NPI(非営利投資)とNPO支援の品川投資倶楽部

非営利投資NPIを実践し、NPO(非営利組織)をささやかに支援するブログです!

企業価値は良好な労使関係で高まる?

2005年07月19日 | Weblog
 M&A時代の現在、企業価値という言葉がよく使われるが、どのような意味でしょうか。乱暴に言えば株式時価総額となるし、一般的には次の計算式で表されるようです。

  企業価値=株式時価総額+有利子負債-現預金-短期性有価証券

 しかし、企業価値にはこのような数字だけでは表せないものもあります。ノウハウや知的財産権は数字に評価可能かも知れませんが、人材(有能な経営者、まじめに働く労働者)やその企業を応援する株主・利害関係者の存在などです。
 この企業価値について、7月17日朝のNHK番組「経済羅針盤」に出演したキャノンの御手洗富士夫社長が、注目される意見を述べています。御手洗社長は、アメリカで20年以上ビジネスマン生活をおくり、帰国後副社長を経て1995年に社長へ就任し、不採算部門からの撤退、得意部門への経営資源の集中、国内での開発・生産の強みを発揮した新製品のスピード提供、などでキャノンを再建し、現在、最も評価の高い経営者です。
 テレビ番組の中で御手洗社長は、キャノンの経営方針や開発・生産方式、来年から販売を予定しているSED薄型テレビなどに言及する中で、「企業の価値は良好な労使関係」・「終身雇用は大切」と発言し、注目されました。
 バブル経済崩壊以降、「経営者と労働者が協力して企業を発展させる」という日本型経営システムは、厳しい批判に晒されています。そのような中、アメリカ型ビジネスに熟知している御手洗社長が、M&Aの時代に企業価値を高める一つのポイントとして「労使関係」を挙げ、「良好な労使関係を維持していく」と述べていることは、注目に値します。
 また、「終身雇用の良さを活かす」取り組みが、社員の長期的視点とスキルアップ、愛社精神の育成、労使の協力と一体感などを生みだし、今日の強いキャノンを作り上げたものと評価されます。
 特に良好な労使関係により企業価値を高めていることは、キャノンが敵対的買収への強い抵抗力を保持していることを意味します。なぜなら経営者と強い協力関係にある従業員・労働組合を敵に回してまで企業買収することは、その後の企業運営の目途が立たず、現実的な選択肢としては採用されないからです。
 何れにしろ「熟慮断行」をモットーに、「資本の論理」が先行する欧米流の合理的な経営と日本型経営の良さを融合させた御手洗社長の取り組みは、21世紀型企業の一つの方向性を示していると言えましょう。その意味でキャノンは、投資先企業として検討する価値があります。
                                     以上