水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ハケンアニメ(3)

2022年05月30日 | 学年だよりなど
2学年だより「ハケンアニメ(3)」




 夢をかなえるためには、何が必要なのだろうか。
 自分の努力? それは必要というか、最低限の前提だろう。
 声優達との関係がうまく築けない斉藤瞳監督は、彼女たちのSNSを閲覧してみる。すると、彼女たちが、いかに自分の出演作を大切にしているかがわかった。
 しばらく大きな役をもらえてないこと、ビジュアル人気で起用されたことなども自覚し、そのうえで出来るだけのことやりたいと思っていることも気づく。
 ストーリーを変更したいと言い出した瞳に、スケジュール的に無理に決まっていると制作進行が言う。しかし徹夜で原画を描き続け、彩色し、編集してくれるスタッフのおかげで、放送にギリギリ間に合わせることができた。
 行城プロデューサーが、自分の知らないところでいろいろと頭を下げて回ってくれたことを知る。
 クールも後半に進み、最終話に向けてチームが一体になっていったのは、瞳が、自分一人では何もできないと気づいてからだった。
 夢をかなえるためには、必要なものは何か。
 自分をつらぬくこと、これは言うまでもない。
 しかし、そのためには、自分一人「だけ」ではできないことも気づかなければならない。
 映画「ハケンアニメ」の監督、吉野耕平氏は、こう語っている。




~ アニメの業界は飛び込んで何年もしないと本当のところはわからない世界でしょうから、実際はきっとみんな人に言えないことが、もっといっぱいあるのだろうと思ってはいるんです。ただ、今回描いた“力を合わせて何かを作ったりすることは根本的に楽しいことなんだ”という思いに嘘はなくて、しんどいこともあるけれど、それでも人が自然に集まってくる魅力がある。そんなモノづくりの世界がある。そういうことを描く映画があってもいいんじゃないかと思って作りました。それはアニメに限らず、料理の世界でも建築の世界でも、根本的には同じ魅力があると思うので、そんなモノづくりの世界の面白さを感じてもらえたら嬉しいです。(パンフレットより)~




 自分の「好き」をつらぬくため、夢をかなえるためには、たくさんの人の手を借りなければならないという原則は、アニメ業界だけに当てはまる話ではい。
 すべての仕事において、それが大事だと、この映画は教えてくれる。
 アニメをはじめエンタメ業界に興味のある人は言うまでもない、モノづくりに興味がある人、何かを表現したい人、夢を叶えるためにどうすればいいか知りたい人に、たくさんのヒントを与えてくれるだろう。
 いや、もしかしたら、何に興味を持っていいかわからない人、何かきっかけがほしい人こそ見るべき作品なのかもしれない。
 ぜひ、劇場へ!

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 JAZZ&POPS交流会

2022年05月29日 | 学年だよりなど
令和4年5月29日(日)


 JAZZ&POPS交流会@本校大講堂


 参加校 朝霞西高校、県立川越高校、和光国際高校、川越東高校
 ゲスト 早稲田大学ハイソサイエティ


  本校演奏曲 チックコリア「SPAIN」熱帯JAZZ楽団版


                 ご協力ありがとうございました!!
                 一年生、初舞台でした!

コメント (2)
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ハケンアニメ(2)

2022年05月28日 | 学年だよりなど
2学年だより「ハケンアニメ(2)」




 泣きながら出て行った声優を、プロデューサーの行城が、なだめに向かう。
「……あなたは今、相手に言いたいことを言ってすっきりしたかもしれませんが、フォローしなければならないこちらは大変、不愉快です」と舌打ちしながら。
 もどってきた行城が言う。「監督が謝罪してくれれば戻るそうです……」。
 なんで、こんな子の機嫌をとらないといけないの……。
 アイドル的人気を誇る声優さんを起用するのは、会社の方針だった。
 名前で数字をとれるわけではない新人監督に、それを拒否することはできない。
 その後もどってきたものの、現場の空気はぎくしゃくしたままだった。




