水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

やりたいことノート(2)

2021年08月30日 | 学年だよりなど
1学年だより「やりたいことノート(2)」


 紙やノートに自分の気持ちや経験を書き出すのは、「ジャーナリング」とよばれる作業だ。
 何をどう書けば、幸福感があがるのか、心が落ち着くのかなど、「ジャーナリング」に関する実験的研究も行われている。
 18歳から42歳までの81人の大学生が、4日間で20分間のジャーナリングを行うという実験では、①将来の最高の自分についてのストーリーを書く、②自分の人生で最もトラウマになっている出来事を書く、③その両方を書く、④その日の計画をできるだけ詳細に書く、という4つのグループ分けが設定された。
 実験の前後に気分の測定を行うと、将来の自分について書いた①グループが、最も心が落ち着き、その効果が3週間後まで続いたという。過去のトラウマを書き出した②グループにも効果はあり、5ヶ月後の調査では、①~③グループは、④グループに比べて病気が減っていたという。


~ 研究者たちは「将来の最高の自分」を想像して書き出すことで気分が良くなり、幸福度が上がるだけでなく、「自分の最善の未来に焦点を合わせれば、目標を効果的に追求できる可能性がある」とも述べている。これは未来の自分が今の自分をコントロールする「セルフレギュレーション(自己制御)」という考え方に基づいている。
 最高の自分をイメージすることで目標や優先順位がよりクリアになり、時間管理や学習習慣、食生活といった面で現在の自分にポジティブな影響を及ぼすのだ。簡単に言うとゴールから逆算して今やるべきことを考える、ということであり、仕事、勉強、筋トレ、恋愛すべてに共通する成功法則だ。成功のための行動が現在の幸福にもつながるのだから、こんなにお得なことはない。
                  (Testosteeone『幸福の達人』ユーキャン自由国民社) ~


 ノートに書いたぐらいで、その夢が叶うということはない。
 でも、書かないことには、何をやっていいかわからないままなのだ。
 漠然とした思いを形にするために、人は「言葉」を持ち、言葉のおかげで、自分がどうなりたいかをはっきり意識できるようになった。
 0(ゼロ)が1になるのは、大きい。
 ノートに書いたぐらいで夢は叶わけないが、書くことによって気分がよくなる。
 もしかしたら、夢に一歩でも近づけるかもしれないと思える。何をすればいいかがうかんでくる。そのうちの一つでも実際にやってみるかもしれない。さすがに一日に3時間ゲームするのはよくないと思えるかもしれない。寝る前に腹筋50回だけやれるかもしれない。
 1は2にしかならないかもしれないが、100になる可能性をも持つ。
 0は待ってても0のままだ。まず1にするのが「やりたいことノート」だ。
 推薦うんぬん関係なく、モチベーションをあげるために最も有効な作業だと言える。
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やりたいことノート

