透明タペストリー

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「ウマは走る ヒトはコケる」を読む

2024-03-03 | A 読書日記



 『ウマは走る ヒトはコケる』本川達雄(中公新書2024年)を読んだ。

この本の帯に**『ゾウの時間 ネズミの時間』『ウニはすごい バッタもすごい』につづく、サイズとデザインの生物学 完結篇!**とある。完結篇なら読まなきゃ、思った。

『ゾウの時間 ネズミの時間』は1992年に刊行されているが、ぼくはその翌年、1993年の2月に読んだ。覚えているのは哺乳類は一生の間に心臓が20億回打つということ。ゾウでもネズミでもそしてヒトでも同じ。

今でもこのことを友人との雑談で話すことがある。スマホの電卓機能を使ってヒトの寿命を計算して相手に示す。分かりやすいように1分間に60回鼓動すると仮定すると、20億秒は何年か、計算することになる。計算結果は約63年になる(*1)。これがヒトの生物学的な意味での寿命。実際には日本人はこれより20年も長い寿命だが、これは食事や住環境の改善とか、医療の高度化などによる人工的な延命結果とも言えるだろう。

この本にはサイズの生物学という副題がついているように、動物のサイズ(体重)とエネルギーの消費量、食事量、餌の体重などの間にある数理的な関係を説いていた。

『ウニはすごい バッタもすごい』は2017年の刊行で、ぼくはこの年の6月に読んでいる(過去ログ)。

さて、『ウマは走る ヒトはコケる』。

へぇ、知らなかった。そうなのか、なるほど。読んでいてこんな風に思った箇所に付箋を貼っていったが、写真で分かる通り、何枚も貼ることになった。

歩く・走る、泳ぐ、飛ぶ。動物の移動という運動行為そのもののメカニズム、それを可能にしている動物の体のメカニズムを多くの図(実に興味深い図)と共に網羅的に分かりやすく説いている。**動物は動く このあたり前の裏側には驚きの工夫があった!**とこの本の帯にあるが、読むと全くその通りだということがよく分かる。

例えば鳥の体の飛ぶための工夫。軽量化、ということは直ちに思い浮かぶが、消化の良いものを食べ、咀嚼と消化に手間がかかり、かつ栄養価の低いものは大型の鳥以外は食べないということまでは浮かばなかった。読めばなるほど当然か、と思うが。この本ではこのようなことにも論及している。

骨の強度を落とさずに軽量化のための工夫として、中空化が挙げられ、内部に筋交い、そう交叉ブレースが配置されていることを示す図が載っている。それから鳥の体温調節。羽で覆われていない肢への対策は対向流熱交換器。ロスナイ(熱交換器型の換気扇)はこれと同じだ。人工的につくり出されるもののモデルって自然界にあるんだな。

それにしても動物の体ってうまくできている。「進化」の一言では済ませることができないのでは、と思ってしまう。

実に興味深い内容の本だった。


*1 ちなみに心臓の鼓動が1分間に70回とすると、寿命はおよそ54年になります。
    間違えてはいないと思いますが、確認願います。



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