デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

最後の恋

2017-02-11 19:42:52 | 新聞・TV・映画・舞台・書籍etc.
    

 今朝は冷え込み、今冬三度目の積雪がありました。薄雪の拙庭に咲く蝋梅もやや異なる趣を醸しています。それは兎も角、本稿は本来シマジロウ・マター?ですが、春眠暁を覚えず、否、寒さに縮こまり炬燵から出ようとしませんので、やむなく私が書きます。

 さて、ちょうど2か月前。殆どTVを視ない妻が珍しく大笑いして視入っていました。『京都祇園の29日間/夏目漱石 最後の恋』の見出しに惹かれたのでしょう。昨年12月10日に放送された「漱石悶々」、私は録画したまま忘れ今頃になって視ました。

     

 漱石が亡くなったのは大正5年12月9日、享年49歳。今の私には若造!の年齢ですが、勿論!精神年齢は遥かに老成していたことでしょう。その亡くなる前年の春、漱石は生涯3回目の京都の旅に出ます、支度する妻鏡子の厭味を愛猫と聴きつつ...(写真上)

 鏡子の厭味は『私は伊勢も高野(山)も行ったことはありません。いつか連れて行ってくださいな』。これに対する漱石の一言『それは、紺屋の明後日(こんやのあさって)』。「紺屋の白袴」は聞いたことありますが・・・。これ、実はもう一つの場面にも出てきます。
 ※紺屋の明後日・・・「紺屋の言うことはアテにならない」の意。「紺屋」と「高野」の掛け言葉の由。

     

 旅のきっかけは、漱石山房の文人の一員であり漱石「道草」「明暗」の装丁も手がけた画家、津田青楓の招きによるとされています。汽車は京都駅(当時は「京都七条駅」)に着き青楓が出迎えます(写真上)。SLは梅小路の蒸気機関車博物館にあるホンモノかな?

     

 京都のロングステイ?は宿はじめ総て津田青楓が段取りしました。漱石役は、意外なほどハマって!いた「トヨエツ」こと豊川悦司。そしてこの青楓役は、朝ドラ「べっぴんさん」ですみれの娘さくらが惚れ振られるジャズマン「ジロー」を演じる林遣郎です。

     

 京都では「一力」はじめ様々なところを案内されます。展開にあわせて視聴者を京都観光に誘うところでしょうが、流石!NHK、そのあたりは実に控え目。そしてその京都で漱石の心を捉えたのは祇園のお茶屋「大友」の女将、磯田多佳(宮沢りえ)でした。

     

 「春の川を隔てて男女かな」(写真上)。漱石が多佳におくった句です。「隔てて」にまた含蓄あるいは含羞?を覚えます。否...漱石の「最後の恋」の相手と知れば、ここは含蓄でも含羞でもなく「おとこおんな・・・そのもの」と言うべきでしょう。嗚呼...羞かし!

     

 たぶん妻が大笑いしたのは・・・漱石ファンの芸妓「金ちゃん」こと金之助が宿を訪れる場面。金ちゃんは漱石を『なんぞ日本語の上手な西洋人のおじいちゃんのような感じ』とか『先生が便所に行かはったら、ついて行って おいど拭いてあげたいくらいや』(写真下)
 ※ 金ちゃん役の鈴木杏、宮沢りえより存在感がありました。なお「金之助」は漱石の本名でもあります。

     

 多佳が請われて踊ったの舞は「黒髪」。愛しい男に棄てられた女の哀しみを歌い舞う、いわゆる「艶物」の地唄舞です。年々艶っぽくなる宮沢りえさんの舞(写真下)は絶品ながら、この物語の伏線としてはよくわかりません。以下はその歌詞 ⇒ 黒髪の結ばれたる思いをば/解けて寝た夜の枕こそ/独り寝る夜の仇枕/袖は片敷く妻じゃと言うて/愚痴な女の心と知らで/しんと更けたる鐘の声/夕べの夢の今朝覚めて/ゆかし懐かしやるせなや/積もると知らで積もる白雪」

