もし、自分も死ぬ可能性が高くとも、ロシア軍をウクライナ全土から排撃するために、戦争を継続しろと西側の人びとは言うだろうか?
プーチンの予備役招集命令で、ロシア人男性の国外脱出が続いている。そこには、軍事侵攻そのもののに反対だからという人もいれば、そんなことより、自分が死ぬ(または刑務所に行く)のは、とにかく嫌だ、という人もいるだろう。しかし、西側政府も主要メディアもあまり伝えたがらないが、ウクライナでは、18歳以上の男性の出国は禁止されている。勿論、ロシアとの戦争のためである。ロシア人男性は、国外に逃亡できるが、ウクライナ人男性はできないのである。そのような自由は、ウクライナ人男性にはないのである。ゼレンシキー政権の命令があれば、「お国」のために、ロシア・親ロ派連合軍との戦争に行き、かなり高い確率で死ぬのである。そこには、男女平等などという思想の入る余地はない。
ロシア支配地域との前線でウクライナ軍が使用している多くの兵器はアメリカ製である。アメリカの最新鋭の兵器と、アメリカの世界一の軍事情報収集システムのおかげで、ウクライナ軍は、アメリカ兵器と比べれば格段に性能に劣る兵器しか持たないロシア・親ロ派連合軍を、一部とは言え、排撃できているのである。それが、この戦争が米ロの代理戦争という性格も持つ理由である。アメリカ国民は、個人的にウクライナ軍に参入している人や秘密裏に潜入しているアメリカ特殊部隊員を除き、どんなに武器を送ろうと死ぬことはない。
もし、「アメリカ人男性も、率先してウクライナ国籍を取得し、義勇兵として戦争に行け、そうすれば、短期間でロシア軍を追い出せる」とバイデンが言ったとしたら、賛成するのだろうか?
朝日新聞は、「ロシア軍撤退が先」と4月に社説に書いた。3月の停戦の気運が完全に消滅した後である。確かに、正論である。ロシア軍が撤退すれば、戦争は終わるからである。しかし、ロシア軍は撤退する意思はまったくない。つまり、この「ロシア軍撤退が先」は、停戦よりも戦争を継続し、ロシア軍を排撃しろという以外は、現実的意味を持たないのである。これは、朝日新聞だけではなく、西側政府も主要メディアもすべてそう主張しているのであり、朝日新聞が特殊ということではない。しかし、日本人も数万人が死ぬ可能性があるとしたら、朝日新聞はこのような主張をするのだろうか?
アメリカのバイデンは当初から、外交交渉など一切見向きもしなかった。西側政府の中では、比較的に停戦への交渉仲介の姿勢が見られたフランスのマクロンも、今はロシア排撃一本槍の流れに呑みこまれている。西側政府のやっていることは、ウクライナ軍事支援とロシアへの制裁だけである。特にアメリカは、物価は高騰しているものの、兵器、石油・ガス、穀物輸出で利益をあげ、戦争継続を全面的に後押ししている。西側の主要メディアも、それを支持するオピニオンとアメリカ政府発の情報記事で溢れている。
戦争は自分が死なない限り楽しめる
人は、戦争映画を楽しむ。あるいは、バーチャル戦争ゲームで戦闘気分を楽しむ。映画を観ているだけ、バーチャルゲームに参加だけでは、絶対に死ぬことはない。だから、楽しめるのである。それと同様な高見から、ウクライナでの戦争を、ああすべき、こうすべき、と言っている。それが、西側政府と主要メディアが戦争を眺めている基本的な立ち位置になっているのは間違いない。
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