~ 雑誌の表紙もそろそろだという週、作画現場は混乱していた。
 何日も眠れない、修羅場がざらなアニメ業界の中にあっても、二日徹夜すると毎回体がボロボロになる。頭の真ん中が白く鈍り、視界にまでそれがはみ出したように、目の前が実際に薄く膜を張って見える。
 このところ、現場の作業と別に、これまで行城だけが出ていた打ち合わせや調整会議に瞳も駆り出されることが多くなっていた。出なくてもいいんじゃないかと訴えたものもあったが、行城が頑として譲らなかったのだ。
「一度だけでもいいから、顔を出してどういうものか知っておいてください。玩具メーカーやスポンサーと話ができるようになっておいた方がいいですよ」
 同席したところで現場は行城が仕切るのだし、瞳は座って流れを見るだけだが、そのせいで大きく時間を取られる。何日も家に帰れず、眠れず、不規則な時間に食事を摂るせいで、胃が痛み、色が細くなる。
             (辻村深月『ハケンアニメ』マガジンハウス文庫)~




 プロデューサーの行城は、意図的に斉藤瞳監督を連れ回していた。
 瞳の才能を高く評価していたからだ。
 あまりにも強引なやりかたにムカつきながら、瞳自身も行城を信頼していた。
 金の亡者とか、全部自分の手柄にしようとするとか、裏で行城の悪口を言う業界人がいることも知っていた。しかし、どんな手を使ってでも、多くの人に作品を届けようとする行城の気持ちは、ひしひしと感じていた……、という話が、ものすごくリアルに描かれている。
 原作の小説『ハケンアニメ』を先に読んでから映画を観てもいいし、映画を観てから吉岡里帆さんや中村倫也のイメージで小説を読むのも楽しいはずだ。尾野真千子さんもよかった。
 アニメ界にくわしい人は、本物の声優さんが声優の役で出演しているのを楽しめる。
 とくに高野麻里佳さんは、「ウマ娘」にも出ているし、歌も歌えば、グラビアにも出る。
 高野さんは代々木アニメーション学院大宮校の出身だという。
 エガちゃんが言うように、夢をおいかけ、夢をかなえている声優さんだ。

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ハケンアニメ

2022年05月25日 | 学年だよりなど
2学年だより「ハケンアニメ」




 エガちゃんが特別CEOを務める代々木アニメーション学院は、全国に11校舎をかまえ、アニメ、エンタメ業界で活躍する卒業生を輩出している。
 中学校時代、声優になりたい、アニメーターになりたいと一度くらい考えたことのある若者は、どれくらいいるだろう。たぶん女子だと相当の比率ではないだろうか。
 ただし、そうは思ってみても、現実にその世界で食べていくことの難しさは、誰もが早い段階で気づく。代アニに入学して学ぼうとするだけでも、大きな決断がいることは間違いない。
 公開中の映画「ハケンアニメ」は、アニメ業界の一端を垣間見ることができて興味深い。
 主人公は新人のアニメ監督、斉藤瞳。吉岡里帆さんが演じている。
 斉藤瞳監督は、経済的に恵まれない家庭に育ち、国立大学卒業後に公務員となるが、アニメを作りたいとの思いが捨てられずに、大手の制作会社「トウケイ動画」に転職する。
 7年間の下積みを経て、はじめて監督としてまかされた作品が、「サウンドバック奏の石」(通称サバク)だった。しかも土曜の夕方17:00という、テレビで最もメジャーなアニメ枠だ。
 斉藤監督には夢があった。
 幼い頃、みんなが持っている魔法のステッキを買ってもらえなかった。
 自分は魔法少女にはなれない、なれるのはお金持ちでかわいい女の子だけだ、現実はアニメのように甘いものではない……と思っていた。そもそも電気代がもったいないからと、テレビを見させてもらえなかった。
 学生時代に初めて触れたアニメの世界に衝撃を受ける。
 ここには、わたしがいる。団地の片隅で友達とも遊べずにいる自分の居場所がある。
 こんな作品を子どものころ見ていたら、自分の人生はきっと違ったものになっていたはずだ……。
 そうだ、こんな作品を作りたい、そして届けたい、自分みたいな子どもに。
 ふくらみ続けていた思いが、今やっと叶おうとしている。
 自分の作品づくりに妥協できないのは言うまでもなかった。
 一方、会社は監督の思いだけを優先するわけにはいかない。
 そもそも予算があり、納期があり、そして視聴率をとり、グッズを売り上げなければならない。 一歩もゆずりたくない新人監督と、スタッフたちが対立する局面も当然生まれる。
 たとえば声優さんのアフレコ(未完成の動画を見ながら、声をいれていく)。
 監督がダメ出しをする。「すいません、ちがいます」「もっと抑えて入ってください」「ちがいます、○○はそんな言い方はしません」……。
 「できません……」泣き出した声優に、「どうして泣くんですか?」と監督は尋ねる。
 「どうして泣いたのか、気持ちを聞かせてください」
 さっきまでの演技指導は、追い詰めたというほど厳しいものではなかったはずだ。
 「あなたは今、泣いてすっきりしたかもしれませんが、泣かれたこちらは不愉快です。そのことをどう思いますか?」
 声優が顔をおおって飛び出していく。

