透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

よく読む新書は?

2017-12-30 | A 読書日記

 いろんな出版社が新書を出している。その中でどこの新書をよく読んでいるだろう・・・。

この10年間に読んだ新書を出版社別に集計してみた。166冊読んでいたが(カウントミスによる数違いがあるかもしれない)、中公新書が一番多くて46冊だった。なんとなくの予想と合っていた。次いで岩波新書29冊、ちくま新書17冊、文春新書16冊という結果だった。これらの合計が108冊、全体の65パーセントを占めている。



昔(って20代のころ)は講談社現代新書の文系的な内容のものをよく読んでいたので、その頃読んだ新書を並べた棚には講談社現代新書が一番多い。だが、この10年ではたったの10冊、1年に1冊というペースに落ちていた。新書を出す出版社がだいぶ増えたから分散しているが、ペースダウンは明らか。

この先10年で傾向は変わるだろうか。これは10年後にまた集計してみれば分かることだ。


 


ブックレビュー 1712

2017-12-30 | A ブックレビュー

 今年最後、12月のブックレビュー。12月に読んだ本は次の5冊。



『脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦』渡辺正峰/中公新書

**未来のどこかの時点において、意識の移植が確立し、機械の中で第二の人生を送ることが可能になるのはほぼ間違いないと私は考えている。** 著者はまえがきにこのように書いている。

意識の機械への移植などというSF映画が描くようなことが実現できるのだろうか、仮に実現できたとして、機械の中で送る第二の人生って何だろう、それは人生と呼べるようなものなのだろうか・・・。




『峠しぐれ』葉室 麟/双葉文庫




『「超」入門! 論理トレーニング』横山雅彦/ちくま新書

著者は本書でクレーム(主張・意見)、データ(事実)、ワラント(根拠)という3つの言葉により、論理的思考について説明しているが、それぞれの言葉を必ずしも定義通りに使っているわけではない。

論理的に考える、論理的に話す、論理的に書く、ということを常に意識しなければならないことは自覚している。本書によってこのことを再認識した。「論証責任」という言葉は覚えておきたい。




『壬申の乱 天皇誕生の神話と史実』遠山美都男/中公新書

**天智は、世代・年齢重視の王位継承から特殊な血統をもった皇子による王位継承への転換を構想し、それを実現するために自分と大海人の血を引く皇子の誕生を願っていたのではないかと考えられる。**(11頁)

大海人は天智の娘を4人もめとっている。大海人と天智は兄弟だから、大海人は姪と結婚したということ。だから、大海人は天智の構想を受けれていたことになる。ではなぜ、天智は大海人皇子を疎外し、大友皇子を後継としたのか、我が子可愛さ故?

なぜ壬申の乱で大海人は大友に勝利できたのか? 

知識に乏しい私には内容は難しいが、論理展開は分かりやすい。機会があれば再読したい1冊。




『壬申の乱 清張通史5』 松本清張/講談社文庫


 


2017年の私的出来事

2017-12-29 | A あれこれ

■ 今年の個人的な出来事を3つ挙げるとすれば・・・。



1月 33会(中学のとき同級だった気の置けない仲間の親睦会)の大阪旅行

 9人が参加して1泊で行ってきた。天満天神繁昌亭(
落語)、道頓堀、住吉大社、通天閣、アベノハルカス・・・。楽しい思い出ができた。



9月 長野県内全77市町村巡り達成!

□ 長野県は北海道に次いで2番目に市町村数が多く、面積も北海道、岩手県、福島県に次いで4番目に広い。長野県内の全77市町村を巡って、火の見櫓をバックにマンホール蓋の写真を撮ることを課した。下水道が整備されていなかったり、火の見櫓が見つからなかったりで、11の自治体では上掲のような写真を撮ることができなかった。だが、このようなミッションを課さなければ、一生行くことがなかったかもしれない県境の村にも行くことができた。 



11月 福島、茨城、栃木の道路またぎ櫓巡り

 ドライブは好きではないので今まで車で遠出をしたことはなかった。 それが走行距離900km超のドライブをして、福島県南部の独創的な飛翔狛犬などを見て回り、上記3県の道路をまたいで立っている火の見櫓を見てきたことに自分でも驚いている。

中学の同級生と親しく付き合っていなければ一緒に楽しく旅行することなどできない。また、火の見櫓に魅せられていなければ、長野県内の全市町村を巡ることなど考えもしなかっただろうし、遠方、福島県まで車で行ってくることもなかっただろう。

家族に感謝、友だちに感謝、そして火の見櫓にも感謝!