     

 「北野(天満宮)で梅見する」と多佳と交わした約束を反古にされた漱石は怒りで体調を崩し置屋に二晩逗留します。一応?仲直りした二人が襖越しに寝るシーンが写真下。前記「春の川を隔てて男女かな」の句の「春の川」を「襖」にすればピタリ!はまります。

     

 写真下は多佳の日記帳。多佳の知らぬ間に漱石が読みます。ここらが前記の舞「黒髪」を若干!連想させます。そして何気もなく立ち去ります。江戸っ子の漱石は京都人から見れば「野暮」に描かれるのですが、この場面はなかなか粋と風流を解する漱石でした。

     

 で、それとなく気分転換に出かけてたことを思わせるのが写真下のシーンでしょうか。たぶん高瀬川のあたりと思われますが、この川底の浅さは現在の高瀬川、当時の高瀬川はもう少し深く、森鴎外「高瀬舟」が浮かび通れるぐらいの深さであったでしょうねぇ。

     

 この物語で、漱石付きの女中「梅」を演じる女優さん(写真下)、短い台詞の遣り取りがなかなか面白く、存在感がありました。私はぜんぜん存じませんでしたが、タイトルバックで見ると「犬山イヌコ」とありました。関西演劇界の結構!広い畑を思いました。

     

 もっと長く逗留する予定の漱石が29日で切上げ東京へ帰ります。その後、漱石から芸妓の金ちゃんには漱石のサイン入り近著「硝子戸の中」が届きますが、多佳には届きません。多佳がそのことを手紙に書くと、漱石の癇癪(カンシヤク)じみた返事が届きます。

     

 漱石はまだ「北野の梅見」の約束を反古にされたことをイジイジ?と根にもっていたようです。ロンドンで患った神経症、もしかすればパラノイア(偏執症)の傾向もあったのではないでしょうか。それとも、やっぱり?ただの野暮!が出たと言うべきでしょうか?

     

 まあ、そんなところ・・・です。私も含めて漱石ファンのためにお断りをしておきますと、番組の最後に、「これは漱石の日記や書簡をもとに多少の妄想を加えたフィクションです」と。滅っ茶苦茶!面白かったのですが、番組を視てもらうのが一番ですね。

 ※ 明12日(日)午後1:30~3:00、BS103で再放送されます。興味のある方はご覧下さい。

     

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8 コメント

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三日分の更新を読みました。 (六花)
2017-02-12 08:43:47
いつ開いても更新が無いブログと諦めていました。
今朝開くと・・まあ三日間も書いていらっしゃるのですね。

河島英五はタブレットになりましてからの
常連客になっています。 親が子に残すもの
についてしばし立ち止まりました。

癌治療は 生きよう 生きたいと思っている方のために 早く一日も早くと
念いました。
六花のように毎朝 「もう連れて言ってもいいよ」とつぶやいている人間には
よそ事のようで・・こんな事を書くと
みな様に嫌われますね。

漱石TV見ました。 自称文学少女だった
六花は 「これで漱石全部読んだ」などと傲慢な姿勢で過ごした青春時代。
恥じ入るばかりです。

言葉 「ひゃっこいねぇ~」これ小さい時にみんな使っていました。
いまはどこへ行ったやら・・この言葉と共に思い出す情景は ぼっこてぶくろが
濡れ 雪がこびりつき、がちがち氷った手袋をはいていた遊び姿です。
いまそんなことして遊ぶ子はいないし
防寒具しっかりしていますよね~
なんだか具にもつかぬ事長々おしゃべりしました。 お許しを・・したっけネ~

 
返信する
Re:六花さん (デ某)
2017-02-12 11:49:09
六花さん
早速のコメントありがとうございます

> いつ開いても更新が無いブログと諦めていました。
> まあ三日間も書いていらっしゃるのですね。
まことに・・・太く、否、不徳のいたすところです
実物は大きくて目立つのに ブログは至って地味なものですから・・・