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エガちゃん

2022年05月18日 | 学年だよりなど
2学年だより「エガちゃん」




 江頭2:50氏が、代々木アニメーション学院のCEOだと言う。
 エガちゃんがCEO? 「最高経営責任者(Chief Executive Officer)?」……ではなかった。
 「チーフエンターテイメントおじさんCEO」ということで、コマーシャルに出ているそうだ。
 代アニの入学式は、天王洲にある銀河劇場で行われる。
 その入学式にサプライズで登場し、祝辞を送った。
 登場の前に、まずビデオメッセージが流れる。「おい! VTRだと調子でないな! そっちに行くか!」と前振りをしたあと、会場後方から現れ、新入学生を驚かせる。
 残念ながら、当人が思っていたほどの盛り上がりを見せなかったところがエガちゃんらしいとも言える。ステージに上がり「お前らに一言、もの申す! 入学おめでとう!」と叫ぶ。




~ 新入生のみなさん!
 みなさんは、今日、大きな夢と希望を胸に、この会場にこられたと思います
 しかし、世の中、いいことばかりじゃありません。
 かくいう私も、トルコで全裸になってつかまったり、新宿で下半身を出してつかまったり、
 嫌いな芸人ランキングは、9年連続一位、もうどうしようもない人生です。 ~




 客席で苦笑する若者たち。しかし、徐々にひきこまれていく様子が伝わる。




~ でも、そんなことがあったからこそ、好きなYouTuberランキングで、
 2年連続第一位をとることができたんだと思っています。
 かなり遠回りをしましたが、何が言いたいかというと、
 何があっても諦めるな! ということです。
 夢を追いかけていたら、必ず壁にぶちあたります
 うまくいかなくて、くやしい思いをしたり、
 はずかしい思いをしたり、どうしたらいいかわからなくなったり、
 でも、それはあたりまえです。
 だって、お前らがおいかけているのは、夢なんだから。
 簡単に手に入らないから、夢なんです。
 それに打ち勝ってつかむのが、夢なんです! (YouTube「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」) ~




 「アニメの道に進む」ことを、そこまで祝福されて来ているわけではない生徒さんもいるかもしれない。
 そして将来に対する不安は、当人達が一番わかっている。
 そんな子たちにとって、エガちゃんのこの言葉は、どれほどの励ましとなっただろう。

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ガクサン(2)

2022年05月12日 | 学年だよりなど
2学年だより「ガクサン(2)」




 習ったことが身についているかどうかは、問題を解いてみればわかる。
 できたか、できないかで、それははっきりする。
 できなかった問題を、理解し直し、解法をたたき込み、次に出会ったときには間違わないようにしておく。できなかった問題ができるようになったとき、「頭がよくなった」という。
 人生で言えば、「経験を積んだ」に該当するだろう。
 それでも、人は同じ過ちを繰り返してしまうものだが。
 だから問題集は、一回目に解き終わった時点では、「頭がよくなっ」てはいない。
 一周目は、できるか、できないかを振り分ける作業だ。
 できなかった問題をチェックし、チェックの入った問題をできるようにしていく。
 二周目でもできない問題は、より強力なチェックが必要だ。
 その問題をコピーして、ノートにストックしてもいいかもしれない。宝物のようなノートができるだろう。この作業が「潰す」だった。
 どんなペースでそれをしていくか。次に「割る」作業が必要になる。




