
以前、ある方のブログでこの映画を知りました。あらためてあの戦争を問う映画、ポスターの絵からすでに魅かれたアニメ、そして京都の繁華街にある 廃校になった小学校の校舎を利用した映画館「立誠シネマ」。いずれ・・・と思っていて、今日!行きました。
映画の舞台は、軍港で知られた呉。私の父は、戦争中に呉の高射砲部隊に配属されたことがあり、後に「敵は高射砲の性能を知りつくし弾はB29にまったく届かんかった」と語っていました。映画で、B29に高射砲が向けられるシーンに一瞬!胸が詰まりました。

阪急河原町駅を降り、高瀬川に沿って木屋町を北へ徒歩数分。学校らしい建物が見えたら、それが「立誠シネマ」です。明治30年のちょうど今の時期、この小学校が建つ前のこの地(京都電燈株式会社の中庭)で日本で初めて映画の試写実験が行われました。

立誠小学校は昭和3年に建てられ、67年後の平成5年に廃校になりました。その玄関が、そのまま立誠シネマの玄関になっています。それと知らなければ小学校だと思い通り過ぎてしまうでしょう。玄関に入ると小学校らしい懐かしい匂いがまだ漂います。
戦中から敗戦直後までの数年間、広島から呉に嫁いだ娘(すずさん)の、当時としてはごく普通の日々、やがて軍港の街とあって連日!焼夷弾に襲われる日々、右手を失くしたすずさんは玉音放送に「まだ左手も足もある。みんな玉砕する筈じゃなかったのか」。

玄関から廊下に沿ってかつての校長室、職員室、保健室らしき部屋が並びます。写真からは薄暗くて辛気臭く思われるでしょうが、寧ろ落ち着いた雰囲気に安らぎさえ覚えます。そして奥の階段の踊り場には南側からの陽光がさんさんと降り注いでいます。
戦時下の小学校では授業らしい授業は行われません。「休んでも、どうせたいした授業はないじゃろ」と・・・。すずさんの年齢にあわせているためか学校の様子は詳細には描かれませんが、あの時代、親をなくした子はいったいどんな日々を送ったのでしょう・・・。

階段の踊り場は、写真では逆光のためシルエットぽく見えますが、ほっこり明るい陽だまりです。2階は衣料品のお店か縫製場?などに使われていて「関係者外ご遠慮を」と。シネマは3階まで上がります。幅広い階段を上るのが、なんか胸躍り心愉しくて・・・。

壁に貼られたポスターは「近日公開」の映画・・・。上写真の右側のポスターをご覧ください。「David Bowie is」と書かれたデヴィッド・ボウイ追悼1周年、生誕70周年の回顧ドキュメントです。ちなみに「デブと某医」はデヴィッド・ボウイにちなみます(笑)

3階に来ると漸くシネマのフロアーです。ひと気ないように見えるのは、人のいない時を見はからって撮ったためで、上映時間が近づき続々人が集まってきます。客席数はたぶん50~60のミニシアター、平日の午后なのに一瞬!「札止め」を心配しました。

ドアを開けて係の方が「間もなく上映します。お急ぎくださ~い」。このドアから入るとそこがロビーで、映画関連の書籍等が展示されていました。撮りたかったのですが、たくさん人がいて撮るのは差し控えました。若い方が多いのが殊の外!嬉しかったです。
冒頭から、シーンの一つ一つになんとも仕合わせな気分に誘われます。のどかで平和で普通の人々の普通の暮し・・・。天真爛漫でのほほんとしたすずさんは18歳、えっ?と思うほどあっけなく・・・言われるままに結婚し、嫁ぎ先でもその性格のままに溶け込みます。
やがて戦火は烈しさを増し、絵が得意で、絵でみんなを和ませていたすずさんの右手が爆弾で失われます。そして8月6日、実家の広島に原爆が落とされ、茫然と遠くのキノコ雲を眺めます。原爆の惨禍は・・・アニメであっても極まりなく酷く、こころ塞ぎます。
敗戦、食糧難、進駐軍・・・。空襲後は涙が止まらないシーンが続きますが、戦争孤児と思われる子をすずさんがひきとり再び戦争前の普通の家族の、普通の穏やかで笑いのある日々が甦ります。なお、男女の心の襞に触れる秀逸な挿話は、映画をご覧ください。
映画冒頭に流れる「悲しくてやりきれない」。サトウハチローさんの詩に加藤和彦さんが作曲しました。サトウさんには「もずが枯れ木で」という秀逸な反戦歌がありますが、怒りの矛先が見つからない絶望を歌う「悲しくてやりきれない」ではあります。