2021年08月27日 | 学年だよりなど
1学年だより「やりたいことノート」


 昨年度3年生を担当していて、推薦型入試の「志望理由書」「自己推薦書」を、相当数添削させてもらった。みなさんの中にも、再来年書くことを想定している人が多いかもしれない。
 推薦型入試(AO入試や指定校推薦)の受験を考えていなくても、自分が何学部に行きたいのか、どんな勉強をしたいのかについては、そろそろ考え初めてもいい。
「将来、自分がどんな仕事につきたいのかを考えて、大学選びをしよう」というような話を、受験雑誌などで読んだことがあるかもしれない。
 現実的には、将来の具体的な職業を思い浮かべて、それを基に大学を選ぼうとするのは、徒労になる可能性が高い。
「小学生がなりたい職業の第一位はYouTuber」、というような記事を読むと、みなさんはどう感じるだろう。「子供だからしかたないよね」か、それとも「実はおれもYouTuberを本気で目指してる」なのか。一昔前だったら、この手のアンケートに「YouTuber」と書かれることはなかった。
「プロのゲーマーになりたい」でもいいし、「学生のうちに自分の会社を持ちたい」でもいいが、一昔前だと想像もできないことが、現実には普通に可能な時代だ。
 商社マンになりたい、金融関係に努めたい、エンジニアになりたい、広告会社に入りたい……。
 周囲からうらやましがられそうなこういう職種が、十年後も確実に存在するだろうか?
 今のみなさんが想像するようなあり方で存在しているとは、なかなか思えない状況にある。
 お医者さん、法曹関係といった、ちょー頭のいい人しかなれなそうな仕事でも、AI技術の進化とともに大きく様変わりするだろう。
 そもそも、みなさんは、どれほどの職種を知っているのか。YouTuberになりたいと口にする今時の小学生とどれほど違うのか。
 実は大人も同じだ。われわれ教員も、みなさんのおうちのかたも、進路の雑誌を作っている人も、それぞれ狭い世界しか知らない。
 いやうちのお父さんは世界を股にかけて活躍しているという人もいるかもしれないが、世界の広さの前には、個人の知っている世界など0.001%にも達しない。
 逆にほとんど外に出ないで、部屋にこもっているだけのような人が、かえって様々な情報を手にいれ、世の中をマクロに捉えられている場合もある。
 どんな仕事をするかではなく、どのように働くかが大事になってくるのだと思う。
 何を見ているかではなく、どう見るかによって、ものの見え方は変わる。
 ちょっと漠然としているので、将来を具体的に考える方法を伝えておきたい。
 自分の将来像をつくるためのノートを一冊用意しよう。
 そこに、やりたい仕事、気になる学問、入ってみたい大学、好きなもの、興味をもっているものを、いろいろと書き出してみる。さらに、それらからの連想で、やってみたいこと、行ってみたい場所、会ってみたい人、読んでみたい本などをメモしてみる。
 次から次へとうかんできたら、それは自分の「やりたいこと」である可能性がきわめて高い。
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大地の子みやり(3)

2021年08月24日 | 学年だよりなど
1学年だより「大地の子みやり(3)」


 佐藤監督は、みやりを全国大会のメンバーに加えた。
 一年生ながら最も実力のある高田由美がはずれた。メンバー発表のあと高田は、塾長坂田のもとに電話をする。「塾長! ありがとうございました! 私達みんな、みやり先輩に行ってもらいたいと思ってました! みやり先輩は私達には勿体ないキャプテンです! 塾長は最高の方です!」
 事情を察して、感謝の言葉を伝えてきたのだ。
 メンバーを乗せた監督の車が発車するとき、最後まで追いかけてきたのも高田だった。
 この子のためにも、チームに迷惑をかけられない――。そう思いながら、みやりは霞ヶ関カンツリー倶楽部に降り立つ。
 大会初日、尚志学園は3位につける。北海道の学校がここまで上位になった例はなかった。
 一位の東海第二には高校生で日本アマオープンに優勝した井芹美保子がいた。二位の東北高校は宮里藍を擁し優勝候補だった。
 しかし、経験したことのない暑さのなか、二日目以降苦戦を強いられる。
 4人のメンバーのうち上位3人の成績合計がチームのポイントになる。
 2番手と目されていた選手が崩れたとき、監督は正直あきらめかけた。
 奇跡は起こる。最終日、みやりはベストスコア75で回ってきたのだった。
 その結果、団体全国3位という快挙を成し遂げた。
 みやりより下手な坂田塾生は、開校以来1人もいなかった。
 みやりは黙々と練習した。人の何十倍も練習した。
 運動神経のいい者、センスのある者はすぐに上手くなる半面、そこそこの努力で、ある程度のレベルに達してしまう。
 しかし下手な者は違う。努力することが当たり前だから、平気な顔で人の何十倍も努力ができてしまう。
 みやりより上手かった者の多くはプロを諦めていったが、みやりはこの後、大学でもゴルフを続け、プロゴルファーになるための努力を続けた。
 みやりは、坂田先生の訓示をいつも思い出し、口にしていた。