~「参考書スケジューリングの基礎中の基礎は、「割る」だ」
「割る?」
「中2の1学期の中間テストの範囲がLesson1~2の場合、ここで学ぶ英文法の内容は、
 うちの参考書だと全部で24ページになる。これを中間テストを2週間前までにこなすとなると、使える時間は実質4月~5月上旬までの4週間だろう。
 ここで「割る」。作業量を時間で割ることでスケジュール感が明確になる。
 1週間で6ページ、つまり週に2日3ページずつ……これならできそうだろ」
「……確かに、でもこれを、これからずっとやってかなきゃいけないのか……」
「ゲームが好きなのか? 上達するために毎日繰り返し練習してるだろ。そうすりゃ年を食っても、勉強以外でも好きなことをなんだって身に付けられる人間になれる。
 結局、学生時代の勉強ってのは、その方法の練習だ。
 それがわからないまま雑に勉強してきた残念な大人も多いが……。
 まあ人生、それができりゃ万事こともなしってわけじゃないがな。
 さっき難易度が高い参考書のレビューを見ていたが、プライドを捨てて、一番簡単なやつを買え、周りの目なんか気にしてんじゃねえ」 (佐原実波『ガクサン』講談社)~




 できないところを自分で見つけて、できるようにしていく。これが大人になる第一歩だった。
 将来やりたいこと、いついつまでにやりたいことが見えていると、そこに到るまでのスケジューリングができる。
 「割る」ことで人生の方向性が見えてくる。
 夢と自分の間をつなぐのは、勉強なのだ。

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ガクサン

2022年05月09日 | 学年だよりなど
2学年だより「ガクサン」




 「週刊モーニング」に「ガクサン」という作品が連載されている。
 中堅参考書出版社に途中採用された茅野うるし(26歳女性)が配属されたのは、「お客様相談係」。
 最初の仕事は、書店での参考書フェア係だった。いっしょに担当する先輩社員の福山は、コミュニケーション能力に難があり、会社ではれもの扱いされている。ただし参考書についての知識は圧倒的というか、参考書オタクだ。
 ある書店での参考書フェアに、かしこそうな中学生がやってくる。
 うるしにスマホを見せて、「この進学校用の英語の参考書どこにあるんですか……」
 「ごめんなさい、私わからないんで……、えっと福山さん」
 「ガキが使って、頭がよくなる参考書はない」
 「ちょ、福山さん、何言ってるんですか!」
 制服と襟章から、名門の中高一貫校の中1だと福山は見抜いていた。
 「小学校時代、頭よくてちやほやされて、ひたすら塾で勉強して、有名私立に入って安心したんだろ。それが今や落ちこぼれだ、おまえは」と言い放つ。




~「大人でなければ、参考書で勉強する資格はない。
  今のままなら、参考書買ったところで満足しておわりだろう」
 「……はあ? そんなことないし、ちゃんと読むし」
 「読む? 参考書は読めばいいわけではない。参考書での勉強の基礎、それはこの3つだ、
  ①解説を読む、②問題演習をする、おそらく参考書を「読む」人間の多くはここまでを想定しているだろうが、
  一番重要なのが、③「潰(つぶ)す」こと」
 「はあ? 意味わかんないんですけど……」
 「まずは中一の参考書を通してやってみて、間違えた問題に付箋をはれ。
  わからないところは解説を読んで、きちんと理解しておく。
  幸い1年生終わったところだ、1冊なら数日で済むはずだ。
  翌日~数日後に、付箋の箇所をもう一度解き直す。
  ここで即答できなければ、付箋ははずさない。また日をおいて解き直して、付箋の数をゼロに近づけていく。
  これができないところを「潰す」作業だ。」   (佐原実波『ガクサン』講談社)~


 小学校までは、親や塾の先生が、このだんどりを立ててくれていた。それにしたがっていれば、自然にできるようになる。できないところ、分からないところを自分で見つけ、自分でつぶしていく作業は、ガキにはできない、まず大人になれと、福山は言う。
「自分で勉強できるようになる=大人になることだ」と。
 部活で考えてみても、顧問に与えられたことだけをこなしているだけでは、大人になれない。結果を出す選手、メンバーはやはり自分で成長する仕組みを持っている。
 強い学校、チームは、見た目も大人っぽい。内面が大人になる「練習」をしているからだ。

