透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

― 山形村の火の見櫓

2014-01-31 | A 火の見櫓っておもしろい





 山形村では各地区の消防団詰所の建替えに伴い、火の見櫓の解体撤去が行われています。既に取り上げたことのあるこの上竹田地区の火の見櫓も今年度中には消えることになりそうです。

そっと中を覗いてみると脚が見えました。



コンクリートスラブによって櫓の脚部の変形を拘束し、また脚によってコンクリートブロック積みの倉庫を補強するという互助効果(ということばを思いつきました)があるのかもしれません。


現存しない。191220 追記
 


「般若心経講義」

2014-01-31 | A 読書日記



 先日、菩提寺で檀家総代会の新年会があった。

宴会の前に本堂で般若心経を唱えた。「般若心経」の字数はわずか262字。600巻という厖大な「大般若経」を要約したものだという。「般若心経」というお経の名前は知っているが、一体どういう内容なのか、どのようなことを説いているのか全く知らない。「空」とはどのような概念なのだろう・・・。

般若心経について書かれた本は多い。ご住職が講話の中で話題にされた『般若心経講義』高神覚昇/角川ソフィア文庫を読むことにする。インターネット上に公開されている青空文庫(→「般若心経講義」)で読むことができるが、やはり本で読みたい。

今年も「何でも読んでやろう」だ。


 


― 江戸の火消と火の見櫓

2014-01-29 | A 火の見櫓っておもしろい

 江戸時代に「火消」が組織される。火消には武家地を守る武家火消(武士の組織)と町人地の町火消(町人の組織)があり、武家火消は大名火消定火消(じょうびけし)に分けられる。

大名火消は1643年(寛永20年)、6万石以下の大名家16家によって編成されたのが始まりで、幕府直轄の定火消は明暦の大火(1657年)を教訓として翌1658年(万治元年)に、選抜された旗本4家で組織されて始まった。また、町火消は1718年(享保3年)、大岡忠相によって出された町火消設置冷に基づいて組織された。

江戸の消防組織の発祥をざっくりと押さえれば以上のようになる(にわか勉強で調べた)。今日の官から民への移行と同様、次第に町火消が火消の中核を担うようになっていった。



次に、江戸時代の火の見櫓の高さや仕様についてだが、これについては武家地用、町人地用と決められていて、それが雑誌「東京人」2012年5月号の「江戸っ子が見上げたランドマーク」と題する波多野純氏の記事に示されている(下図:記事より転載させていただいた)。

左の「粋火の見」は屋根の上に建てた簡便な火の見梯子、中は武家地用、櫓の外周を板で覆っている。押し縁下見板張りか、立派な造りだ。右は町人地用、4本柱を横架材で繋ぎ、筋交を入れ、梯子を掛けてある。方形(ほうぎょう)の屋根の下に見張り台、今の火の見櫓に通じる構造。



出典の「守貞漫稿」について調べてみた。喜田川守貞という人が書いた全35巻にもなる百科事典のような書物で、江戸時代の風俗、事物を詳しく説明しているという。今和次郎の風俗記録、路傍採集、品物調査などと同様のことが既に江戸時代に行われていたわけで、、大変興味深い。岩波文庫になっているようだから、入手したい。

同記事には幕府大棟梁甲良家が残した図面集『諸絵図』(所蔵:東京都立中央図書館)の「火之見番所」の断面詳細図も掲載されているが、図面から地震や強風に備えた周到な構造であることが見て取れ、興味深い。**幕末の安政大地震において多くの建物が倒壊するなか、健全に残ったとされる。**と文中にある。

火の見櫓は漫然と風景を眺めていれば目に入らないような存在だが、調べだすとなかなか奥が深い。


 初稿 120414


― 火の見櫓観察入門 プロポーション

2014-01-26 | A 火の見櫓っておもしろい


安曇野市三郷の火の見櫓 110528



 『五重塔はなぜ倒れないか』 上田篤 編/新潮選書 に三重塔や五重塔のプロポーションを捉える指数として「塔身幅に対する総高比」、「軒長さの逓減率」、「塔身幅の逓減率」、「軒の出の逓減率」などが紹介されている。確かに木塔の美しさはそのプロポーションにこそあるから、それを定量的に示す指数を求めるのは工学的な発想として当然のことだろう。