~ 「お前たちの花は咲く、咲かない花はない。
 人それぞれの咲き時、咲く処はある。山のテッペンに咲く花は淡くて小さい花だ。
 山のテッペン、絶壁、川沿い、海辺と、花の咲き処は幾つもあるが、
 山のテッペンに咲く花は急ぐな、焦るな。ゆっくりと咲いていけ。
 最後に咲く花になれ。野の花だ。咲き急がぬ花だ。大輪の花だ。
 一日一日の練習を大切にして生きていけ。
 そして、野の花を咲かせるのだ」 (坂田信弘・かざま鋭二『大地の子みやり』小学館) ~


 鈴木みやりこと、本多弥麗はこの後、日本女子プロゴルフ協会のテストに合格し、トーナメントプロになった。
 大輪の野の花を咲かせたのだ。
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大地の子みやり(2)

2021年08月21日 | 学年だよりなど
1学年だより「大地の子みやり(2)」


 幼い頃から将来のプロを目指して競技に取り組む。
 もちろん、誰もがプロになれるわけではないし、プロになったからといって生活が成り立つとは限らない。どんなスポーツ、いやどんなジャンルにもいえることだろう。
 一握りの存在であるプロプレイヤーになり、さらに一流選手として活躍できる人達が、恵まれた才能をもっていることはまちがいない。
 才能をもっている人は、おそらくたくさんいるのだろう。
 それをいかすだけの努力が必要で、環境に恵まれ、指導者と出会うといった運も必要になる。
 いろんなものの総体として、たとえばオリンピックのメダルがある。
 「メダリスト」と簡単に口にするが、彼ら彼女らがそう呼ばれるに至る道のりには、私たちが想像できないレベルで積み上げてきたものがある。
 彼らの道のりを知れば知るほど、個々人の持つ「才能」が占める割合は、われわれが思うほどに大きくないのかもしれないと思えてくるのもたしかだ。
 親や指導者のサポートがなければ、本人の圧倒的な努力は成立しない。努力とはそもそも何か。
 ひと言で定義できるものではないし、化学式で表すことも難しいが、おそらく最も相関があきらかになるのは、それに費やす時間と費用の総量ではないだろうか。
 私立尚志学園でゴルフ部に入って練習を続けるみやり。
 坂田塾のメンバーもみな進学するそこで、団体戦のメンバーに入るようなことはない。
 しかし伝統的に、一番下手な者がキャプテンになるという約束事があった。
 キャプテンになって、みやりはさらに練習量を増やす。授業のない日は、おにぎり6個をもって真駒内ゴルフセンターに行き、朝9時から夜9時まで打ち続けた。
 高校3年の夏。尚志学園は北海道予選を圧倒的な強さで勝ち抜け、全国代表になる。
 坂田塾代表の坂田信弘氏は、ゴルフ部顧問に電話をかける。
 みやりを、全国大会のメンバーに入れてほしいという願いを伝えてきた。


~「人は努力に対し、寛大さと優しさを持つべきだと思う。
  特に教育の現場に立つ者にとって、その気持ちは必要なものと思う。
  鈴木みやりは努力してきた。
  結果何一つ残せぬ努力であったとしても、鈴木は努力してきた。
  その事はお前が一番よく知っているはずだ。
  生涯で二度とないかもしれない。
  個人での戦いは、ゴルフクラブ手放さぬ限り続くと思うが。
  団体での戦いは、鈴木にとって最初で最後の戦いになるのは確かだと思う。
  鈴木みやりを、団体戦のメンバーに入れてやってはくれないか。」    ~
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志望理由書の書き方(2021年版)その4

2021年08月18日 | 大学入試
志望理由書の書き方(2021年版)その4

1 なぜ書けないのか。
 粗く言って二つの原因がある。
 一つは、相手のことが好きではないから。
 それほど好きではない相手にラブレターを送ろうとしても、気合いは入らない。
 ○○大学、○○学部、○○学科に入りたいと書いていながら、ほんとうにそうなのかと疑問を抱くような文章になっている。
 相手を好きになるには、どうすればいいか。
 相手のことを知ることだ。
 「愛は知の極点である」という言葉は、大学で学ぼうなどと志しているなら知ってないといけない。
 哲学者、西田幾多郎の言葉だ。
 そもそも自分が目指そうとしている学部、学科は何をするところか。
 ここに対する知識が足りない。つまり愛が足りない。
 その学問はどんな事情で、なんのために生まれたものなのかについて知らなすぎる。
 それがないと、そもそも学問は人を幸せにするためにあるという大原則を見失う。
 まず知ろう。

