宮沢賢治は、一度だけ、「宇宙意志」という言葉を使った。
知人の高瀬露宛ての手紙の下書きで。ほぼ100年前。
「無名の知人あての手紙の下書きに書いた4文字」が、100年経って、一冊、いや二冊の本になるくらい、研究されている。
偉大なり、宮沢賢治。
以下は長沼さんの本から急ぎメモ:
◆ 宇宙意志は、古代インドのバラモン教聖典ウパニシャッドの「梵我一如」の影響
◆ この梵我一如も、「宇宙を一元的に捉える」帰一思想から
◆ 帰一思想は、渋沢栄一と成瀬仁蔵(日本女子大学創始者)が始めた
◆ 宮沢賢治は妹トシ(日本女子大学)を通じて、帰一思想から影響を受けた
◆ 梵我一如は、当時、ノーベル賞のタゴールが日本に広めていた
◆ トルストイ「イワンの馬鹿」も、賢治の「デクノボー思想」に近い
◆ デクノボー思想とは、愚直であることの美しさを尊重。
世俗のヨコ的物質的価値観ではない、精神のタテ的精神的価値観。
◆ 学習院大学の院長をした磯辺忠正『「無常」の構造』
…よさげ、入手中、Amazonにない
◆ シュバイツァーの「生への畏敬の倫理」も、愚直であることを要求する。
「生への畏敬の倫理」は最高法廷である。(中略)
それが愚行に見え、あるいは無益に見えるときでも、その意義を持っている。
我々がお互いに求め合っているものは、実に、我々が高次な責任を心中に働かせることから生まれる愚行である。」
『シュバイツァー著作集』第7巻「文化と倫理」
…神学者としても、オルガン奏者としても、成功を収め、何一つ不満のないような恵まれた境遇にあったシュバイツァーが、30歳のときに、一切の地位と名誉を捨てて、アフリカの貧民を救いに、文明社会を飛び出した。
そういう「愚行」をしたシュバイツァーならでは。
彼が言うから説得力がある。
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日本で吉田松陰が未だに人気なのも、彼が黒船に乗ろうとする「愚行」を行ったから。
田中正造が未だに語られるのも、天皇に直訴するという「愚行」を行ったからです。
ガンディがマハトマ(聖者)と尊敬されるのも、塩の行進という「愚行」を行ったからです。
ソクラテスが世界四大聖人に数えられるのも、悪法と知りつつ毒杯を仰ぐという「愚行」を行ったからです。
アッシジのフランチェスコが聖者として崇められるのも、一切の富貴を捨てて「裸のイエスに裸で従う」という「愚行」をしたからです。
長岡藩家老・河井継之助のかっこよさが語られるのも、公論を百年の後に待って北越戦争で玉砕する「愚行」をしたからです。
真田幸村や土方歳三の滅びの美学が愛されるのも、敗けると分かってそれでも戦う「愚行」をしたからです。
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愚行をするから人を感動させる。
愚行をするから歴史に残る。
成敗から超然として(@渋沢栄一『論語と算盤』)、成功失敗を度外視して、愚行をする。
結果の正しさよりも、行為の美しさを愛して、愚行をする。
進んで愚行をしましょう。
※ 愚行ってのは、私が「誇り高き自己抑制」と定義するやせ我慢に近いですね。