羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

孤独のグルメSP 1

2016-01-02 18:20:00 | 日記
空港付きのカフェで忙しくノートPCで作業する五郎。ケータイに電話が入ると「夕方までにはお送りします」と慌てた様子で応え、電話を切るとすぐに時間を気にして席を立った。空港を出ると「うわっ、さぶぅッ?!」外気の冷たさに驚く五郎。北海道の旭川に来ていた。気温マイナス1,5度。上着を着込み、バス亭に向かう五郎。それから帰省客と観光客で賑わうバスの中でも別件の仕事のメールが入り、正月早々仕事に追われる五郎。ホテルに着いて作業に集中し、いくらか片付いた辺りで滝山から電話が入った。
「仕事を手伝ってくれって? 無理っ! こっちも手一杯」手伝いは即断り、軽く雑談して電話を切り、気晴らしにケータイもPCも部屋に置いて外に出掛ける五郎。道ですれ違う家族連れを見て(家族で外食かな?)等と思って振り返ると、自分が空腹であったことに気付く五郎。(俺も、腹が、減っていたぁっ!)飯屋探しに取り掛かるが、足元が雪と氷で滑る。(まずは足元を固めよう)五郎は長靴を売ってる店を探し始めた。程無く首尾良く長靴を手に入れ、履いていた革靴を店でもらった紙袋に入れた五郎は飯屋探しを再開。ラーメン屋、蟹屋、と探して回るがどこも込んでいて断念し、気付くと30分も寒空の下歩き回り、体が冷えきってしまった。
(凍死しそうだ。ていうか、ここどこだ?)自主的に旭川の街中で軽く遭難しかける五郎。と、道の先に飲食店の軒灯を見付けた。(あの光っ?! 暖かそう)吸い寄せられる五郎。近付くと『独酌 三四郎』と書かれている。呑み屋然とした店構えに下戸の五郎は尻込みしたが(三四郎、俺の名前の五郎に繋がる)とややこじつけ、ともかく暖を取ろうと店に入って行った。「いらっしゃいませ」割烹着の女将が迎えた。店は年季の入った落ち着いた作りでスペースに余裕があった。ストーブにやかんが掛けてある。
     2に続く

孤独のグルメSP 2

2016-01-02 18:19:50 | 日記
注連飾り等を見上げる五郎。(下戸でも落ち着く)店の雰囲気に安心する五郎。「はい、どうぞ」女将はおしぼり、お通し、箸、メニューを持ってきた。メニューはプラスチックカバー入りの物と手書きの品書きの束を纏めた物の二種類があった。メニューに『めし』の項を見付けて思わずガッツポーズを取る五郎。(もうこっちのもんだ!)一先ずオーダーを済ませた五郎。
最初にきたのは温かいとうきび茶。(あ、凄いトウモロコシ。コーンっときた)感心していると、女将がストーブに頂き物だと南瓜の入った鍋をストーブに置いた。「ごちそうしますよ?」「ありがとうございます」五郎はついでに身欠きニシンも頼んだ。待っていると、厨房で主人が若鶏を網で焼いて肉切り鋏でカットしてゆく。(ワクワクがMAXだ)茶をグイグイ飲む五郎。焼き上がった鶏は創業以来の物だというタレに漬けられて皿に盛られた。
「ご飯と、新子焼き(鶏)です」女将はさらに茸汁、漬け物も出した。箸袋を手に取ると『日々感謝』と書かれていた。「頂きます」炭火で焼かれた鶏からいく五郎。(んんっ、旨いなぁ、新子焼き!)笑顔になる五郎。ご飯も進む。続いて七種類の茸の入ったとろみのある茸汁を啜る五郎。(とろ~りと旨い。温まる)ハフハフと啜る五郎。漬け物はきゅうり、大根、蕪、人参、豆腐。摘まんでかじり(漬け物が旨い店は信頼できる)出先で漬け物をオーダーする度に同じことを思う五郎。豆腐の漬け物はチーズのようだった。
流れでお通しの酢大豆を食べ出す五郎。(うんうん、こっちは違う)豆腐の漬け物とは仕込みの違った。「お待たせしました」身欠きニシンの炙りと卵焼きを女将が持ってきた。ニシンに醤油をスッと掛ける五郎。尾の方からほぐし分けて食べる。(んん~、旨い旨い)渋い旨味。多目に添えられたおろし生姜を乗せて食べてみる。
     3に続く