2 「愛は知の極点である」を自分にも適用しよう。
 書けない原因の二つ目は、自分のことを好きでないからだ。
 好きなのかもしれないけど、好き度が足りない。
 もっと好きになって、もっともっと自分を掘り返さないと。
 掘ったらいくらでも出てくる。
 こんなことがあった、こんな経験をした。そのときこう思った、感じた。
 好きなものは、食べ物は、音楽は、映画は、スポーツは、本は、何?
 あこがれる人は? 好きな科目は? 行ってみたい場所は? 国は? 大学は?
 なんでそう感じるのだろう? なんで好きなんだろう? なんでそう思ったのだろう、なんで泣いたのだろう、なんでくやしかったのだろう、なんでわくわくしたのだろう、なんでびびったのだろう、なんで驚いたのだろう、なんで笑ったのだろう、なんで動けなかったのだろう、なんで調べはじめたのだろう……。
 自分が好きなものは? きらいなものは? 今何をしたい、将来何をしたい? どうなりたい? どんな暮らしをしたい? 誰と一緒にいたい? どんな男でありたい? どう思われたい? どうなってたら満足できる?……。
 掘り起こせば、いくらでも自分はわいてくる。志望動機はその土台の上にしか存在しえない。

3 具体的にどうすればいいか。
 ノートを一冊作ろう。
 1・2のことをどんどん書いていこう。
 その上で、志望動機、学びたいこと、自分の経験をどういかしたいか、将来の進路など項目に分けて書いてみよう。

① あなたが志望する学部・学科はどのようなことを研究していますか。
② その学部・学科で扱うテーマに関連して、今、世界や日本で、どのような問題が起きていますか。
③ 上で答えた問題の背景・原因には、どのような事情があると言われていますか。
④ 志望する学部・学科の内容に関して、これまでにどんな本をこれまで読みましたか(または読む予定ですか)。これまでにどんな経験をしましたか(する予定ですか)。
⑤ あなたが、その学部・学科で、研究したいことを、具体的に、人にわかるように説明してください。
⑥ あなたは将来、どんな職業につき、どんな仕事をしたいと考えていますか。
⑦ そういう職業につきたいと思い始めたのはいつごろですか。またそのきっかけは何ですか。
⑧ そのような自分の目標を実現するために、高校時代にどのようなことをしてきましたか。
⑨ あなたは、性格面で、どのようないい点をもっていますか。どういう点がアピールできますか。
⑩ それを具体的に表すエピソードを書いてください。
⑪ あなたが志望する大学の教育理念はどういうものですか。
⑫ あなたが志望する大学の特徴はなんですか。他大学とはどの点が違うと思っていますか。
⑬ あなたが志望する大学の学部・学科に所属する大学の先生は、どんな研究をしていますか。
⑭ あなたがその大学を志望する最も大きな理由はなんですか。
⑮ 入学後、どんな学生生活を送りたいと考えていますか。
⑯ 家族はあなたにどんな人生を歩んでほしいと願っていますか(と自分では考えてますか)。

 ノート見開き二頁分に上記の項目一つ分をあてて、少しずつ書き足していく。
 たぶん、将来就活でやらないといけないのも、同じような作業だ。
 ノートがびっしりうまったときは、面接の対策も9割方終わっていると考えていい。
 
 もちろん、実際に書いたあとに添削してもらったなら、それをノートに貼って見返す。
 また書く。同じように繰り返す。
 去年、東北大にAOで受かった先輩は、けっこうな回数書き直しました。
 毎回、真っ赤っかにしました。全部ノートに貼ってました。
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子供はわかってあげない