火の見櫓のプロポーションを定量的に示すいい指数がないものだろうか、と以前から考えていた。最も簡単な指数は木塔に倣えば「脚間寸法と総高の比」だ。今は高さを簡単に測ることができる便利な道具があるし、柱間寸法ならスケールを当てるだけで測ることができる。

「逓減率」については、一段目の横架材の長さと見張り台直下の横架材の長さの比の値(最上段横架材長さ/初段横架材長さ)が妥当だと思う。中間値(中間にある横架材の長さ/初段横架材の長さ)も求めればなお良いだろう。これを正確に調べるのは大変だが、目見当でおよその値を求めることならそれ程大変ではない。



前述の本には重要文化財クラスの木塔33基について調査した結果がグラフ化されて載っている。グラフから形態の歴史的変遷が読みとれることやその理由(例えば木組みの技術の向上など)に関する考察が示されていて、興味深い。

同様なことを火の見櫓で試みれば、ある一定の傾向を示すグラフが得られるかもしれないし、なにか興味深いことが分かるかもしれない・・・。


*初稿 20110529


― 気がつかなかった・・・

2014-01-26 | A 火の見櫓っておもしろい

 塩尻西小学校の近くにあるこの火の見櫓を取り上げるのは2回目です。1回目の記事はこちら。1回目はカーブの美しさに注目していました。逓減(ていげん)率*1が大きく、柱のカーブが美しい櫓です。

1回目に注目しなかった、もとい、気がつかなかったのが脚元の屋根。不思議ですね、見てはいるのに、脳が認識しないなんて・・・。1回目の写真を見直していて、もしかして、もしかして・・・と思い、確認に出かけてきました。



防災無線のスピーカーを設置している火の見櫓は少なくないですが、このように屋根の頂部にきちんと設置しているものは少ないように思います。半鐘を踊り場に移設し、替わりにサイレンを設置しています。なぜ手すりを内側から囲っているのか・・・、分かりません。4隅を面取りしてありますが、その見付け幅を調整して手すり子のピッチを揃えてあります。総じて丁寧なつくりだと思います。



左側手前の柱を見るとなめらかな曲線を描いていることがわかります。この曲線は櫓の美しさを決める大きなポイントです。



いつも指摘していますが、脚部のトラスが下端まで伸びていないで、途中で終わってしまっているのは残念です。美脚ポイントを下げています。

でも、かなり美しい部類に入る火の見櫓です。

1 櫓のプロポーション ★★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★☆ 
3 脚の美しさ ★★★★☆



やはりそうでした。脚が屋根を貫いています。このように表現すると屋根が先にあって、その屋根を後から脚が貫いたと理解されてしまいそうです、屋根が先で脚が後だと。でも実際はその逆、そう考えるのが妥当でしょう。南信方面に多い、この貫通型が塩尻にもありました。


*1 逓減率  脚の直上にある横架材の長さ(L1)に対する見張り台直下の横架材の長さ(Ln)の比、Ln/L1と定義しています。nはn段目の横架材であることを示しています。この櫓の場合、nは6です。多重塔のプロポーションの定量化に関する研究の方法に倣いました。L1が4メートルでLnが2メートルなら逓減率50%となります。この火の見櫓の場合、およそ33%と1回目の記事にあります。逓減率は現場で目測するか、全形写真にスケールを当てて測って知ることができます。櫓を実測できれば正確な値を得ることができますが、現実的ではありません。


   


― チューブ(筒)

2014-01-23 | A 火の見櫓っておもしろい

■ 火の見櫓のカテゴリーで「せんだいメディアテーク」のチューブをとり上げることになるとは思ってもみませんでした。

この建築で目をひくのはなんといっても鋼管を鳥かごのように組み合わせた「チューブ」と呼ばれる組柱です。設計者の伊東豊雄さんのごく初期のメモに海草とある、ゆらゆらした柱のイメージを具現化したものです。

何年か前、この建築を見学してきましたが、情けないことにまともな写真がありません・・・。上は13本のチューブに組み込まれた諸機能を示す図で、ポストカードになっています。

前々稿で、火の見櫓もこのチューブ(筒)と同様の構造と見做せるのではないかと書きましたが、そのようにはできないということのようで・・・。チューブと見做すにはやはりスケスケ、部材が少なすぎるということなのでしょう。他にも理由があるかもしれません。

