デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

生き延びるための思想 … 上野千鶴子さん "最後の講義"

2021-04-06 11:23:30 | 新聞・TV・映画・舞台・書籍etc.
 NHK "最後の講義" シリズ...もし今日が人生最後の日だったとしたら何を伝えたいか!
 以前、福岡伸一さん(分子生物学)、大林宣彦さん(映画監督)、出口治明さん(大学長)の講義をご紹介しました。
 今回ご紹介する方は ひときわ!危険なにおいがする方です(笑)


    

 上野千鶴子さんの書は殆ど読んだことがありません。読みたいとも思いませんでした。でも なぜかず~っと 気になる方! 或る時期 私の姉の同僚でしたし、京都で学生時代を送られた時期は重なりますから、何処かで幾度か擦れちがっているかもしれません。

 学生時代『偉そうなオジサンが気に食わなくて石を投げてやった』由。『ホンモノの石を投げてやった』と強調されたので、もしや ... 否!きっと! ヘルメットを被り不織布マスクではなく手拭いで頬被りし石やビンも?投げてはったにちがいありません。

 そんなことが「気になった」のではありません。当時、哲学ぶった?若者がカブレた吉本隆明の底!を見抜いていた処に刮目しました。例えば「原発」について『彼(吉本隆明)は原発には反対しないと思ったら、やっぱりそうだった。科学信奉者だから』と。


    
                      「デビュー当時」って... 芸能人かいっ

 さてゴタク!はそこまで。"最後の講義" について『厭なタイトルだよね。これ終わったら早く死ねって言われているみたいで』と仰るだけに簡単には死なはりません。

 『私は "主婦" 研究者として出発しました』 『主婦しながら研究する人ではありません。"主婦" を研究"対象にしたのです』 『母が専業主婦で、しかも "夫婦仲が良くない妻" でしたから、自分が大人になったら、主婦なんて割に合わない! やってられない! と思って 結婚もせず "お一人様" の人生を歩んでいます』。

 『主婦って何する人?と考えると、結構!奥が深かったです』 『当時、主婦は "女の人生の上がり!" だと思われていました』 『女の社会的役割について、女に問題があるんじゃないか? と言われていましたけど、そうじゃない。社会のほうが女に問題を持ち込んでいるのだとわかりました』。

 『1960年代。それまで女性は主婦になるのが当たり前の時代でした』 『そこに私達は "女性学" すなわち女性の総てを研究対象とし "主婦論争を解読する" を掲げました』 『女のやってきた総ての経験をどのような言葉で "再定義" するか、に焦点をあてました』。


    

 『家事は "労働" である。しかも対価が不当に支払われない "不払い労働" である、と定義しました』 『これに真っ先に猛反発したのが現役の主婦でした』 『"私のやっていることは愛の行為であり、お金になど換算できない価値ある行為だ" との反発でした』。

 『労働を "第三者規準" で定義すれば " その行為を第三者に置き換える、すなわち第三者に移転可能な行為であれば、それは "労働" 行為です』 『家事の大半は代替=移転できます』 『家族を支える労働の多くが女性に担われ、そのタダ働きで経済がまわっています』 『そういう仕組みに 男達が乗っかっていただけ』。

 同僚の男性教授が "上野さんの書を読んで女房が文句を言っていることがわかった" と。バカヤロウ! って思いました。"私の書を読む前にあんたの女房の声に耳を傾けろよ" と』 『私は 女が抱えさせられた問題を小父さん語に翻訳しただけ』 『こうした研究を書にまとめた時 "母のリベンジ戦を果たした" と思いました』。

 『人間の生命を生み 育て その死を看とる という重くて大切な労働が、その他すべての労働の下位に置かれていいのか? その根源的な問いが解かれるまで、フェミニズムの課題は永遠に残るだろうと思います』 。


    

 講義の途中、質疑応答が交わされました。聴講者は10名限定、20~40代の男女です。経営者であり一児の母である女性が訊ねました。『日本の社会はすぐレッテルを貼ります。上野先生ご自身、レッテルを貼られ逆境に置かれることが多かったと思いますが、何をパワーにされ闘ってこられましたか?』。