2021年08月18日 | 演奏会・映画など
 今度は妹にやられた。
「子供はわかってあげない」は日本の映画史に残る傑作で、萌歌さんの今年の最優秀主演女優賞はまちがいない――。
 いや、そんな外形的な評価など、この作品の奇跡の前には何でもない気がする。
 テアトル新宿で目にしたものは、一体なんだったんだろう。
 若さのかがやき、不安定さ、純粋な心、失われない子供の部分……。
 大人との対比で、今の親と生みの親との対比で、もっと幼い子供との対比で、同級生たちとの対比で描かれるそれら。
 高校2年生、17歳という年齢の少女のもつあやうさときらめきが具現化されたもの。
 アニオタで、かわいくて、水泳の選手としてもそこそこで、親に嘘をついて冒険するくらいの勇気をもち、嘘をついたことを心から悪いと思う純粋さがあり、真剣になればなるほど笑ってしまうという癖があり……。
 こんなキャラクターをここまで自然に演じられる女優さんているだろうか。
 いそうな気がするけど、かわいすぎても、色っぽすぎてもいけないし、上白石萌歌という子をキャスティングした時点で、この作品が奇跡に近づく大きな一歩になっていたのだろうと思う。
 もちろん細田くんもすばらしいし、千葉雄大くんもはまっていたし、義父の古館寛二さんの安定感は言うまでもないし、母親の斉藤由貴さんはもはや神。
 実父で元新興宗教の教祖という不思議な父親役は、豊川悦司以外には考えられない。
 劇中だけで使われるアニメを、最高のクリエイターと声優で作ってしまうこだわりは、おそらく作品全編に貫かれている。
 一回観ただけでは全然味わいきれてないから、近くの劇場でもはじまったら、もう一回観るべきかもしれない。この夏のもやもやをすべてふき晴らしてくれる作品だった。
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大地の子みやり

2021年08月18日 | 学年だよりなど
1学年だより「大地の子みやり」


 日本のゴルフ人口は数百万人規模と言われる。総数は減少傾向にあるが、2000年代以降、ジュニア層のゴルフ人口が増え、いろんな形でサポートする機関や団体が生まれている。
 なかでも、京大卒の元プロゴルファー坂田信弘氏が作った「坂田塾」は、数々の有名な選手を育成し、日本のゴルフ界に大きな影響を与えてきた。
 ゴルフ漫画『大地の子みやり』は、プロゴルファー本多弥(み)麗(やり)さんをモデルにした物語だ。
 1996年、坂田塾の札幌校が誕生し、その3期生に鈴木みやりという少女が入塾した。
 将来はプロを目指したい、子どもながら既に経験も積んでいるといった入塾希望者がほとんどの中で、健康のためにゴルフをやらせたいという母親に連れられてきたのだった。
 そんな子がいてもおもしろいと思った坂田氏は、入塾を許可する。
 もちろんゴルフ経験はなく、体力も運動神経も十分ではない。ろくにボールにあたらない日々が続くが、毎日楽しそうに通っていた。さすがに母親は心配する。プロを目指すような子ども達に混じって練習するのはさすがに申し訳ないと、塾長の坂田に退塾を申し入れる。
 本人が続けたいのなら、それをとめる資格は親にないとつっぱねる。
 ただ坂田の内心にも、「このままゴルフを続けさせるのが本当に幸せか」という葛藤もあった。
 小学校6年の時、みやりは、体育の授業でひざを骨折した。2年間練習できない日々が続くが、月に一度の合同指導には必ず参加し見学を続けていた。中学校2年で、練習に復帰する。
 子どもの成長は早い。中学生でプロのトーナメントで活躍することも珍しくない。
 鈴木みやりは、復活後、毎日懸命に練習するが、スコア100を切ることすらままならない。
 再び退塾を申し入れた母親に、坂田は「親の覚悟が足りない」と諭す。