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雑草魂(2)

2022年05月06日 | 学年だよりなど
2学年だより「雑草魂(2)」




 真の「雑草魂」とは、「踏まれても踏まれても立ち上がる」ことではなく、「踏まれても踏まれても大切なことを見失わない」ことだ。
 植物の成長測る方法として、「草(くさ)高(だか)」と「草(くさ)丈(たけ)」の二つがある。
 草高は「根元からの植物の高さ」で、草丈は「根元からの植物の長さ」を表す数字だ。
 踏まれたら立ち上がらない雑草は、草高は伸びない。
 踏まれたら横に伸びようとする場合、草丈はどんどん大きくなる。
 人間の成長の測り方が、「草高」に偏っているのではないかと、稲垣先生はおっしゃる。




~「高さで評価される」ということは、皆さんにとっては成績や偏差値という言葉が当てはまるかもしれません。「高さ」という尺度は大切な尺度です。「高さ」で測ることはダメなことではありません。成績は悪いより良いほうがいいに決まっていますし、成績が良い人はほめられるべきです。しかし、それだけのことです。それはたった一本のものさしで測ったたった一つの尺度に過ぎません。大切なことは、高さで測れることは、成長を測るたった一つの尺度でしかないと知ることです。雑草の成長がそうであるように、「何が大切か?」を考えれば、「高さ」がすべてではありません。まっすぐなものさしで、すべての成長を測ることはできません。そしておそらく、本当に大切なことは、ものさしでは測ることのできないものなのです。~




 雑草は踏まれたら横に伸びる。
 横に伸びることができないときは、下に伸びる。根を伸ばすのだ。




~ 根を伸ばしても、見た目には成長していないように見えるかもしれません。しかし、見えないところで根が成長していきます。根は植物を支え、水や養分を吸収する大切なものです。
 人間も、「根性」や「心根」という言葉を使います。
 本当は、根っこが大事だと知っているのです。
 つらいとき、耐えるとき、雑草はじっと根を伸ばします。その根っこが、日照りになったときに、力を発揮するのです。
      (稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる』ちくまプリマー新書)~




 偏差値を上げる、難関大学に合格する、有名企業に就職するといったわかりやすい尺度は、人の一面しか表さない。草高のものさしで明らかにハイスコアな人生の人が、突然人生につまづいたりすることもあるのが現実だ。高さだけを求め、根をはれていなかったのだろうか。
 みなさんの先輩たちは、入学時に明らかに「草高」で負けていた人たちにも、最終的にいい勝負をしてきた。部活や日常の生活で「根」を鍛えているからにちがいない。

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雑草魂

2022年05月03日 | 学年だよりなど
2学年だより「雑草魂」




 問 空欄を補う適当な語を答えよ。 「雑草は踏まれても(        )。」


 
 みなさんの答えは? 多くの人が「立ち上がる」と解答するのではないだろうか。または「踏まれても、立ち上がる」か。しかし実際には、雑草は踏まれると、もう立ち上がらない。
 そもそも立ち上がる必要はないと、植物学者の稲垣栄洋氏は言う。




~ 確かに一度踏んだくらいなら、立ち上がってくるかもしれません。しかし、何度も踏まれると雑草は立ち上がることはないのです。
 何だか、情けないと思うかもしれません。「せっかく雑草のように頑張ろうと思っていたのに」とがっかりしてしまった人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。
 じつは、踏まれたら立ち上がらないことこそが、雑草のすごいところなのです。
 雑草は踏まれたら、立ち上がりません。どうして、立ち上がろうとしないのでしょうか。
 考え方を少し変えてみることにしましょう。
 そもそも、どうして踏まれたら立ち上がらなければならないのでしょうか?
 植物にとって、もっとも大切なことは何でしょうか?
 それは花を咲かせて、種を残すことです。
 そうだとすれば、踏まれても踏まれても立ち上がろうとするのは、かなり無駄なエネルギーを使っていることになります。そんな余計なことにエネルギーを割くよりも、踏まれながらも花を咲かせることのほうが大切です。踏まれながらも種を残すことにエネルギーを注がなければなりません。
             (稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる』ちくまプリマー新書)~