【過去ログ目次一覧】
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
歌手に出会った。
どの方も哀愁をおびていてこころに水が
しみ入るように入ってくる。
今日 京都の友人へ手紙を書いた
お年賀下さる数少ない人の一人から
音信が無い。 脳幹に腫瘍が出来ているの・・それが出会いだった。
偶然京都のデ某さん。
お寺巡りより こんな形の古い校舎に
行ってみたいと郷愁の様なものを感じた。
総てはあたたかな季節が巡ってきたら・・
またこの曲を 六花の更新にも載せたくなった でも他の映像でね・・いい?
したっけね~
2階は衣料品のお店か縫製場なんですね。なんか凄くお洒落!どんな風に使われているのかとても興味深いです。
このイラストは見かけた覚えがあるのですが、こんなストーリーの映画だとは知りませんでした。「かなしくてやりきれない」も聞いたことはありましたが、怒りの矛先が見つからない絶望を歌ったものだったのですね。恋愛だとか人生のやりきれない想いを歌ったものだと思っていました。本当の意味を知って聞き直すと、何ともやるせなく悲しい深い歌詞です。
戦争ものは悲し過ぎますが機会があれば、私も是非この映画観てみたいです。
で次回来館は、デ某さんの由来でもあるデヴィッド・ボウイ!決定ですね。
先月、阪急河原町から歌舞練場まで歩いているとき、
何だろうあの建物は・・・と川を隔てて見てました。
フリマか何かやってましたが、あれが立誠シネマだったんだ~。
レトロで雰囲気ありますね。寄ってみればよかったな~。
ギター一本で歌えるシンプルな曲が、アレンジ次第でこんな曲に・・・。
早速のコメントありがとうございました
なんか・・・そんな感じ?がしていました。
> この曲を歌う幾人かの歌手に出会った。
> どの方も哀愁をおびていてこころに水が
しみ入るように入ってくる。
1970年前後・・・学生時代に聴きました
作曲は加藤和彦さんとしても、作詞は北山修さんだと思いこんでいました。
ブログを書くに際し、サトウハチローさんの作詞と知ってびっくりしました。
そして曲が先に出来、その一週間後に作詞されたことも初めて知りました。
> お寺巡りより こんな形の古い校舎に
行ってみたいと郷愁の様なものを感じた
京都市内の繁華街から子ども消え 小中学校の統廃合がふえたようです
「地蔵盆」がなくなった地域もあるぐらいですからねぇ。
旧い校舎をこうして残しているところは、京都に拍手をおくりたいです。
なお京都のお寺さんには「お高い」ところもありますけど、
お高いところは何事につけきちんとされているのも京都でしょうか・・・。
> 音信が無い京都の友人へ手紙を書いた
> 脳幹に腫瘍が出来ている・・・それが出会いだった。
> 総てはあたたかな季節が巡ってきたら・・・
うららかな春の旅・・・プランニングするだけで心が躍るもの。
嬉しい再会も淋しいことも・・・旅は人生そのものかもしれませんね。
> この曲を 六花の更新にも載せたくなった でも他の映像でね・・・いい?
どうぞどうぞ・・・私の曲ではありませんが(笑)
六花さんがUPされた「The Rose」・・・私の大好きな曲でこれ迄もご紹介しました。
春を待つこの季節にふさわしい素晴らしい曲ですね。
ベット・ミドラーさんで知られますが、
亡くなったジャニス・ジョプリンの歌も・・・それはもう素晴らしいです。
そして手嶌葵さんもまた限りなく・・・。
> したっけね~
はい、こちらからも したっけねぇ~
コメントありがとうございました
> 小学校だった建物が映画館に
> 客席が50~60席とこじんまりなのが とっても素敵ですね。
観客席に2教室があてられ、ゆったり広くて低い椅子の座り心地もGood!
> 2階は衣料品のお店か縫製場なんですね。なんか凄くお洒落!
通りがけに見ただけで・・・もしかして倉庫がわりかもしれません
> イラストは見かけた覚えがあるのですが、こんなストーリーの映画だとは・・・
ご覧になったかもしれませんが、TVで紹介された映像のURLを貼っておきます
