透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ふたつの展覧会

2010-05-31 | A あれこれ


■ 昨日(30日)六本木の国立新美術館で「オルセー美術館展2010」と「ルーシー・リー展」を観た。

「オルセー美術館展2010」  ポスト印象派(馴染みの後期印象派という呼称に替わる近年の呼称とパンフレットにある)の大規模な展覧会。会場は10のセクションで構成されている。

どんな作品が展示されているのか予備知識もなく会場に入ったが、いきなりモネの「日傘の女性」が目に入る。次のセクションはスーラの点描画。この描法はあまり好きではない。もっと大胆に描けばいいのに。次のセザンヌのオーソドックスなタッチは好きだ。

ロートレックはパス。ゴッホの「星降る夜」、そして「アルルのゴッホの寝室」。これはすごい。でも圧巻はルソーの「蛇使いの女」。重厚なタッチ、漂うミステリアスな雰囲気。じっくり鑑賞。この絵だけで満足。


「ルーシー・リー展」  美しい陶芸作品の数々。繊細。淡い色。上品なフォルム。線文の施された小ぶりの作品に魅せられた。

会場内の女性がみな知的美人に見えたのはなぜだろう・・・。

えんぱーく

2010-05-28 | A あれこれ

えんぱーく 月のコート 100528

今日(28日)、塩尻の「えんぱーく」を見学した。このプロジェクトにはプロポーザル(←過去ログ)のときから注目していたが、7月末のオープンを控えて工事も終盤を迎えている。

最近では建築・構造を成立させるシステムの設計に主眼が置かれることが多いように思う。これは美しい空間・建築を志向するという従来の理念とは明らかに違う。そのはしりは伊東豊雄氏の「せんだいメディアテーク」だったかもしれない。

独創的なシステムをいかに提案するか・・・。この建築は工場でプレキャストされた厚さが20cmに満たない壁柱によって構造を成立させ、空間を構成している。

壁柱は新しい考え方ではない。50年以上も前に計画された菊竹清訓氏の自邸、スカイハウスにも壁柱が採用されている(右の建築トランプのイラスト)。スカイハウスが4枚の壁柱によって空中に浮かぶ姿を私も学生時代に見る機会があった。美しかったし、後年、壁柱を採用した理由も理解できた。

今日見学した「えんぱーく」では何故壁柱を採用しなくてはならないのか、その理由が分からなかった。

この建築はいずれ雑誌「新建築」などでも取り上げられるだろう。その際、設計者の柳沢氏には是非、何故壁柱なのか、その理由を書いて欲しいと思う。

― プロポーション

2010-05-26 | A 火の見櫓っておもしろい


路上観察 火の見櫓

先日取り上げた郷原宿の火の見櫓(上)。屋根も見張り台も飾りの全くない簡素なつくりだが、バランスというかプロポーションがいい。すぐ近くにある別の火の見櫓(下)と比べてみるとその違いがよく分かる。

両者の違いって製作者の美的センス、感性の違いだけに拠るのだろうか・・・。






長野市民会館

2010-05-26 | B 繰り返しの美学


長野市民会館 佐藤武夫設計の名建築 繰り返しの美学に注目 

 外観:屋根に折板(せつばん)構造が採用されている。その繰り返しが外観を特徴付けている。外壁はレンガ積み仕上げ。その外壁を街路樹の緑が引き立てている。レンガは時を重ねるほどに美しさを増す。「時間の蓄積容量」の大きい材料だ。



 ホワイエ内観:色ガラスがはめ込まれたコンクリートブロックの壁と縦長の風除けボックスによる構成。



■ 市民会館の竣工は1961年。来年がちょうど50年の節目の年となるが、3月に閉館することが決まっている。そしてたぶん取り壊されることになるだろう・・・。ああ、また名建築が消えていく・・・。
 


017 018 019 火の見櫓のある風景

2010-05-23 | A 火の見櫓っておもしろい

初夏のフォトアルバム   

017  朝日村西洗馬中組にて


018 塩尻市洗馬にて


019 塩尻市洗馬にて

タイプ分けしてみることって、火の見櫓に限らずものの観察の基本かもしれません。例えば植物学も分類することから始まりましたね。

火の見櫓の屋根や見張り台の形に限って観察しても十基十色で面白いです。でもタイポロジーに終始してもな~と思うのです。

分析的な視点だけでは捉えきれない火の見櫓の魅力。火の見櫓のある風景のピリッとした雰囲気ってなかなかいいです。これからも火の見櫓にドキドキをときどき取り上げます。


 


なぜ人は塔を造るのか?