 


2017年の映画

2017-12-28 | E 週末には映画を観よう

■ 毎年映画館で4、5本の映画を観ている。今年も5本観たが、すべて洋画だった。ダイアリーに記録する代りにチケットの半券を貼り付けてある。

1月   ザ・コンサルタント
3月 パッセンジャー
7月 ライフ
11月  ドリーム
12月  オリエント急行殺人事件

今年の飲み納め(と言ってもお酒ではなく、コーヒー)をしようと松本市梓川のカフェ バロへ。

いつものカウンター席について、雑談するうちに今年観た映画に話が及び・・・。この5つのタイトルを挙げるも、「ライフ」と「ドリーム」については、全く何も思い出せないという状態。脳の機能不全か?

カウンター内のカクさんからヒントを得てようやく思い出すことができた。

そうだった、「ドリーム」は時のアメリカ大統領がケネディの頃(1961、2年)、NASAで活躍していた黒人リケジョ3人の実話に基づく物語だった。コンピューターのない時代で、衛星の軌道などすべて手計算で求めていたころの物語だが、その難しい計算をこなしてNASAのプロジェクトを支えていた極めて優秀な黒人女性たちが主人公だった。

原題は「Hidden Figures」、意図的に隠された人たちという意味だと私は解する。国家的なビッグプロジェクトの重要な部分を黒人女性が担っていることを人種差別のある世間に積極的に知らせることは躊躇われた、という背景があったことを示す原題のはず。それが「ドリーム」などという的外れ、トンチンカンな邦題になったものだから、内容を思い出せなかったのだ(と脳の老化を認めようとはしない)。



上司のハリソンが有色人女性用トイレの室名札をハンマーで叩き壊して一言、「NASAじゃ、みんな小便の色は同じなんだ!」。

幸いなことにNASAで彼女たちは実力が認められ、信頼もされて重要なポストに就くことができたが。

来年はどんな映画を観ることになるのだろう・・・。


 


2017年の本

2017-12-28 | A ブックレビュー

 早いもので今年、2017年も数日を残すのみとなった。

今年読んだ本を「ブックレビュー」で確認すると、12月の5冊を含めて49冊だった。ここ何年か減り続けていて、昨年の58冊よりさらに減った。読書は量より質、とはいうもののやはり気になる。



今年は高田 郁さんの時代小説シリーズみをつくし料理帖』全10巻/ハルキ文庫を読んだことが一番の収穫だった。

 主人公の料理人・澪は占い師によって「雲外蒼天」という人生が示される。この蒼天はいかなる苦労があろうとも、いつか頭上には青い空が広がる、という意味だが、これが高田さんの読者への励ましのメッセージであろう。この蒼天ということばは読み始めた年越し本のタイトル『蒼天見ゆ』(葉室 麟/角川文庫)にもなっている。




『ウニはすごい バッタもすごい デザインの生物学』本川達雄/中公新書

何冊か読んだ新書の中ではこの本が興味深かった。

生物のカラダをはじめ、自然が創り出したものは理に適っているから、人が後からデザインしてつくるもののお手本になっている。

自然はすごい!!


 


「蒼天見ゆ」葉室麟

2017-12-26 | A 読書日記



 作家・葉室麟さんの訃報には驚いた。今月24日の新聞で報じられたが、その新聞の一面に掲載された角川文庫の広告で葉室さんの『蒼天見ゆ』という作品を知った。年越し本はこれだ、と思って買い求めた。

**武士の矜持を懸けて挑んだ、日本史上最後の仇討ち!**と帯にある。矜持は葉室さんの小説のキーワードだ。松本清張の『壬申の乱』講談社文庫を読み終えたら、この実話をもとにした小説を読み始めよう。


 


レストラン梓川で黒部ダムカレーのはずが・・・

2017-12-26 | F ダムカレー


レストラン梓川の外観

■ 長野道上りの梓川SAにある「レストラン梓川」でも黒部ダムカレーを提供しているという情報を得ていて、今月の23日、休日出勤した際、昼に出かけたのだが・・・。

施工会社に入り、女性社員の方に黒部ダムカレーを発注したところ、数年前にダムカレーの請負をやめたとのこと。残念。どんな理由だろう。施工に時間がかかり大変、といった理由だろうか。