ところで火の見櫓は建築基準法で規定されている工作物に該当し、高さが8メートルを超えるものを今建設するためには確認申請をする必要があります。で、火の見櫓の構造安全性を証明しなくてはなりませんが、現存するような非常に細い鋼材から成る構造ではなかなか難しいのではないか、と直感的に思います。現行法だとNGという結論になってしまうかもしれません。立体構造の優位性をきちんと評価するような解析ができるかどうかで結論が違ってくるような気もしますが、さて・・・。


 


― 今年の秋までに消えて無くなる?

2014-01-22 | A 火の見櫓っておもしろい



 今日(22日)の市民タイムス(松本地方のローカル新聞)に上の記事が載っていました。松本市は新年度にこの詰め所を移転するとのことです。おそらく火の見櫓は撤去処分、ということになるでしょう・・・。この火の見櫓は大正15年の建設で、古い部類に入ります。

記事によると土地の貸借契約期間は今年の11月末までとのことです。ということはそれまでに取り壊されてしまうということかと・・・。なるべく早めにもう一度この火の見櫓の観察に出かけたいと思います。




 


― 組立部材による筒型構造?

2014-01-20 | A 火の見櫓っておもしろい



 火の見櫓を構造的にどう捉えるか・・・、ここ数日気になっている。

組立て部材による筒の様な?筒状の?(ただ単に形だけの印象だと筒と見做せないこともなさそうだけど・・・)立体構造。曲げモーメントの変化に応じ、筒?のサイズ(断面寸法)を変化させて、上方ほど絞り込んでいる、なんて理解でいいのかな?線状部材によるスケスケな櫓を筒型の構造だとすることに無理があるかもしれない。
踊り場や見張り台に座屈止め効果があるかな・・・。

さて困った・・・。だが、要は構造的にどのように見做して解析するか、か・・・。


 


― 消防信号

2014-01-19 | A 火の見櫓っておもしろい

 消防法の公布、施行は昭和23年のことでした。その翌年施行された消防法施行規則に消防信号に関する規定があり、その第4条に別表に定める区分及び方法に従い発しなければならないと謳われています。




その後何回か改正され、例えば同表の種別の表現なども変わっていますが、ここに示されている打鐘信号は変えられることなくそのまま使われています。




 


― 火の見櫓観察入門 脚

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい






 火の見櫓観察 今回は私がこだわる脚です。

漫然と眺めていると、火の見櫓のデザインの多様性には気がつかないでしょう。けれども、火の見櫓は十基十色です。例えば脚。こうして並べてみると、そのデザインはみな違います。美脚あり、そうでもない脚あり・・・。

櫓あっての脚、脚あっての櫓。背の高い櫓と低い櫓とでは構造的(力学的)必然としてデザインが異なります。両者不可分の関係ですからだから、櫓と脚を同時に取り上げるべきだとは思います。が、今回はデザインの多様性に注目ということで、脚のみ取り上げます。

注目は円弧状部材の有無。の3基、右の脚部は円弧状部材があることで左右の脚に一体感を感じます。左と中の脚部には円弧状部材がなく、左右バラバラな印象です。

それからトラスの脚か否か。の左と中の違いに注目。中の単材はなんとも貧弱。背の高い櫓は単材では構造的に成立しにくいので、トラス状の脚は必然でしょう。

どのタイプを美しいと感じるかは個々人の感性に因ることですから、工学的な観点から論じることは困難です。


の右の火の見櫓(@辰野町川島小学校の近く)の脚部のデザインはユニークです。

過去ログ ←クリック


本稿でいろんな脚があるということを分かっていただけたら・・・。


― 火の見櫓観察入門 手すり

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

 火の見櫓の見張り台の構成要素の内、手すりに注目してみましょう。観察対象を絞ると各々の違いが分かりやすくなります。

シンプルなものから装飾的なデザインが施されたものまでいろいろあることが分かります。


シンプル1

シンプル2


女性的で繊細な曲線と男性的な×の組合せ


リズミカル 繰り返しの美学


エレガント 

探せばこんなに上品で優美なデザインも見つかるのです。


モダンアート(上越市)

火の見櫓の手すり みんなちがって みんないい!


