「よぉ、モ・ジンソプ!」
突然声を掛けられ、モ・ジンソプは振り返った。ミエも声の方を向く。
同時に少し離れた路地裏で、ガタンッと大きな物音がした。
その物音の方を見て、イ・インウクの友人は「なんだ?」「しらね」と首を傾げる。
チョルは咄嗟に身を隠したようだ。
「あれ、イ・インウクじゃん。よぉ」
「あっちから見かけてよ。遊びに来たん?隣誰?」
モ・ジンソプの背後に隠れつつ警戒するミエ。
ジンソプは落ち着きながらこう言った。
「あ、知り合いの妹。買い物があってさ」
妹?
その紹介のされ方に疑問を持ったミエと、謎の”知り合いの妹”に興味津々のイ・インウク御一行。
ジロジロとミエを見てくる。
「へー」
「先行ってて。場所わかるよね?マック」
ジンソプに促され、ミエは一人その場を離れた。
なにさ、ちょっとムカつく!ていうかイ・インウクってどっかで聞いたような・・・
「テストどうだった?」「お前は?」
ふと、路地裏が目に入った。
ちょうど誰かが潜めそうな狭さだ。
ギラン、とミエの目が据わる。
バッ!
シーン・・
「何だろ、違ったかな?もう行こ・・」
「・・と見せかけてぇ!」
フェイントまで使い、ミエは本気で”幽霊”を捕まえようとダッシュした。
するとそこで、とうとう見つけたのだ。
バッ!
変装幽霊、キム・チョルが・・。
あんぐり
ミエはチョルに詰め寄って、いかに自分が怖かったかを語る。
チョルはどんよりとしたオーラのまま、ミエの名を口にしただけだ。
「ほら!やっぱりあんたじゃん!私さっきマジで怖くって怖くって」
「ファン・ミエ・・」
すると近くにいるモ・ジンソプ、そしてイ・インウクたちの会話が聞こえてくる。
「一服して行くか。あの階段の裏でどう?」「俺禁煙中」
突然”大魔王”の話題が出たので、チョルもミエもハッとした。
「ま、うちにいたときもおとなしかったけど」
そして引っ張った。
グンッ
会話は続いている。
「キム・チョル呼べねーの?お前仲良いんだろ?」
「一度会ってみてぇ」「あいつがお前に会いたがるかな」
「さぁねー」
モ・ジンソプは宙を見ながら、するりと会話を交わしていた。
タタッ
路地から出てきた不思議な格好の人を見て、イ・インウクが指をさす。
「おい、あれ見ろよ」
そこには、背を丸めてこそこそと小走りする男女二人の姿があった。
「なんだあの服。ダッセ」「ブカブカすぎんべ」
「父親と娘かな」「こんな時間にか?」
二人は帽子を取り替え、チョルの上着をミエが着た。手軽な変装だった。
チョルの服の裾を掴んで走るミエの手に、ようやくチョルが気がついた。
バッ
「もう大丈夫だよ!」
「ウザかったでしょ?」
ミエはそう言って、自分には大きいキャップを押さえて、笑った。
うははっ
[この瞬間キム・チョルは]
[隠れて二人をつけた時に感じた感情よりももっと]
[妙な気持ちになったのだ]
自分に孤独を気づかせる、賑やかな音楽や楽しげな若者の声が、いつの間にか遠くなっていた。
目の前で笑うこの小さな女の子が、チョルの抱える大きな暗闇を、拭い取って笑っている・・・。
第五十四話④でした。
イ・インウク・・は確か、ガク・テウクの元腰巾着で、以前チョルの家の近所にいましたね。
すごい前に出てきたような・・あ、調べてみたら十四話でした。結構前ですね
みんなチョルと仲良くなりたいのかな・・
最後笑ってるミエちゃん、可愛いですね〜
第五十五話①に続きます