力道山は,赤坂のニューラテンクォーター(今のプルデンシャルタワー地下)でヤクザに刺されて亡くなった。しかし,即死ではなく,手術を2回も経て,一週間後に病院で亡くなった。
飲むなと厳命された水を飲みたくて,病室の花瓶の水を飲んで死んだ。と私は父親に教わった。ネットでもその「花瓶の水を飲んで死んだ」説は根強くある。他に,腸を刺されて安静にしていなきゃいけない力道山が「ウィスキーのボトルを空けた」「寿司を注文して食べた」などの都市伝説はあふれる。
ご存命の奥様はそのような「力道山がやんちゃしたからそれが死因になった」説を否定されている。真相は藪の中なのかな。。
力道山を指したヤクザの村田は、一審で12年、ニ審で8年、最高裁で懲役7年の刑が下され、きっちり、7年間、刑に服した。気になるのが傷害致死という罪名。
力道山を刺した原因も,怨恨とかではなく,足を踏んだ踏まないという些細な酒席のいざこざ… 力道山が村田をタコ殴りにしたから村田がやり返した?
だとしたら村田は正当防衛(過剰防衛)の主張をしたのだろうか。普通するだろう。要するに12年とか7年というのは,傷害致死にしては重い法定刑かなと。
今の傷害致死罪の量刑相場を見てもそう思う。まあ村田がヤクザ者だから前科があったからだろうか。前科がなかったとしたら,国民的英雄の力道山を殺したから,という国民感情に押されて(特に一審で)刑が重くなった可能性もある。
一審(地裁) :12年
二審(高裁) :8年
三審(最高裁):7年
という刑の下がり具合も異常では。日本の刑事裁判で,こんなに,2回も,前の(下の)裁判所の判決が覆ることも珍しい。もう何万回に1回レベル。
角栄裁判やロッキード裁判でも,世論の影響を受けているからね。裁判官も世論に影響されるんです。実際,ロッキード事件を裁いた園部最高裁判事も,ロッキード事件で世論に影響されたことを正直に認めていらっしゃる。
該当部分を引用すると:
最高裁の判事として角栄の判決に参加した園部逸夫さんは、角栄が生きているうちに判決を出せなかったことを残念がっていた。角栄が生きていたら、再審でもなんでもやって身の潔白を主張し続けたでしょうから。園部さんも「裁判所が、世論の影響を全く受けなかったと言えば、ウソになります」と話していました。
ですって。この園部逸夫さんの率直な述懐は参考になる。。原典にあたってみようかな。
人間は空気に影響される。裁判官も世論に影響される。裁判官も世間の「ジョーシキ」に惑わされる。これは裁判を扱う法曹として,しっかり肝に銘じておきたい歴史的事実。具体的には,いかにその「ジョーシキ」を覆すか,に我々の弁護活動は向けられるべき場合が多い。