> 河島英五はタブレットになりましてからの常連客に... 
> 親が子に残すものについて しばし立ち止まりました。

お酒が命を縮めましたけど、お酒がなければ!とは言い難いのが彼かも...
お子たちが「怖い顔で叱られた記憶がない」と仰っていました。
歌と実人生がそのままにつながる方だったのだと思います。

> 癌治療は 生きよう 生きたいと思っている方のために 一日も早くと...
> 毎朝「もう連れて言ってもいいよ」とつぶやいている人間には よそ事のよう...
> こんな事を書くと みな様に嫌われますね。
嫌われません!けど...叱られますよ
えぞをさんも「早く来て」とは仰いますまい。
いつか誰もが必ず行く世界ですし、宇宙時間では人の一生の時間も一瞬かと...

> 漱石TV見ました。 
> 「これで漱石全部読んだ」などと傲慢な姿勢で過ごした青春時代。
私、「全部読んだ」と言えるのは 漱石と 刊行されている本多勝一氏の著ながら
「読んだ」と「読み取った」は、仰るように 異なると...。

> 「ひゃっこいねぇ~」
> この言葉と共に思い出す情景... 
言葉は死語辞典に入っても 情景は言葉とともに人の記憶に残っていますよね

> 長々おしゃべりしました。
とんでもありません。おしゃべりこそブログの幹線(感線)
またいらしてください。こちらからも・・・したっけねぇ~
返信する
蝋梅 (リーのママ)
2017-02-12 14:13:08
雪を纏った蝋梅もなかなかの趣。
今年はたくさん雪が降りますねぇ~と言ってみたいのですが、確かに一昨日は盛大に降って一瞬だけ雪化粧した風景が現れました。
本当に一瞬だけで、次に窓の外を見た時は消滅していました。
寒いだけで雪は積もらない…いつものように繰り言です。

家は何故かBSが見られない設定にしてしまったので、BSでいい番組があると歯ぎしりをして悔しがります。

BSが見られるようにしようか?と夫に水を向けてみたのですが、余りTVに執着がない夫に鼻であしらわれました。

漱石と言えば、尾野真千子さんがやった土曜ドラマ「夏目漱石の妻」は面白かったです。漱石ってそんなに神経症が激しかったのかってビックリしました。

高校生の時「こゝろ」を読みましたが、ミステリー好きには読破が辛かった記憶があります。

漱石は49歳でしたか。
ショパンは8歳でピアノ曲を書いたと昨日TVで知りましたが、才能のある人は若い内にことを成すのかもしれませんね。
ことを成していない私は長生き出来るかも!


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漱石の妻は (呑兵衛あな)
2017-02-12 14:18:29
私としては「妻の鏡子」役は、NHK 土曜ドラマで“夏目漱石の妻”を演じた尾野真千子氏が適役では(?)と眺めています。
勝手に“漱石の妻”とは、あんな感じだったのだろうと思って笑っていました。
http://www.nhk.or.jp/dodra/souseki/
同ドラマの漱石役も、さもありなんと見ました。
『漱石の思い出』 (〜思ひ出)夏目鏡子述・松岡譲筆録 (新版は文春文庫、ISBN 4-16-720802-4)
返信する
Re:リーのママさん (デ某)
2017-02-12 17:39:45
リーのママさん
コメントいつもありがとうございます

> 雪を纏った蝋梅もなかなかの趣。
> 一昨日は盛大に降って一瞬だけ雪化粧した風景が現れました。
蝋梅は 美しいという以上に 不思議な花!と・・・
もう盛りを過ぎた・・・と思っていたら まだ蕾があります。
京都御所にも梅・桃・桜にまじって少しあり、
四月でもまだしぶとく咲き残るので 老!梅と・・・。

