夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

「保守」勢力はなぜ、安倍政権を擁護するのか?

2018-04-13 12:34:00 | 政治

森友・加計問題で安倍政権が窮地に陥るなか、「保守」勢力は依然として政権擁護を続けている。ここでいう「保守」とはマスメディア用語であり、適切な表現としては極右と言うべきなのだが、朝日新聞をはじめ多くのメディアが愚かにも「保守」と呼称している。「愚かにも」というのは、「保守」という言葉が思想的な保守主義でもなく、国語的な現状を維持するというような意味での保守でもなく、まったく意味をなさないからである。これは英国の保守党とメディアが言う「保守」とはまったくかけ離れていることをみればよく分かる。メディアが言う「保守」とは、排外主義者、国粋主義者、国家主義者であり、単に極右という言葉の言い換えに過ぎない。

その「保守」勢力の「論壇」には、「正論」「諸君」「will」「Hanada」などがあるが、共通して安倍政権を擁護している。例えば、 森友・加計問題を「正論」は官僚の堕落の問題として扱い、「Hanada」は朝日新聞の「偏向」と結び付けて「朝日は絶対につぶさなアカン」(百田尚樹)などと書いている。こういった主張が堅固な自民党支持層や「ネトウヨ」の目にとまり、右派の安倍政権支持を支えているもののひとつとなっていると考えられる。(他には「森友・加計問題より重要な日本の課題があり、野党がそれを取り上げないのは間違いだ」という主張もある。確かに、重要な課題は数多い。しかし、森友・加計問題は不当な国家権力行使の問題であり、それが解決しなければ先には進めないと考えるのが自然であり、他に重要な課題があるからこそ、速やかに安倍政権は間違いを認めろと言う論理を展開すべきだろう。結局のところ、安倍擁護論に過ぎない。)

しかし最も重要なことは、これら「保守」の根本的な思想からは、森友・加計問題に関する限り安倍政権擁護の結論が導き出されるとは到底考えられないことだ。問題になっているのは、森友は国家財産の不当廉売であり、加計は教育を商売のネタとする御用商人に不当な便宜を図ったことである。それに携わった官僚たちも、不当だと認識いるからこそ、改ざん・隠蔽せざるを得ないのである。これらのことがらは、「保守」つまり極右の思想からも絶対に容認できないもののはずだ。政治権力を握ればどんな汚いことをしてもいいなどどいう考えは、極右の思想から導き出されるとは考えられない。森友・加計問題は、近代以降の政治的立場である「左右と」は別の次元、つまり右であれ左であれ容認できないことなのである。ではなぜ、「保守」すなわち極右勢力は自らの思想に反してまでも、安倍政権を擁護するのか? それには、次の推論が成り立つ。

「ネトウヨ」は、国会周辺の抗議デモを「パヨク(左翼の意)のジジババだけが叫んでいる」とネット上で度々書いている。このことは「ネトウヨ」が今回の問題を、左派からの攻撃と捉えていることを示唆している。「Habada」が朝日新聞と強引に結びつけるのも、朝日新聞等による攻撃と捉えていると考えられる。つまり、「パヨク」や朝日などの一定の勢力が攻撃しているのだと捉えているのである。

森友・加計問題は、政治的思想的立場とは無関係の、不当なことが行われた否かの問題であり、産経新聞も読売新聞もしぶしぶではあるが、報道せざるを得ないものだ。政治的な立場が関係しているのは、森友は問題発覚前は国家主義を教義とする学校であり、加計は教育医療に商業ベースを持ち出すという新自由主義に基づく戦略特区なるものから来ていることである。確かに、これらのことは、「左右」によって立場が異なる。しかし、「不当」な行為は「左右」に関係なく「不当」である。それにもかかわらず、「パヨク」や朝日などによる攻撃だというのは、攻撃されているという客体である「自分たち」が存在していると認めているからである。つまり、安倍政権と「自分たち」がひとつの運命共同体を形成していることを明らかに意識しているのである。

自民党が全体的に右傾化(適切な表現としては極右化)しているのは、「保守論壇」に代表される極右勢力が自民党の支持勢力としての役割を大きなものにしたからと考えられる。日本会議や神社本庁が巨大な力を有するようになったことがそれを表している。そこには、日本の右派全体が巨大なかたまり、巨大な勢力としての運命共同体になっている姿がある。その運命共同体の頂点に安倍政権は立っているのである。

いかなる理由であれ、安倍政権という頂点が崩れると自分たちの運命共同体が弱体化する。したがって、どんな不当なことを安倍政権がしたにせよ、守らねばならない。「保守」はそう考えているのではないか。それは、アメリカがかつてチリのピノチェット政権など中南米の軍事独裁政権を支援したことを、アメリカの「自由民主主義者」たちは黙認したことと共通する。「自由民主主義」の理念からいって、軍事独裁政権を支援することは思想に反する。それでも、「自由民主主義」の敵であるソ連の味方の社会主義者を殲滅するために、軍事独裁政権支援を黙認する。世界の「自由民主主義」勢力を守る、そのためには不正、不当を黙認する。そのことと同じなのではないのか。(アメリカが軍事独裁政権を支援したことは、ヨーロッパのメディア、例えば英国BBCなどでは誰もが事実として受け止めといることとして報道されている。)

自民党は、一度政権を手放し、民主党政権という大ざっぱに言えば中道政権ができた。その中道路線に対し、自民党は右旋回を鮮明にした。アベノミクス等の徹底した新自由主義、軍事力の増強と国家主義をもくろむ改憲がそれである。そこには、「保守」の力が強く影響している。「保守」にとっては、徹底した新自由主義、軍事力の増強と国家主義という「大いなる」目的が大事なのであって、「多少の」不正義には目をつむる。彼らがそう考えていると推論しない限り、彼ら「保守」の安倍政権擁護は説明がつかないのである。

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