 「立ち上がる」は、プランAだ。
 みなさんの中には、プランBで今この学校にいる人がたくさんいるはずだ。
 内面的にプランAにこだわっている人は今もいるのかもしれない。
 ただし「おれは○○受かるはずだったんだけど、当日やらかしたから」とか「北辰的には余裕だったんだけどさ」とか、いまだに言ってる人がいたら、相当イタい感じだろう。
 みんなはやさしいから、「へえ」って聞いてあげてるだろうけど。
 はっきりいって、本校にいる自分は「雑草」と思えばいいのではないだろうか。
 SAPIXの一番上のクラスから筑駒と開成に受かりました……でもないし、卓球で中一からエリートアカデミー入りましたとか、サッカーU16に選ばれました……でもない。
 人生、二、三度踏まれたくらいで落ち込む必要など、全くない。
 踏まれたらラッキー、「じゃあプランBだな、ちょうどよかった」ぐらいでいい。
 「花を咲かせて、種を残すこと」が植物にとってもっとも大切なように、人生の花をさかせて実をつけるために、すかさずプランB、プランCに切り替えて、やってみるだけだ。

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遠藤先生(2)

2022年05月01日 | 学年だよりなど
2学年だより「遠藤先生(2)」




 高校時代の国語がおもしろくなかったから、あてつけのように小説を読みふけり、その世界にどっぷりつかることになった。大学の授業がつまらなかったから、映画館にいりびたり、後の自分を支えるものを身に蓄えていくことができた。




~ 自ら発見し、主体的に学ぶ姿勢からしか、何も身になる知識、教養は身につかない。その意味では、映画館が私の大学でした。これもですから、遠藤先生と同様、大学の授業が面白くなかったからなのです。
 つまり、人生なんて何がプラスでマイナスかその時には全くわからないということです。
 だから、今の皆さんの価値基準に照らして、役に立つか立たないか、で時間を捉えるのはやめたほうがいい。そんなことで物の価値は決まらない。むしろテレビやネットがいいぞ、見ろ、買えと言い募るものなど目もくれずに自分だけのお気に入りの城を作った方がいい。そう、思います。特に大学時代は。~




 与えられたものをそのまま受け入れるのではなく、自分から何かを求めにいってほしいという気持ちは、次の言葉にも表れている。
 是枝氏は新入生たちに、「大人の敵になれ」と言うのだ。
 教員として接する早大生達は、世の中に対する不満を感じてないように見えるという。




~ あえて挑発的に言いますが、あなたに不満や怒りがもし無いのだとしたら、それはあなたたちがとても恵まれているからです。いかに恵まれているか、を自覚して下さい。そして、恵まれていない人があなたの周囲に存在していることに是非気付いてください。そして、自らが、誰かの、世界の不幸や不平等に加担していないか? そのことを自らに問うて下さい。そうしたら、見えないものがあなたの周りに見えてくるかも知れない。
 あなたのようには恵まれない人たちの存在が見えた時に、それでも不満も怒りも感じずに生きられるかどうか。恵まれている。それは確かにあなたが勝ち取った権利かもしれない。しかし、それは、私たち大人が出した問いに、上手に答えられたに過ぎないと、明日からは考えて、問いを出した私たちを否定しなさい。私たちの脅威になりなさい。
 決して、今の社会に順応するだけの、器用さを手に入れるだけのために人と会ったり本を読んだり、この大学に通わないでほしい。あなた方のエネルギーだけが、この世界を変えることが出来るのだから。私たち大人の敵になることが、世界を半歩先へ更新していく原動力になるはずです。良い敵になって下さい。みなさん、ご入学おめでとう。(2022年度入学式祝辞 是枝裕和)~




 新入生たちは、「大学で学ぶことの意味」を突きつけられた思いだったはずだ。
 もちろん、私たちにもあてはまる。いま、好きなときに好きなことを好きなだけやれることのありがたさを自覚したなら、安穏とはしていられないだろう。

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