孤独のグルメSP 3

2016-01-02 18:19:41 | 日記
(なるほど)飯が進む五郎。卵焼きに添えられたワサビも試す五郎。(へぇーっ、卵にワサビ、いい。なぜ寿司屋でこれに気が付かなかったんだろう?)新しい味の組み合わせに驚く五郎。
機嫌良く食べ進め「ご飯、お代わりもらえますか?」ご飯の追加を頼むと「よかったら、新子焼きのタレ、ご飯に掛けましょうか?」女将が聞いてくる。常連がよく頼むという。五郎はこれを頼んだ。「はい、タレご飯です」出てきたタレご飯は(こうなるんだ)しっかり混ぜられて平皿に盛られていた。木匙で食べる。(旨いなこれっ! 懐かしい味だ)嬉しそうに五郎が食べていると「南瓜どうぞ」女将が仕上がった件の南瓜の煮付けを持ってきた。「こっちでは、昆布一杯あるから一緒に煮るんですよ」それを一つ食べる五郎。(甘い)他の客も満足そうに南瓜を食べていた。
ここで、手の空いた主人は筆ペンで品書きを書き始めた。(へぇ~、お父さんが書いてるんだ)見ると箸袋の一文は全て違った。(一つ一つ、心が込められている。そういう旨さだ)思いながら昆布煮を摘まむ五郎。やはり旨い。「ごちそうさまでした」残さず食べ終わった五郎は「これ、頂いていってもいいですか?」と『日々感謝』と書かれた箸袋をもらい、支払いを済ませて店を出た。(心も体も温まった。そうだ、滝山に自慢してやろう)電話しようとするがケータイはホテルに置いていた。(やれやれ)まあ、いいかと五郎はゆるゆるホテルへと帰って行った。
翌日、引き続き長靴履きで染め物屋に来た五郎。意外と大きなビル。「あー、どうもどうも。あれ、長靴、お似合いですねぇ」出てきた社長に長靴を軽くイジられつつ名刺交換する五郎。「大漁旗なんですけど、海外でお使いになるとか」挨拶もそこそこに商談に入る。五郎の知人の息子がロンドンで日本料理屋を始めようとしており、
     4に続く

孤独のグルメSP 4

2016-01-02 18:19:31 | 日記
その店に大漁旗を飾るという。五郎は工房を見せてもらうことにした。「ウチではプリントではなく刷毛引き本染めという昔ながらの職人仕事で作っております」案内する社長。工房では若い職人が多く働いていた。(大変な手間を掛けて作っているんだなぁ)台座の上に布を張り、工程を分けて刷毛で塗り、水に晒して乾かし、上下のパーツを縫製して仕上げる。全て手作業だった。
(職人さん達、若かったなぁ)問題無く商談を終え、ビルを出た五郎。(緊張しながらの立ち仕事、腹も減るだろなぁ)ハッとする五郎。(気が付けば、俺も、腹が減った!)思い立ち、飯屋を探し始める五郎。(贅沢せず、昼は普通飯を目指そう)『普通』を求めたい気分の五郎。わりとすぐに『自由軒』という大衆食堂風の店を見付けた。(おかもち、出前がある)店前で様子を伺う五郎。(北海道味という括りを外せば、タイプの店)五郎は入ってみることにした。
店はやや小型のごく普通の食堂だったが二階席があり、大きな草鞋が飾ってある。離れた席でも常連同士が談笑する雰囲気の店でもあった。「いらっしゃいませーっ」店員の女はそこそこ若い。他の客達があれこれオーダーすると「それ頼むの?」と問い返したりするクセ者風の主人。『気まぐれサラダ』なるメニューもあった。品書きを見る五郎。普通の食堂メニューの中の『名物』の項に『味噌汁(ライス付き)』というメニューがあり、興味を持つ五郎。(落ち着け、この店、普通のようで普通じゃない)水を飲む五郎。『わらじ焼き肉』『エスニック餃子』『オムカレー(ばかうけ)』捻った品書きが微妙に交ざっており、気を取られる五郎。(いかんっ、メニューに遊ばれている)心を鎮める五郎。
(味噌汁ライス付きがどうしても気になる)悩んだ末、五郎は『味噌汁』等のオーダーを済ませた。
     5に続く

孤独のグルメSP 5

2016-01-02 18:19:20 | 日記
すると「ちょっとお待ち下さいね」なぜか店員は主人に伺いを立てに行った。『味噌汁』にあれこれ単品を付ける五郎のオーダーがこの店では珍しい様子。「一人で?」内容を聞き、振り返る主人。「お客さん、道内の方ですか?」「いえ、東京から来ました」「じゃあ、ちょっとね、量加減しますから。土産代わりに色々食べてってちょうだい」何やら『手加減』してくれるらしい主人。
「お待たせしましたぁ、味噌汁でーす」店員は『どんぶり』入りの味噌汁と漬け物、ご飯を持ってきた。(ええ?! マジ? ライスより味噌汁の方がデッカイどうっ!)困惑する五郎。この量でも『加減』してくれているらしい。汁には葱と竹輪が浮いていた。「頂きます」味噌汁を啜る五郎。(これは旨い味噌汁だ)だが多い。バラ肉も少し入っており、具材の簡素な炒めない豚汁風。続けて蟹クリームコロッケとホッケフライがきた。付け合わせはキャベツ等と、レモン。マヨ感強めのタルタルソース付き。
コロッケをタルタルソースに絡めて食べる五郎。(アチっ! アチっ!)揚げたてを大きくカットし過ぎ、それを丸ごと口に入れた為、地味にダメージを受ける五郎。キャベツにウスターソースを掛けて食べる。(キャベツが口の中を冷やしてくれる)コロッケ自体も少し冷め、二口目はダメージを受けずに食べれた。(蟹とジャガイモ、北海道味のど真ん中チョイス。そこに、ホッケと畳み掛け)ホッケフライをかじる五郎。(旨い、これもウスター)ソース好きの五郎、ホッケは二口目からはウスターソースでやった。
(おや?)ふと、味噌汁の中に半熟卵が入っているのを発見する五郎。(かき玉汁っぽくなったぞ)卵を崩して味噌汁を啜る五郎。別の客が味噌汁に一味を掛けているのを見て真似る五郎。(あっ、世界観変わった)中々減らないどんぶり味噌汁をあの手この手で攻略する五郎。
     6に続く