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ロビー・シュレンプ ジャージー NHL

NHLエドモントンオイラーズのレフトウィング、ロビー・シュレンプのジャージーのコレクティブル。彼自身はほとんど試合に出ておらず無名の選手だが、ここで紹介するのは、このコレクティブルが最近の流行を説明するのに適しているからである。その流行とは、見るとすぐに判るのだが、ジャージの部分の大きなコレクティブルが作られるようになっているということである。スポーツ選手のジャージなユニフォームをあしらったコレクティブルが最初に登場したのが1996年で、それからもう10年以上が経過した。その間、数多くのコレクティブルが製造され、多くのファンは、もうすでに少なくとも1枚はお気に入りの選手のコレクティブルを手に入れているという状態になっている。そうしたなか、さらにファンの購買意欲をそそるために、製造業者はいろいろな知恵を絞る。その知恵の1つが、コレクティブルの部分を出来るだけ大きくするということである。大きくすると当然製作できる枚数が少なくなり、希少価値を消費者に訴えることもできる。これは、そうした方向性を体現した1枚である。
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青年ヒトラー 大澤武夫

本書は「ユダヤ人に対するホロコーストはヒトラ-の頭の中で作られた思想である」「ヒトラーがいなければ最悪の事態にはならなかった」という考えのもと、ヒトラーの青年時代を詳しくみていくことで、ヒトラーの頭のなかに何がどのようにして生まれたのかを追跡した本である。ヒトラーの青年時代の経歴については、小学校のときの集合写真の不遜で自信にあふれた姿を見たことがあったし、美術学校の受験に失敗して浮浪者のような生活をしていたことも知っていた。私はそれらは自信家であった彼が自分を認めない社会への憎悪を膨らませていった証拠という文脈で理解していた。しかし本書を読むとそんな単純なことではないことが判る。
 とにかくこの本は驚きの連続だ。ヒトラーという人間は、目的に向かって計画的に努力することができない性格だったというマイナス面は数多くあったものの、青年時代を助け合ってすごした無二の親友もいたし、病弱な母親の介護のために献身的な努力をしたこともあったという。別に異常な人間ではなかったのだ。青年時代のヒトラーが金銭的に困っていたという俗説も間違いだそうだ。彼は父親の遺産のおかげでそれほど困っていなかったし、得意としたスケッチ画を売って得たお金もかなりのものだったと言う。ウィーンでの放浪生活は、兵役を忌避するための住所隠しに近いものだったそうだ。そうした彼が第一次世界大戦で数々の自己犠牲的な活躍をして、最高の栄誉「第1級鉤十字勲章」を受けたというのも、彼や後世の捏造ではなく本当のことだったそうだ。
 そして本書の最後の驚くべき結論は「ヒトラーの青年期にはユダヤ人をあそこまで憎悪する理由は全く見出せない」というものである。かれの本質は、①民族第一主義 ②人間の本能は「闘争」だという2点に尽きる。①は最も悲惨な時期の国際都市ウィーンで最悪の時期を過ごした体験からくるもの、②は第一次大戦の最前線で4年間過ごした経験からくるものだ。ヒトラーに対するこうした分析をみると、要するに30歳近くになっても自分の方向性が見出せず、戦争のために手にまともな職がないという1人の若者がそこにいるだけだ。今の日本、同じような人間を大量に作りだしているように思えて、戦慄せざるを得ない。(「青年ヒトラー」大澤武夫、平凡社新書)
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