透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1404

2014-04-30 | A ブックレビュー



 早いもので4月が終わる。4月の読了本はこの3冊。

『川あかり』 葉室麟/双葉文庫

藩一番の臆病者と言われる若侍、伊東七十郎が家老の暗殺を命じられた・・・。川止めで安い木賃宿に逗留して川明けを待つ七十郎。相部屋となった奇妙な連中といつの間にか友情が芽生え・・・。ついにその時がやってきた。さわやか、そして少し寂しい読後感はこの作家の作品に共通している。

『桜は本当に美しいのか』 水原紫苑/平凡社新書

**私は、桜が、いかなる幻想からも解き放たれて原始の不逞は花を咲かせてくれることを望むが、それこそ、僭越というもので、春ごとに桜は、人間の思いなどとは関わりなく、植物の生を全うしているのであろう。** あとがきのこの文章に著者の桜に対する考え方、想い、つまり「桜感」が出ている。

人は桜に耐え得ぬほどの重荷を負わせたと著者は言う。歌人故の感性か。このように想う知性も感性も残念ながら私にはない・・・。

『脳内麻薬 人を支配する快楽物質ドーパミンの正体』 中野信子/幻冬舎新書

他人に褒められたりする「社会的報酬」と「金銭的報酬」が脳の同じ部位の反応だという事実。要するに♪「お金」じゃないのよ人生は HA HAN ということだ。 


 


474 松本市里山辺の火の見櫓

2014-04-28 | A 火の見櫓っておもしろい

  
474 松本市里山辺惣社



 松本市里山辺惣社の火の見櫓。早朝だったのでまだ灯りがついている。3角形の櫓に8角形の屋根をどのように載せているのか、意識的に視ていなかった。なるほど! な載せ方・・・。

見張り台の床を支える構造に注目。3角形の櫓に円形の見張り台というよくある組合せ。櫓の円弧状の部材によって柱を繋ぐ水平部材の中央を支えている。これは時々みかける構造。方杖はない。水平部材から床下地材を持ち出し、円形の縁取り材と共にフラットバー(平鋼)のスノコ床を支えている。 


 


473 松本市里山辺新井の火の見櫓

2014-04-26 | A 火の見櫓っておもしろい

  

473

 松本市里山辺新井の「お船」の格納庫の屋根の上に設置されている火の見櫓。格納庫の側面に設置されている梯子で屋根に上り、そこから櫓の見張り台に上る。

切妻屋根は珍しい。半鐘の他にスピーカが4つも設置されていてにぎやか、というかうっとうしい。



屋根面に対して柱脚をどのように固定しているのか気になるところ。


早朝出かけたので逆光での撮影となった。いつか午後出かけよう・・・。


472 松本市新村の木造の火の見櫓

2014-04-26 | A 火の見櫓っておもしろい




472 松本市新村根石  撮影日140425

 火の見櫓センサーの感度良好! 国道158号を走行中にこの火の見櫓にセンサーが反応した時は嬉しかった。国道から狭い生活道路に入って観察した。久しぶりの木造。なんとも素朴で田舎の風景にぴったり。 

これを櫓とみるか、支持柱付きの梯子とみるか判断は難しいが櫓としておく。柱は古い電柱からの転用とみた。高さは約5.5メートル。木柱の街灯が火の見櫓に寄り添うように立っているのも実にいい。柱のてっぺんは腐朽しやすいので、鉄板のキャップを被せてある。



梯子段の取り付け方がこの写真で分かる。等辺山形鋼を柱に差し込んでビスで留めている。簡易ではあるが確実に留めることができる方法だ。特別の技術は不要だから、地域の人たちが協力して建てたのだろう。

まだまだ身近なところに未発見の火の見櫓がありそうだ。


 


畳の敷き方

2014-04-23 | D 新聞を読んで

 昨日(22日)行われた全国学力テストの小学6年の算数Bにたたみの敷き方を考えさせる問題がありました。床の間のある6畳間にたたみをどう敷けばよいか・・・。



問題には畳の敷き方に関する約束事が3つ示されています。その約束事とは写真にあるように床の間に畳の長い辺を合わせる、出入り口にも畳の長い辺を合わせる、それから畳の4つの角が1か所に集まらないようにする、の3つです。

今日では畳の無い住宅も珍しくないですし、床の間付きの和室のある住宅となると、かなり少数でしょう。それから和風旅館の大広間などでは3番目の約束事を守っていない場合が圧倒的に多いと思われます。ですから問題に示されている約束事を知らない大人もかなりの数になるでのでは。これって算数の問題というより、日本の建築文化の基本的な問題なんですけどね・・・。

畳の歴史をざっと辿ると、始まりは奈良時代で、それまであった筵(むしろ)やござが進化したものです。平安時代には板張りの床の一部に座ったり寝たりするために畳が置かれるようになり、室町時代になって、部屋全体に敷きつめられるようになって今に至る、となります。

日本の伝統文化は言うまでもなく畳と密接な関係にあります。日本の伝統文化を守るためにも畳を無くしてしまってはいけない、と思うのですが・・・。


 


― 火の見櫓の接合部を見る

2014-04-21 | A 火の見櫓っておもしろい


朝日村西洗馬の火の見櫓

 総高8mほどの小規模な火の見櫓で、3角櫓の3面のうちの1面は横材のみで構成していて梯子を兼ねている。本稿では火の見櫓の細部、構成部材の接合部に注目する。

この火の見櫓は上下2分割して鉄工所でつくられていて、現場で接合して立てたことが柱材の接合部の
様子から分かる。

 

上の写真で構成部材の接合部の様子が分かる。柱材の等辺山形鋼(L-50×50×4*)を計6本のボルトで接合している。梯子段を兼ねた横架材(L-40×40×4*)と柱材とはリベット接合(写真左)。

ガセットプレート(厚4mm)を5本のリベットで柱材に取り付けて、そこに等辺山形鋼のブレースと水平部材(共にL-40×40×3*)をボルトで接合している。 

リベット接合は鉄工所で、ボルト接合は現場で行われた、と考えるのが妥当。

火の見櫓は細い部材で構成されていて、使用鋼材量が少ない。これはそれほど風荷重や地震力を受けないことによるのだろうが、櫓の構造そのものが合理的であることの証左でもあるだろう。

手元の資料には静岡地震(1935年)や阪神・淡路大震災(1995年)で被害を受けることなく無事だった火の見櫓が紹介されている。


*鋼材厚は正確に計測できていない。


― 春爛漫 火の見櫓のある風景

2014-04-20 | A 火の見櫓っておもしろい



 火の見櫓観察のポイントとして私がまず挙げるのが立地、環境。(チェックポイントはこちら←クリック) 

火の見櫓を分析的に細かなところまで観察しなくても、ただ単に火の見櫓のある風景の、季節や天候、時間帯などの違いによる変化を見る、ということでも楽しい。 火の見櫓に関する知識が無くても、ものを見て美しいと感じる、自分の感性を頼りに観賞すればそれで良い、と私は思う。

池田町で偶々目にした光景。しだれ桜がまだ開花していないのは残念だったが、春爛漫の山里に火の見櫓が目立たないようで目立つという絶妙の存在感で立っていた・・・。


春のフォトアルバム  北安曇郡池田町堀の内にて 撮影日140419