~ 「全国大会で、なぜ熊本校が強くて、札幌校が弱いか、わかるか?
 同じ指導を受け、同じ練習の量を続けているのに、なぜだと思う。
 親の覚悟だ。
 口を出さず、手助けもせず、ただ、じっと我が子の練習を見守り続ける覚悟だ。
 辛いのにと思い、不憫と思い、悲しいと思った時もあっただろう。
 練習に疲れて熟睡する我が子の寝顔を見ながら、泣くときもあったと思う。
 でもな、親は耐えてきた。そして塾生達の夢の花が咲き始めた。
 塾生が咲かせる花は、塾生の努力だけで咲く花じゃない。
 ゴルフ場、練習場、支援メーカー、ボランティアのコーチ達、地元の財界人達、全員の協力で 根をつけていく花なのだ。そして、その花は、最後の最後、親の覚悟で咲いていく。
 我が子の努力を信じ切れる親になれ。」 (坂田信弘・かざま鋭二『大地の子みやり』小学館) ~


 みやりは出場できた試合で予選落ちし続けるが、ゴルフに対する思いは変わらなかった。
 ゴルフの名門、私立尚志学園でゴルフを続けたいと行ってきたみやりを、母は後押しする。
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志望理由書の書き方(2021年版)その3

2021年08月17日 | 大学入試
志望理由書の書き方(2021年版)その3


 具体例1(先輩の書いたものを少し直しました)。


 一般的に、都市開発と自然保護とは対立したものだと考えられがちである。しかし自然界の一員である人間が作った都市は、それも含めた大きな生態系の一部と考えることもできる。都市開発は、土地利用のあり方を考え、インフラを整備し、市街地を開発することを通じて、人間が居住するよりよい空間と環境を整える行為だが、生態系の一員としての行為であることを意識しなければならない。 【学問についての理解】

 私は、「自然環境と人間社会の生産活動が共存する地域環境空間の設計」を目指す貴学地域生態システム学科において、都市の発展、開発と共存する自然のあり方を学び、植物を中心とした自然資源の役割について研究していきたい。 【自分の目標】

 私の住んでいる地域の周りに以前あった森林は、年々少なくなってきている。子供の頃、身近な自然の中で遊んでいた経験は、自分という存在ををかたちづくる上で貴重だった。今後の子供達のために、私は自然を地域に残す方法を学び、研究してみたい。 【社会的意義】

 都市と自然との対立関係ではなく、大きな生態系の一部にそれぞれがあると考えることで、現代社会を生きる人間と自然との共生が可能になるのではないかと考える。そのような学びを可能にする大学は貴学をおいて他にはない。 【なぜその大学か】

 在学中は海外にも出かけ、他の社会の都市システムを見ることで、見聞を広め、新しい視野をもてるようにもなりたい。卒業後は、大学院でさらに自分の考えを深め、将来は、行政組織のなかで自分の力を身につけた力を発揮していきたいという希望を持っている。 【とくに学びたいこと】

 自分の夢と目標をかなえるために最適な場である貴学へ入学を強く志望する。 【結論】



具体例2

 私には、人が快適に集える空間を形作ることができる建築家として活躍したいという夢がある。それを実現するために、貴学で必要な基礎能力の養成をしたいと考え、○○大学工学部建築学科を志望する。【目標・将来像】

 建築家を目指すには何が必要か。まずは、空間に集う人々が快適に暮らせるようなプランが提案ができるだけの基礎能力が必要である。建築関連分野の知識や技術の習得はもちろんのこと、そこに住む人との対話能力も養わなければならないのだ。このような能力を養成できる学校を探していたところ、これらすべてを学ぶことができる貴学に出会った。【学問内容の理解】

 貴学では空間構造力学や建築環境工学、材料工学、空間デザインや設計製図といった基礎的な講義が充実している。また、心理学やコミュニケーション技法など、クライアントとの対話に必要な能力を育成する講座も他学部で履修することができる。さらに貴学の大学院では、○○研究室において人間生活に根ざした建築計画のあり方を積極的に研究している。私にとって申し分ない学習環境がそろっている。 【自分に必要な学び】

 以上のように、私の夢を具現化していくには最適の場であると判断し、貴学工学部建築学科に志望する。 【結論】
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志望理由書の書き方(2021年版)その2

