ブログ仙岩

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大石邦子の「闇の彼方から」

2015-12-29 08:40:40 | エッセイ
だいぶ前、新年歌会の新宮殿の中庭に、燦燦と降り注ぐ冬の日を浴びて咲く山茶花に、魂が抜き取られる感動から、厳しい会津で咲くかと思った花が今兄が作った庭に溢れんばかりに咲いている。

見るたびに、山茶花が「頑張れと」逝った兄が言っているようで、涙がこぼれ、先に妹が逝き体に力が入らず、講演もいくつかキャンセルして眠れない夜が続いた。

そんな夜、暗闇の箱の中から手探りで一枚のCDを取り出した。音があれば何でもよかった。
あなたは生きた あなたは愛した あなたは書いた けれど ああ だれがすべてを知るだろう
あなたの髪を吹き乱す風を あなたの頬に しぶく氷雨を あなたのまわりに吠える吹雪を
あなたは孤独 あなたの時間 冬

飛び起き灯りをつけ、何十年も前に、いわき市の詩人草野比佐男先生作詞、母校の堀内清治先生作曲で、会津混声合唱団の歌った私への歌だった。鳥肌が立った。

遠い闇の彼方から、やわらかな風が吹いてきて私を抱きしめてくれているような気がした・・・・

孤独な冬を耐えてきたではないか。耐えられないはずはないのだと、私は自分に言い聞かす。