古稀を過ぎた主夫の独り言日記

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アフリカの想い出

ブンダ山登頂(アフリカ)

2012-07-04 09:37:50 | エッセイ
理数科教師二年目のある日、私は生徒たちに提案をした。
「ブンダ山に登らないか?!」

ブンダ山とはミトゥンドゥセカンダリスクールからほど近い所にある岩山だ。
標高1300m余、とはいっても学校が標高1200mだから、せいぜい100mほどの高さの山だ。
日曜日、呼びかけに集まったのは男子生徒だけ10名ほど。
楽しみで山に登るという感覚は、当時のアフリカにほとんどなかった。
だから、集まった生徒達は先進的感覚を持っていたといってよい。

ブンダ山は、その後首都になる『リロングェ』に出かける時、右手に望む山だ。
どうしてこんな山があるのか、地質学者が興味を持ちそうな岩山なのだ。
多分一つの岩だけでできている、世界中でも大きいほうの山ではないだろうか。
かねてより一度上りたいと思っていた。
私たちは1時間ほど、茶色い砂道の国道を歩き、ブンダ山の正面に来た。
私は、この形がとても気に入っている。
ここからは植林された林や竹藪が続いていた。
ヒヒの群れが私たちを訝しがり、時々吼えた。

そんなことも気にせず、私は生徒たちとバカ話をしながら、ハイキング気分で山肌に取り付いた。
登り始めは何のことのないハイキングで、歌う者、叫ぶ者、いろいろだ。
踊る者もいた。
だんだん山肌は急になる。
いよいよ四ッ足で登ることになったが、それでもみんな陽気だった。
ところが、最後の5mほどになった時、一歩も動けなくなってしまった。
私は全員に休憩の指示を出した。

座って休むことさえできない。
中には岩肌に四つん這いでへばりついている生徒もいた。
少し私は焦っていた。
ここまではそれぞれが自由に登ってきたが、ここからはルート設定をしないと危険だ。
先頭にいた私は全員に、「ここからは私の道を登るように」と指示を出した。
まさにロッククライミングだが、私も素人だ。

指導者として、私は責任を持って、皆を安全に導かなくてはならない。
試み、失敗し、別ルートを探す。
最後の5mを1時間かけて登り切り、山頂に立った私たちは大興奮だった。
私は皆に日本式の万歳を教えて、一列に並び、不慣れな万歳三唱をした。
頂上は意外と広々としており、彼らは広場をアフリカ人のリズムで跳び回った。
「昼飯だぞ~」私は用意した握り飯を一人一人に渡した。
不思議な食べ物を彼らは騒ぎながら食べた。
腹が充分満たされることはなかったが、大いなる満足感を味わっていた。
恐怖後の解放感。
そして、かすかなる満腹感。

私は皆が騒ぎ跳び回り、踊っている間に帰りのルートを探していた。
西側のルートはずいぶん遠回りになるが、なだらかで安全だ。
学校に到着した時、既に生徒たちの晩飯の準備が始まっていた。
学生たちはアフリカンリズムで宿舎に食器を取りに向かった。

私は、一人草原に座り、地平線の向こうに沈みゆく太陽をずっと眺めていた。

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