長野道梓川SAのレストランで黒部ダムカレーを提供しているのは下り線の「レストランあづみ野」だけです(20171226)。


942 木曽町の消火ホース乾燥塔

2017-12-21 | A 火の見櫓っておもしろい


942 撮影日171221

■ 木曽町は木曽福島町・日義村・開田村・三岳村の4町村が2005年(平成17年)に合併してできた。今日(21日)所用で木曽町(旧木曽福島町)へ出かけた。そこでこの消火ホース乾燥塔を見かけた。火の見櫓の関連塔ということで載せる。

塔のてっぺんに腕木を渡し、使用した消火ホースを掛けたハンガーを吊り上げて乾燥させる。2つのハンガーで8本の消火ホースを掛けることができるようになっている。



壁がないから風荷重をあまり受けない。屋根も見張り台のような床も無いから、雪荷重はかからない。後は地震力に抵抗できればよいのだが、立体構造だから、こんな細い部材でも成立する。

梯子を外付けしてあるが、普段は地上の操作で消火ホースを干すことはできる。滑車に不具合が生じた時などに上る、ということだろう。



消火ホース乾燥塔の脚元に屋外消火栓とホース格納箱を設置してある。格納箱の扉には「木曽福島町消防団」とある。色褪せた箱が味わい深い。あばたもえくぼ効果で、火の見櫓関連のものは何でも良く見える。

でも、やはり屋根あり、見張り台あり、半鐘ありの火の見櫓がいいなぁ。


追記:消火ホース乾燥塔は火の見櫓の同類として番号を付けたこともあるし、付けなかったこともある。首尾一貫していないが、仕方ない。191229


「壬申の乱」松本清張

2017-12-20 | A 読書日記

 中学2年生のとき、松本清張の推理小説『砂の器』を読んだ。こんなにおもしろい小説があるんだ! と思ったことを覚えている。本好きになるきっかけとなった本で、その後、大学生のころまで松本清張の作品をずいぶん読んだ。

松本清張に『壬申の乱 清張通史5』講談社文庫があることが分かったので、早速買い求めた。清張作品を読むのは久しぶりだ。先日『壬申の乱』遠山美都男/中公新書を読んでいるので読みやすいだろうし、例えば「日本書紀」の扱いがどう違うのかなど興味深い。この本が年越し本になるかもしれない・・・。



**「日本書紀」があえて記さなかった壬申の乱の真相とは何か。大化改新は、ほんとうに行なわれたのか。はたして、その実体はどのようなものか。天智天皇、大海人皇子、大友皇子らの人間模様と皇位継承をめぐるすざましい権力闘争、律令制の虚実を検証しながら、古代律令国家確立期の本質を活写する。**カバー裏面の紹介文


 


山座同定

2017-12-19 | A あれこれ



■ 常念岳の特徴的な山容は間違えようがないが、その北側後方に連なる3座、横通岳・東天井岳・大天井岳は見る場所によって前の山に隠れてしまうこともあるし、小さく見えることもあり、同定が難しい。グーグルアースの3D画像などから判断して、こうではないかと思うのだが・・・。


 


「壬申の乱」

2017-12-18 | A 読書日記

 先月(11月29日)松本市内で行われた歴史作家・関裕二さんの講演を聴いた(過去ログ)。演題は「なぜ天武天皇は松本に副都を築こうとしたのか」、副題は信州から見つめ直すヤマト(日本)の正体。

関さんは講演の中で壬申の乱(672年)に勝利した大海人皇子(のちの天武天皇)が松本副都計画を構想したことに触れた。壬申の乱では松本あたりからも大海人軍に加勢した兵力があったことも講演で知った。壬申の乱については、辛うじて教科書的な知識があるだけ。



ということで『壬申の乱 天皇誕生の神話と史実』遠山美都男/中公新書を読んでみた。なるほど、この本にも**桑名から東国に向けて派遣された使いが兵力の動員を行なった範囲は、東山道は美濃のとなりの信濃あたりまで、東海道は尾張に接する三河・遠江あたりまであったと考えられるが、(後略)**(177頁)という記述がある。