 『おっしゃるとおりです。イジメもバッシングもいっぱい! それらに対する怒りを闘うパワーに置き換えました。森さん(五輪組織委元会長)のような男が尽きないですからね』 『研究室の指導教授が職を世話するのが常ですが、女は対象外。教授に頼らず自ら売り込み、23通目で漸く平安女短大の職を得ました』。

 『 "不払い労働" であった家事・育児・介護等を "ケア労働" としました。家事の多くは "人間の命を生み育て維持する" 労働であり、三度の食事の用意は生命の再生産労働です。こうした労働を 広義に "ケア労働" と位置づけました』 『やがて ケア労働は 主に女性が担う "福祉の領域の労働" と認知されました』。

 『家事は本来!対価があって然るべき労働です』 『自分の家のバアさんの介護はタダ働き、隣の家のバアさんの介護をすれば対価がある』 『こうしてケア労働は 第三者に移転可能な対価を伴う行為だと認識されました。タダ働きを経て介護市場に専門性・資格等を付加し "対価の伴う労働" になりました』。

 『介護は "評価なき感謝なき" タダ働きで "女(嫁)の務め" で "逃げ場なき強制労働" でした』 『 "孝行嫁表彰" を行う自治体に、樋口恵子さんが怒り狂ったことさえありました』 『改めていいます。介護(ケア)は他人にされたら対価を伴う行為であり 労働です。身内であれ感謝して当たり前の行為なのです』。

 『セックスはどうでしょうか。質の良いセックスは両方が満足してこそ得られます。片方だけ満足するセックスは質の良いセックスとは言えません』 『介護も同様です。介護される側もする側も共にハッピーでなければ質の良い介護になりません。介護する側の労働条件が良くなければハッピーな介護にはなりません』。

 『私も72歳、高齢者です。長く生きていると、世の中って 変わらないようで変わってきているとわかります。世の中が勝手に自然に変わったのではありません。私達が変えてきたのです』 『若い人、後世の人に "こんな世の中に誰がしたの?" と問われ "ごめんなさい" と言わないで済む世の中を手渡したいですね』。

    
                       概ね読めますが「鶴」はちょっと...

 ここでまた聴講する女性から質問がありました。『日々葛藤することが多く、求められることが多すぎます。主婦、育児、仕事 ... 一人で全部請け負わなければなりません』と涙声の訴えでした。

 上野さんは『あなたに一つ言いたいことがあります』 『自分の時間とエネルギーには限りがあります。優先順位をつけなきゃやってられません。日々の行為を腑分けし、今!自分はこれを優先したい。そうでないことは眼をつぶって後まわしにする、と。優先順位は時々刻々変わりますから 適宜!順位も変えながら...』。

    

 一昨年の東大入学式の上野さんの "祝辞" 『あなた方の恵まれた環境と能力を、恵まれない人を貶めるためにではなく、恵まれない人を援けるために使って下さい』が大きく取り上げられました。

 『これに、ははぁ~ん! ノブレス・オブリージュってことね、と思った方がいます』 『でもその言葉の後には "そして 強がらず、弱さを認め、支え合って生きてください" と…』 『強者も常に強者のままではいられません。強者も かつては弱者だったかもしれないし、これから弱者になるかもしれないのですから』。
     ※ ノブレス・オブリージュ ... 地位の高さに伴う義務と責任

 『"フェミニズム" とは... 弱者が弱者のまま尊重される社会をめざします』 『フェミニズムを単なる男女平等と思っている男性が "君たち、僕らになりたいの? だったらオンナ棄ててかかってこいよ" などと...。弱者になっても安心して生きられる社会をつくることをめざすのが フェミニズムなんです』。

    
                東大入学式で祝辞をのべる上野千鶴子さん(2019.4.12)

  上野千鶴子さん「超高齢社会を生きる道」
       安心して "弱者" になれる社会を!
       安心して "要介護者" になれる社会を!
       安心して "認知症" になれる社会を!
       "障碍者" になっても殺されない社会を!


 『私、"認知症予防" って言葉、大嫌いです。認知症って ほんとうに予防できるんですか? なりたくてなっているんですか? 予防を怠ったから認知症になったんですか?』。
 上野さんのこの言葉... 認知症予備軍?のデ某の胸にスト~ンと!