> 寒いだけで雪は積もらない…いつものように繰り言です。
寒いのに憑かれたようにジョギングしては 脚が痛い・・・は私の繰り言

> 家は何故かBSが見られない設定に・・・
私は地上波をあまり見ません
なぜか嫌いなNHKを、とりわけBS101、103をよく視ているAHOです

> TVに執着がない夫に鼻であしらわれ・・・
それって理想のご亭主かと・・・

> 漱石と言えば、尾野真千子さんがやった土曜ドラマ「夏目漱石の妻」・・・
その番組、録画したまま未だ視ていません(カビが生える?)
そろそろ視なさい!ってことでしょうね。

> 高校生の時「こゝろ」を読みました
漱石も清張も・・・ミステリーの才能ってオールマイティかも知れません

> ミステリー好きには読破が辛かった記憶があります。
えっ? ちょっとよくわかりまセーヌ河です

> 漱石は49歳・・・ショパンは8歳で・・・
漱石は「余裕派」と言われるにふさわしい作風であり才能かなぁと思います。
小説家の頭の中は少し覗くことができますが、
音楽家は天才、想像の及ばない世界の人だと思います。

> 才能のある人は若い内にことを成す・・・
> ことを成していない私は長生き出来るかも!
すごい!論理です。最強です(笑)
返信する
Re:呑兵衛あなさん (デ某)
2017-02-12 17:58:12

呑兵衛あなさん
コメントありがとうございます

> 「妻の鏡子」役は、
> NHK 土曜ドラマで“夏目漱石の妻”を演じた尾野真千子氏が適役では(?)
↑のコメレスに記しましたように、全4回を録画したまま未だ視ていません
視なければ・・・と

> 勝手に“漱石の妻”とは、あんな感じだったのだろうと思って笑っていました。
猛妻、賢母など諸説ありますね
今はやりの「フェイク」と異なり(笑) たぶん総て当っているような気がします。

> 同ドラマの漱石役も、さもありなんと見ました。
早く視るように!と?

> 『漱石の思い出』夏目鏡子述・松岡譲筆録
前番組はここからかなりの部分を借用しているかもしれませんね。
宿題が増えました
返信する
49歳。 (風のフェリシア)
2017-02-12 21:06:34
漱石って、49歳で亡くなっているのですね。
漱石を読んでいた頃、彼が若くして亡くなった印象はありませんでした。

私も、残念ながらBSを観ることはできないのです。
地上波は面白くないので、こういう番組を紹介されると、
BSを申し込もうかしら?と衝動的に思ってしまいます。
NHK土曜ドラマ「夏目漱石の妻」は観ましたよ。ただ、長谷川博己より豊川悦司の漱石の方が「らし」そうな気がいたしますが、どうなんでしょう?
デ某さん、早くご覧になって感想をブログにアップしてくださいませね!←急かす私(^^;)
返信する
Re:風のフェリシアさん (デ某)
2017-02-13 00:51:17
風のフェリシアさん
コメントありがとうございました

> 漱石って、49歳で亡くなっているのですね。
> 若くして亡くなった印象はありませんでした。

あの時代の49歳と現在の49歳はちがうと思います。
しかしキャリアとして蓄積するものはそう大きく異なる筈がありません。
やはり 天才に特有の背伸びが漱石にあったと思います。
そういう音楽家を知っていますから、何とはなく想像ができます。

> 私も、残念ながらBSを観ることはできないのです。
地上波は ほんと! 公共の電波の無駄遣いをしています
民放は一つしかチャンネルがないかのような番組ばかり・・・。

> BSを申し込もうかしら?と衝動的に思ってしまいます。

地上波、BS、地方局を問わず ドラマ、ドキュメントだけでも
たとえ1年遅れでも 図書館でDVDとして視聴できれば!と思います。

> 「夏目漱石の妻」は観ましたよ。
> 早くご覧になって感想をブログにアップしてくださいませね!←急かす私
TV番組のUPって 結構!手間暇かかるんですよね、そう読まれないのに・・・
でもいずれ・・・
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