以下読書録。

壬申の乱の理解は、この内乱に勝利した天武天皇とその子孫がまとめた「勝者の歴史の日本書記」によるものだと著者は指摘し、この本のねらいを**壬申の乱での勝者・敗者双方のいい分をできるだけ公平に聞き取り、古代最大の内乱といわれたこの戦争の実態を再検証することにあります。**(まえがき)と書いている。

この本の章立ては次の通りだが、第Ⅰ章の総論を読むだけでも良いと思う。この章に著者が壬申の乱をどのように捉えているのか、その概要がきっちり書かれているから。第Ⅱ章以降の詳論については、歴史にもともと興味があり、かなりの知識がある人向けだろう。

Ⅰ 近江大津宮、その日
Ⅱ 大海人をめぐる群像
Ⅲ 内乱の発生と展開
Ⅳ 内乱の拡大と終焉

**天智は、世代・年齢重視の王位継承から特殊な血統をもった皇子による王位継承への転換を構想し、それを実現するために自分と大海人の血を引く皇子の誕生を成長をを願っていたのではないか。**(11頁)

**大友擁立とはたんなる我が子への情愛といった個人的心情に発するものではなく、天智が王位継承の転換を期して考え出した構想のいわゆる修正案だったということになる。**(13頁)

**壬申の乱とは、我が子・大友かわいさに目のくらんだ天智の死後に起きた天智には思いもよらなかった誤算や破綻だったのではい。大海人の土壇場での裏切りはもろん予想外だったが、天智の目が永遠に閉じられようとする寸前、その両眼は内乱の輪郭をしっかりと描き、それに対する指示もあたえていたのである。**(39頁)

著者は次のように壬申の乱を総括している。

**壬申の乱とは、「女帝」倭姫王の存在なくしては起こりえない性質の戦争であったのであり、倭姫王の譲位をうながして即位するために、天武・大友の双方がいわば対等の立場で戦った戦争でした。**(278頁) 

そして、天武が王位継承の権利を持っており、壬申の乱に勝つべくして勝ったというのが、勝者の論理に基づいて書かれた日本書記の通俗的な理解で、実はそれは誤った事実認識であると。日本書記は内乱の核心を巧みに隠蔽していると。


壬申の乱については松本清張も書いている。『壬申の乱 清張通史(5)』講談社文庫を次に読んでみよう。


― 塩尻市洗馬の火の見櫓

2017-12-17 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)塩尻市洗馬 県道293号沿いに立つ火の見櫓 3脚6〇〇型 撮影日171216

 洗馬(せば)という地名は古くからあり、平安末期に活躍した源(木曽)義仲がこの近くで「馬を洗った」ことに因む地名と聞く。実はそれよりかなり前から洗馬の牧と呼ばれいたという。この辺りは有数の駒の産地だったようだ。その地名の場所に立っている火の見櫓。

松本平によくある3脚に6角形の屋根、円形の見張り台というタイプ。

6段の構面のうち、上部4段には平鋼と山形鋼を交叉させたブレースを、下部2段にはリング式ターンバックル付き丸鋼ブレースを入れている。この辺りではあまり多くないブレースの使い分けだろう。


円形の見張り台と踊り場



屋根の下に半鐘とモーターサイレンがある。3本の柱の上端をつなぐ桁材が3角形を構成しているが、その3角形を2分割する水平部材をよく見るとまん中に孔があるのが分かる。元々この位置に半鐘を吊り下げてあり、サイレンを後から設置する際、今の位置に移動したのかもしれない。いや、この場合半鐘を吊るしていたフックはそのままにしておくだろうから、はじめから屋根の中心を外してこのように吊り下げてあったと判断する方が妥当かもしれない。



踊り場の下にも半鐘を吊り下げてある。かなり背の高い火の見櫓だから、上見張り台までの上り下りが大変、ということで後から吊り下げたのだろう。

基礎コンクリートに設置した山形鋼の短材(名称が分からない)と柱脚をリベット接合している(建て方をしてから、あらかじめ設置してあるこの短材と柱脚下端を接合するという施工手順を想定してこのように書いた)。


この火の見櫓は2010年5月に初めて見たが、その時は全形を漫然と見ただけだった。