https://www.youtube.com/watch?v=mEo6cmCCQco
> 「かなしくてやりきれない」
> 怒りの矛先が見つからない絶望を歌ったものだったのですね。
> 恋愛だとか人生のやりきれない想いを歌ったものだと思っていました。
> 本当の意味を知って聞き直すと、何ともやるせなく悲しい深い歌詞です。
サトウハチローさん「もずが枯れ木で」の3番の歌詞、
『兄さは満州へ行っただよ/鉄砲が涙で 光っただ
もずよ寒いと鳴くがよい/兄さはもっと寒いだろ』
仰るように あの時代を生きた人の作品には実に様々な思いがこめられていますね。
> 戦争ものは悲し過ぎますが 機会があれば、私も是非この映画観てみたいです。
私は立誠シネマにも興味があって京都にまいりましたが
上映館が広がり、私の地元でも上映されています。
お近くで機会があれば、ぜひ!
> で次回来館は、デ某さんの由来でもあるデヴィッド・ボウイ!決定ですね。
髪を真っ赤に染め 顔にペイントなどしてまいりますか・・・
こんばんは。コメントありがとうございました
> 先月、阪急河原町から歌舞練場まで歩いているとき、
> 何だろうあの建物は・・・と川を隔てて見てました。
もう少し看板を大きくすれば! と思いますけど、それも奥床しさかなぁ
> フリマか何かやってましたが、あれが立誠シネマだったんだ~。
天気が良いと玄関前でカフェテラスなどもできそうですね
> レトロで雰囲気ありますね。寄ってみればよかったな~。
かなり流行りそうな予感がします。機会がありましたら ぜひ!
> ギター一本で歌えるシンプルな曲が、アレンジ次第でこんな曲に・・・。
「The Rose」の手嶌葵さんも雰囲気的によく似た感じですね
童謡「この道」を大貫妙子さんが歌うとこうなります。
恩師が、宴の終わりに必ず歌った曲でした。
戦に赴くのは人であり
人には暮らしがあり、家族があり、故郷がある。
「地球儀を俯瞰」するのも大切ですが
ひとりひとりの人を見つめる目線がなにより大切に思います。
コメントありがとうございました。
「もずが枯れ木で」。
学生時代、この歌詞の「鉄砲が涙で光っただ」を巡り大論争をしました。
「鉄砲が涙で光っただ」か、それとも「鉄砲が涙に光っただ」か・・・。
詳細は記しませんが(笑)、それぞれの思想性?を懸けて・・・。
> 戦に赴くのは人であり 人には暮らしがあり、家族があり、故郷がある。
戦に狩り出すのも人であり、その人にも暮し・家族・故郷がある筈なのに・・・
悲しくてやりきれないとは、そういうことでもあるのかと・・・。
> 「地球儀を俯瞰」するのも大切ですが・・・
チャプリン「独裁者」で総統が地球儀の風船を弄ぶシーンが思い浮かびました
あの道をまた辿るのでしょうか・・・。
みんないっしょにバタバタ斃れるより、
死ぬときは、死ぬときぐらいは、一人の方がいいのに(自然なのに)ね。
学生の頃受験を控えた閉塞感や社会の矛盾に対する気持ちだったり、そういうときに歌う歌だと思っていましたが、本当の悲しくてやりきれない思いを分かっているつもりでいた自分が恥ずかしいです。
機会があれば観たい映画です。
でも、近くのシネコンではやらないみたい、残念です。
いつもコメントありがとうございます
> 「悲しくてやりきれない」...受験を控えた閉塞感や社会の矛盾に対する気持ち...
> そういうときに歌う歌だと思っていました
この歌の誕生エピソードとして、部屋に缶詰にされ短時間での作曲を迫られ、
「イムジン河」のコードを逆にして作曲したなど 意外なことばかり...。
曲想とか詩想とかは、そうした意外なところから突如!湧くのでしょうねぇ。
> 本当の悲しくてやりきれない思いを分かっているつもりでいた自分が恥ずかし
い
歌う人も聴く人も みんなが本当のことを分かっていたら この歌は流行らず
フォーククルセダースも「おらは死んじまっただ」で終わったかもしれません。
> 機会があれば観たい映画です。
> 近くのシネコンではやらないみたい、残念です。
地を這うように評判が拡がっていますから、
案外!どこか近くで上映されるようになるかもしれませんね。
期待しましょう