2010-05-23 | A あれこれ




路上観察 旧山辺学校の塔 松本市里山辺にて

 松本の擬洋風建築の学校って、松本城のすぐ北にある開智学校が有名ですが、この山辺学校もなかなかいいです。開智学校より和風っぽいです。玄関のデザインは和そのもの。建設費は開智学校と同様、地域の人びとの寄付によって賄われたそうです。

屋根の中央に載っている塔は端正な形をしています。この塔は別になくても学校としての機能には何ら支障ないとは思いますが、やはり地域のシンボルとして欠かせないものだったんでしょうね。

「塔は人びとの地域を愛する心の象徴」 陳腐な表現ですが、そう思います。


 


おたふく

2010-05-22 | A あれこれ

路上観察 蔵の妻飾り 松本市和田にて 100522

 このところ「火の見櫓熱中人」しているが、蔵は路上観察から外せない。蔵の妻飾りには家紋や水、寿、龍などの文字の他に鶴や亀など縁起のいい動物などが使われる。

おたふくは、お多福、つまり福が多いということで縁起がよいとされている。妻飾りで見たのは初めて。

*****

復習:妻飾りとは妻壁から突出した地棟(下の写真で壁から突き出ている梁)を漆喰で仕上げ、そこに様々な文様を施したもの。 


014 屋根が凄い

2010-05-22 | A 火の見櫓っておもしろい

 
014  東筑摩郡山形村上大池(現存しない)撮影日100522



屋根が凄い! 韓国か中国の寺院を思わせる強い反りの屋根。空を突く槍型避雷針。見張り台の手すりに施された○とS字の飾り。

曲線を多用したデザインだが、バランスよくまとまっている。存在感のある火の見櫓だ。取り壊されてしまったのは残念。 



ECOな容器

2010-05-22 | A あれこれ



■ 先日勤務先の湯沸し室で目にしたインスタントコーヒーの詰め替え用。こういう商品があるんですね、知りませんでした。

この容器は紙(正確には紙を主原料とした複合素材)で出来ていて、ガラスびんと比較して重さが82%カットされているそうです。ずいぶん軽いんですね。

容器にECOと表示されていますが、これは輸送段階のエネルギー消費量がガラスびんと比較して少ないということでしょうか、それとも容器の製造段階から廃棄処分までのトータルな資源・エネルギー消費量が少ないということを謳ったものでしょうか・・・?

地球環境に与える負荷について、特に重要視されている地球温暖化への影響を計るライフサイクルCO2(LCCO2、CO2の排出量を商品の一生で足し合わせたもの)によって評価することの必要性が指摘されるようになりました。ですから、このECOはライフサイクルCO2を評価したものかもしれません。

ライフサイクルCO2を建築にも当て嵌めて評価しようということが最近言われるようになりました。概念的には分かりますが、膨大な評価作業が出来るものなのか、意味のあるデータを得ることが出来るものなのか。無理じゃないかな~、と私は思いますけど・・・。


プール開き

2010-05-21 | B 繰り返しの美学


■ 緑の季節になりました。今日(21日)の松本の予想最高気温は28℃でした。

このところ火の見櫓に心奪われて、♪今日も火の見、明日も火の見、これじゃ年がら年中火の見 となってしまいそうです。ということで今回は久しぶりに繰り返しの美学です。

これは屋内プールの構造フレームです。同じ形のフレームが等間隔に並んでいます。照明器具もそれぞれのフレームの同じ位置についていますね。

まもなくプール開きです。ここで泳ぐ人たちにも気がついて欲しい、「平凡なデザインでも繰り返せば美が宿る」ということに・・・。

「火の見櫓暮情」を読んだ

2010-05-20 | A 火の見櫓っておもしろい



 著者の内藤昌康さんは三河・遠州にある火の見櫓を訪ね歩き、地元の人に取材をし、火の見櫓の立つ土地を観察してそれぞれの「火の見櫓物語」をひも解く。

火の見櫓のカラー写真がいくつも載っているが、風景の一部として火の見櫓を捉えたものが多く実に味わい深い。

それにしてもこの本に載っている火の見櫓は私が観察を始めたこの辺の火の見櫓とは姿が随分違う。火の見櫓は民家と同様に地方色豊かなのだろう。これからも機会あるごとに観察していこう。火の見櫓巡礼っていいじゃないか。

火の見櫓暮情 /春夏秋冬叢書(愛知県豊橋市) 

この本の内容紹介。ここに載っている茅葺の民家を背景に立つ火の見櫓の写真、懐かしき山村風景はいい。 


 


 


013 これは火の見櫓?

2010-05-19 | A 火の見櫓っておもしろい

  
013 




路上観察  火の見櫓? 山形村役場の近くにて 100519

 ある地域に火の見櫓が何基あるか調べる場合、このような半鐘(ドラのような鐘)付き「ホース乾燥塔」を火の見櫓として扱うかどうか見解が分かれるらしい。

火の見櫓とはなにか、明解な定義付けは案外難しそうだ。私は厳密に火の見櫓を決める必要性など感じないので、この「ホース乾燥塔」も火の見櫓の仲間として取り上げることにする。

火の見櫓って十人十色、じゃなかった十基十色。みんな違ってみんなおもしろい! 


 


水平環

2010-05-18 | A あれこれ

春のフォトアルバム 松本市内で  100516

■ 今月16日の午前11時過ぎ、松本の空に「水平環」と呼ばれる虹が出ました。火の見櫓の路上観察中でした。太陽を中心に環状の暈(うん)、そしてその外側にこの写真の虹が出ていたのです。上空の氷粒で屈折した太陽光によって生じるそうですが、頻出する現象ではないようです。