2021年08月16日 | 大学入試
志望理由書の書き方(2021年版)その2

3 書くときに、気をつけること。

 ① 丁寧な文字で書く。

 ② 基本的に常体(~ダ・~デアル)で書く。
  ※ 敬体(デス・マス)でもよいが、幼稚になる危険性がある。

 ③ 1文が50字を越えないようにする。これは絶対。

 ④ 主語(何が・誰が)と、述語(どうする・どうだ)を対応させる。マスト中のマスト。

 ⑤ 一文内の「次元」をそろえる。これがなかなかできない。
    ○ リンゴは好きだが、ミカンは嫌いだ。
    × リンゴは好きだが、走るのは嫌いだ。

 ⑥ 1文には一つの内容を書く。

 ⑦ 段落をつくる。一段落には一つ内容を書く。志望理由の段落、志望動機の段落、入学後にやりたいことの段落……みたく。

 ⑧ 具体的に、「自分の経験・エピソード・自分にしか書けない内容」をもりこむ。

 ⑨ 文と次の文とがつながるようにする。つながらないなら段落を変える。
   文と文との関係が、「そして」「なぜなら」「くわしくいうと」「たとえば」「しかし」「また」……のどの関係になるのか。

  ☆ 上級者用のコツ……できるだけ接続詞をたくさん使って書いて、清書の段階でそれらをほとんど消してしまう。

 ⑩ その学部・学科に興味があることが伝わるかどうかを客観的に見ようとしてみる。

  ☆ できれば複数の先生(担任+教科担当みたく)読んでもらうといい。
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一発屋

2021年08月15日 | 学年だよりなど
1学年だより「一発屋」


 いわゆる「一発屋」は、芸能の世界で、一作品だけ、短期間だけ成功を収めた人を指していうことが多い。同じ現象は、仕事でも、日々の生活の中にでもある。
 模試で一回だけ全国トップの成績をとったり、大会で第一シードに勝ったりするみたいな形でも表れる。たまたま出会った素敵な女子と、一時期だけいい感じになるのも同じ現象だ。
 人生には、そんな機会が、時々訪れる。
 それはさらに大きく踏み出すチャンスではあるが、同時に一発屋で終わってしまう危険性をはらむ危うい場面とも言える。


~ 本当に運だけでブレイクしてしまう人は確かにいる。
 しかしその人は運が良い人ではない。
 運が悪い人なのだ。
 なぜなら運だけでブレイクした人は99%の確率で急激に落ちぶれて、奈落の底に落とされるからである。
 最初から低い場所にいた人は苦痛を感じないが、高い場所から低い場所に落ちた人のなかには文字通り死んでしまう人もいる。
 本当に運だけで成功してしまうということは、これから絶望を味わうために仕組まれていたという意味では運が悪いのである。
 それでも1%の確率で成功を継続させる人もいるが、それは勉強をする人だ。
 自分が運だけで成功したことを熟知しているから、ピークが過ぎるまでの間に猛勉強をする。
 もちろん予想通りピークは過ぎるが、「実はこんなこともできます」とお洒落にアピールするだけで成功は継続する。
 世間は「一発屋で終わらなかった有能な人」と評価を上げて、さらにチャンスをもらえるだろう。
 しかし賢明なあなたはお気づきのように、そこでもさらに猛勉強をするのである。
 成功している期間というのは、次の準備をさせてもらうための期間なのだ。
(千田拓哉『人生を大きく切り拓くチャンスに気がつく生き方』かや書房) ~


 そこで終われば一発屋だが、がんばって継続できれば、もともと実力があったことになる。
 チャンスをものにするには、勉強していないといけない。
 ものにしても継続するためには、勉強し続けないといけない。
 逆にいうと、勉強する習慣さえあれば、人生は悪い方向には向かない。
 もちろんここで言う「勉強」は、英語や数学だけにかぎらない。
 好きなこと、一つのことに、自分の頭で考えながら取り組んでいける姿勢だと思えばいい。
 勉強の習慣を10代のうちに身に付けておくと、仕事も遊びも人間関係も実力アップする。
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