
名犬コロに訪れた幸せな日々
主人の息子が小学校4年生になる時、細君は勤めを辞めた。学童保育がなくなり鍵っ子の時間が長くなること、思春期を前に難しい時期に入ることが理由だった。が、年々主人の帰りが遅くなり細君とて中学教員、早く帰れる保証がないことも大きな理由だった。
教職を天職に思っていた細君には無念の決断も、コロには幸いな決断だった。毎朝コロは細君に連れられ主人の出勤をバス停まで見送る。その後、細君と公園まで散歩する。日中は独りで心細かったコロに、いつも細君が傍らにいる幸せな日々が訪れた。
ジャンプするとまるで空を飛ぶようにしなやかで身軽だったコロも、息子の中学~高校あたりから、にわかに動きが緩慢になった。一日のうちで眠っている時間が少しづつふえて行った。ドッグイヤー(×6年)を考えれば、コロも既に還暦を迎える歳だった。
名犬コロの急変!
コロにとっては余生のような穏やかな日々・・・。しかし息子が大学3回生、「実験が忙しくなるから」と京都で独り暮らしを始めた1996年5月、主人の出勤を見送った後、コロは急に地面にうつ伏せになった。すぐ元気を取り戻したが、細君は心配になってきた。
翌朝、主人が新聞をとりに出るとコロは庭でうつ伏せになり荒い息をしていた。昨夜の細君の話を思い出し、主人は顔色をなくした。荒い息は治まったもののグッタリしている。掛りつけの犬猫病院は休診で、車に乗せ新しくできた病院へ連れていった。
先生は「夕刻まで預かります」と。虚ろな目のコロを残し、止む無く家に帰った。夕刻、迎えに行き細君が抱いてやると、コロは安心したように細君の懐に身体を預け目を閉じていた。先生からは「心臓が弱っている。今夜が山かもしれない」と言われた。
虹をわたった名犬コロ
細君に抱かれたコロは、なお荒い息をしていた。主人は「そのうち薬が効くやろ」と言ったが、細君の「大丈夫かしら」に何も言えなかった。夜、いつも庭暮らしのコロに、息子が小さい頃に使った布団を部屋に敷くと、コロは安心したように横になった。
息子も心配して京都から帰った。未明、主人がトイレにたつ際「コロっ」と声をかけると、じっと主人をみつめた。トイレから出ると、コロは目を閉じていた。顔を近づけると息がなかった。コロっ!と何度も呼んだが、それきりコロは目を開けなかった。
主人は庭に出て発砲スチロールの箱に庭じゅうの花を摘み敷きつめた。濡れた重い布団のようになったコロを箱に移し優しく花で包んだ。細君と息子を起こし「今、コロが死んだ」と告げた。三人は、コロの顔を、頭を、耳を・・・朝まで撫でつづけた。
市に電話すると「生ごみと一緒に出して下さい」。動物霊園に電話すると「火葬します」。コロを乗せ山奥の霊園まで泣きながら車を走らせた。待合で1時間余・・・コロを撫でていた。冷たくなったコロが、耳だけは生きているように和らかく温かだった。
そして今・・・吾輩がいる
コロが虹を渡って17年。最初の数年、細君は喪失感に苛まれ精神のバランスを失くした。コロを思い出しては涙ぐむ日々だった。やがて幾らか癒えたが、本当に癒えたのは「シマジロウを家に養猫に迎えた3年前・・・のような気がする」と主人は述懐する。
主人は「コロが逝ってからもしばしばコロに遭う」と。バス停の近くに佇んでいたり、散歩している時、コロの眠る「山の雲間からコロが現れる」と。なに戯言を!と言いたいが、いつも勝手なことばかり言う主人が、こういう時ばかりはしおらしいのだ。
一時は吾輩を「コロっ」と呼んでは「ごめんね、シマやったね」と言った細君も、今は呼び間違えない。何かと言うと抱きすくめ頬ずりされるのは、赦す。賢くなくても名犬!と言われたコロに心から敬意を表し細君の心に寄り添いたいと思う吾輩である。
【補遺】… 2022.11.12 記
コロが旅立ってもう26年余になる。
コロ! どうしてる? シマには出来るだけのことを精一杯してるけど
コロには あまりしてやれなかった。すまなかったなぁ コロ。
遠くから私の姿を見つけると なんどもなんどもジャンプして 歓んでくれた。
また 天国に行ったときは コロ そうしてジャンプして迎えてくれるかい?
【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
奥様のお気持ち、よく分かります。
我が家に居たタカちゃんを思い出しました。
S62年(1987年)に3ヶ月だったタカちゃんをもらってきて、虹を渡ったのが2006年8月でした。
http://red.ap.teacup.com/sanukiobasan2/213.html
http://red.ap.teacup.com/sanukiobasan2/116.html
晩年は義父の痴呆症による虐待を受けてストレスから円形脱毛症になり、実家へ預けていて、義父が亡くなった後も連れて帰ったのですが、実家のほうが居心地が良かったみたいで。
ハスキーのれんたろうは9歳で、夫と散歩に出たとたんに倒れてそのまま。
もうそろそろワンコが欲しいかなと思いつつ、まだ踏み切れません。
> コロちゃん、可愛いかったですね!
> 奥様のお気持ち、よく分かります。
> 我が家に居たタカちゃんを思い出しました。
「柴犬のたかちゃん」記、拝読しました。
19歳で虹をわたられたのですね。
ドッグイヤーでは記録的な長寿…だと思います。
4歳頃のたかちゃんの姿、立派な青年!ですね。
最晩年もとても優しい表情…こころをうたれました。
> ハスキーのれんたろうは9歳で、夫と散歩に出たとたんに倒れてそのまま。
大型犬の天寿はやはり短いですね。
ある意味、ハスキー犬らしい「潔い最期」かもしれません。
> そろそろワンコが欲しいかなと思いつつ、まだ踏み切れません。
哀しみの記憶は…容易に整理しきれませんからね。
一緒に暮らしたい気持ちになられた時が、その時…。
人間と人間の場合と変わりはないように思います。
思い出を記してくださりありがとうございました。