 最後にご自身の生きてきた道をふり返り ...
 『私の著 "生きる延びるための思想"の表紙に安藤忠雄さん設計 "光の教会" の写真を使いました。
  装丁に 一つ注文をつけました。"十字架が十字架に見えない" 装丁を!と』。 
 『私はクリスチャンの家で育ち、やがて教会を離れました。その時、自分に禁じたことが一つあります。
  それは "祈る" ことをやめること。私にとって、あの世のことはどうでもいいのです。
  この世のことをこの世で解決しよう! と思って生きてきました』。


     

      "This Land is Your Land" ... 昔! 上野さんが勤めた京都の某大学のキャンパスでオデッタ公演を聴きました

      pukarikoさんに 上野千鶴子さん「退職記念特別講演(2011.7.9)」You tube を教えて頂きました。
         https://www.youtube.com/watch?v=sktopFvfKL0  

 【補遺】… 2022.12.17 記
    You tube.で佐高信×平野貞夫×早野透の「三ジジ放談」を痛快に思いながら視聴していました。
    しかし先日早野透さんが急逝され ガックシでありました。
    その追悼 You tube.には 辻元清美さんを迎え それはそれで興味深く視聴しました(下記 You tube 参照)
    そのYou tube を視聴しながら「三ババ放談」もいいなぁ… と思いました。
    ここでご紹介した上野千鶴子さん・浜矩子さん・田嶋陽子さんあたり…。


    

過去ログ目次一覧】
早野透【 平野貞夫×佐高信×辻元清美吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c


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2 コメント

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弱者の気持ち (pukariko)
2021-04-06 14:21:09
こんにちは。
「自分が養ってやっている、食わしてやっている」と言う夫には
「お金そのまま食べられるの? 
 私の家事育児、外注したらいくらになるか知ってる?」
が反論でした。
介護は嫁の仕事、と言われたら、
「そもそも誰の親?」


YTに動画がありました。

「今は長寿社会になり、長い老後がある。
 かつて強者であった男たちも
 年取って等しく弱者になるようになった」
というところ。
等しく弱者になって、弱者の気持ちをかみしめていただきたい。

夫のオムツを替えながらね、お尻をつねってやるの。さんざん我慢してきたからね。
と言ってたおばあさんを思い出しました。


https://www.youtube.com/watch?v=sktopFvfKL0
Re : pukarokoさん「弱者の気持ち」 (デ某)
2021-04-06 20:03:56
pukarikoさん
コメント早速に!ありがとうございました
労多く 反応少なし!と覚悟していましたが、
「pukarikoさんからは鋭い一刺し!があるかもなぁ」と思っていたら、そのとおりでした(笑)

おつれあい...いろいろおありだったのですねぇ
私は上野さんと異なり研究者ではありませんから "踏み込み" には ためらい があります

> 「私の家事育児、外注したらいくらになるか知ってる?」が反論でした。

仕事には対価(報酬)が当たり前ですが、
男女、家事労働か否かを問わず、報酬の客観的価値
計るのは至難です。
理論的に導かれる価値と労働する者の実感としての価値には乖離がありますし...。
ご紹介いただいた「退職記念特別講演」で語られていますように
家事労働を「余暇活動」、育児をさえ「消費活動」という経済学者がいるんですからねぇ
こういう方はエコノミストと言いません。
エゴノミストと言うべきでありましょう。

> 「今は長寿社会になり、長い老後がある。
 かつて強者であった男たちも年取って等しく弱者になるようになった」
> 等しく弱者になって、弱者の気持ちをかみしめていただきたい。

たとえ弱者になっても その気持ちを噛みしめられない方が多いと思います。
「運が悪かった」などと言っては ただ悔しがっていたり...。
どうすればいいのか...?
やはり社会の仕組み、経済の仕組み、法の基本の枠組みを抜本的に変えるほかありません。
しかし内閣支持率も某知事支持率も結構!底固いですからねぇ

> 夫のオムツを替えながらね、お尻をつねってやる...と言ってたおばあさんを思い出しました。
私もいずれ寝たきりになり...お尻をツネられるのかなぁ

なお 教えていただいた「退職記念特別講演」のURL... 拙ブログ本文に載せました。
ありがとうございました。

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