんが龍基金授賞式で発言

（上の写真＝授賞式で発言する橋美智代さんと子どもたち）

「あの時の努力がなければ、この生活はあり得なかった」

「過労死をなくそう！龍基金」が８月１日に開いた第４回中島富雄賞授賞式で、夫の過労労災をめぐって龍基金を通して解決を果たした橋美智代さんが一家で参加し、「過労事件があったら、あきらめずに龍基金に相談してほしい」と呼びかけました。

橋さんの夫・直彦さんは石油会社のグループ企業で働いていましたが、長時間労働の末に２００６年１１月にくも膜下出血で倒れました。一命はとりとめたものの、脳の前頭葉を切除するなどで重い障害が残りました。龍基金に相談した妻の美智代さんは、全国一般東京東部労組や過労死弁護団の玉木弁護士の協力を得て、２００８年５月に会社の謝罪や補償、再発防止の約束を実現して解決することができました。詳細はこちら。

以下に橋さんが授賞式で読み上げた文章を掲載します。

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晴香さん、本日は第４回目の中島賞の授賞式開催おめでとうございます。

富雄さんが亡くなって６年がたとうとしています。とても辛い日々だったと思います。そんな中、過労障害で入院している私の夫の労災申請中、晴香さんは電話やメールを何度もくれて、私を励ましてくださいました。

私の夫、橋直彦は平成１８年の１１月にくも膜下出血で倒れました。長男が７ヶ月の時でした。朝早くから夜遅くまで働き、毎日とても疲れて帰ってきました。休みは倒れるころ、６年で２４日ほどだったと思います。「休みたくても休めない」と話していました。ついに本当に夫はくも膜下出血で倒れてしまいました。奇跡的に一命をとりとめ重い記憶障害が残り、仕事もできず通所をして過ごしています。

もしかしたら倒れるのでは？と思い、子どもの育児日記に夫の出勤・帰宅時間をつけ始めました。会社に長時間労働をしていたので残業代を求めましたが、上級管理職だからと言って取り合ってくれませんでした。

そして知り合いに平成１８年１２月の新聞の「過労死をなくそう！龍基金」の切り抜きをもらい、中島晴香さんの存在を知り、晴香さんと会いたい、文通したいという目的で電話をしました。いろいろ話を聞き、よく考えて東部労組に入りました。

会社は労災申請したものの、労働基準監督署に出した資料を見せる必要がないと言ったり、団交で私が希望する資料を準備する時間がないと言ったり不誠実な対応を取ってきて、とてもショックでした。

東部労組のスタッフの方とたくさんの資料を必死に集め、一緒に労働基準監督署に要請・交渉をしに行き、平成１９年６月２７日、労災が認定されました。育児日記の労働時間も少しは役立ったかもしれないと思います。会社と東部労組の方とで折衝を重ねた結果、裁判を起こすことなく納得いく和解を得られました。職場で労働環境の改善に努めて過労労災が二度と出ないよう再発防止策を実施するということも約束しました。

今、育児や介護であっという間に時間が過ぎてしまいますが、この時期になると晴香さんのこと、夫が倒れた時のこと、いろいろ考えます。夫は死ななかったけど、家庭のすべての判断は私にかかっている、誰にも相談せずに決めていかなくてはならない。結構大変かもと思います。

でも、あの時の努力がなければ、この生活はあり得なかったと思います。

あの時の約１年半協力してくれた方々、東部労組の方、他労組、マスコミの方、過労死弁護団事務局長の玉木先生のアドバイス、本当に力づけられました。ありがとうございました。

同じ悲しみや苦しみを繰り返さないため、すべての職場で長時間労働をなくすことが必要だと思います。

起こってほしくはないですが、過労で起こってしまった事件がありましたら「過労死をなくそう！龍基金」や労働相談センターにあきらめず相談してほしいと思います。もっと「過労死をなくそう！龍基金」が世の中に知れわたり困っている人を支えていってもらえたらと思います。今回も参加させていただき、ありがとうございました。