 


― 火の見櫓観察入門 見張り台

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

 目が大きい、二重まぶた、目尻が下がっている、まつ毛が長い、鼻が高い、口が大きい、唇が厚い・・・。そう、顔の観察ポイントなら誰でも直ちに網羅的に挙げることができるでしょう。

火の見櫓の見張り台にもいくつかの観察ポイントがありますが、本稿ではとりあえず事例を挙げるに留めておきます。



















― 火の見櫓観察入門 遠景、近景

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい


東御市滋野の火の見櫓 撮影日 130712

 火の見櫓観賞のポイントはまず遠くから見ること、私はそう思います。

上の写真の位置では近すぎます。もっと遠くから見ると、集落の中にすくっと立っている姿を楽しむことができます。火の見櫓は名前の通り、元々は火災を発見したり、火災の状況を把握して、半鐘を叩いてそのことを伝えるためのものですから、集落全体が見渡せるように高く造られています。ですから、逆にランドマーク(その土地の目印)にもなるわけで、遠くからでもよく目立ちます。

そしていろんな方向から見ることです。

でも時間がないとこれは難しいですが・・・。見る方向によって風景が変わりますからその中の火の見櫓の印象も違います。



次、近づいてパーツを見ることです。

まずは屋根。屋根にはかわいらしい飾りがついていることが多いです。屋根の4隅に巻きひげがついています。祭り神輿の場合、これと同じものを蕨手といいます。それに倣ってこの「くるりんちょ」な飾りを私は蕨手と呼んでいます。

屋根のてっぺんには避雷針があります。ここにもいろんな飾りがついています。別にこんな飾りが無くたって機能的には問題ありません。職人さんの遊び心でしょう。



背の高い火の見櫓には踊り場がついています。細身だとこのように踊り場が櫓の外にはみ出していることもあります。カンガルーのポケットみたい、なんて何かに見立ててみるのもおもしろいと思います。

上の写真を見ると踊り場から上には「×」の形のものがあります。これはブレースと呼ばれる部材ですが、そんな聞き慣れない名前は別に知らなくても問題なし。もし知りたければ調べるだけのことです。踊り場から下は「×」の交点に「○」があることに気がつきます。リング式ターンバックルと呼ばれるものです。何のため?と疑問がわくかもしれません。張力を調整して櫓のゆがみを修正するためのものです。

カンガルーの袋のような踊り場を支える方杖が2本あります。外側に曲げてありますが、直線のものも内側に曲げてあるものもあります。

火の見櫓の観察にルールなんてありません。観察対象がなんであれ自分なりに観察ポイントを決めて楽しむこと、それでOK。火の見櫓を若い女性に見立てて「火の見ちゃん」なんて呼んでいるおっさんもどこかにいるかもしれません。

私なりにまとめた火の見櫓のチェックポイントはこちらです。(←クリック)


 


― 火の見櫓観察入門 立地

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

火の見櫓観察のポイント(改訂121008)を再び載せます。


1 火の見櫓の立地、環境

10 周辺の状況・環境、観察時の季節や天候、時間など 
11 消防団詰所(屯所)、消防倉庫の有無、火の見櫓との位置関係と両者の形や色などのバランスなど
12 観察者の主観的な印象
13 その他

2 火の見櫓の全体の様子 

20 形式:1本柱、梯子型(2本柱)、櫓型(3本柱、4本柱 その他の型)
21 櫓の高さ、脚の長さ、脚間長さ
22 プロポーション:上方への絞り方(櫓が描く曲線の様子) 総高/脚間長さ、逓減率
23 屋根と見張り台の形、大きさ及びバランス
24 色
25 メンテナンス 損傷の有無 発錆状況など
26 その他


3 火の見櫓を構成する各部の様子

30 屋根の有無 屋根の形(平面形と立体形)と飾り(避雷針と飾り、蕨手、その他)
31 半鐘の有無 半鐘の設置位置、形(梵鐘形(表面の様子)、ドラ形) 半鐘用の小屋根の有無 形
32 見張り台の有無 見張り台の平面形、床の構成、手すりのデザイン
33 踊り場の有無 踊り場の平面形、床の構成、手すりのデザイン
34 櫓の平面形(3角形、4角形、その他)と立体形、構成部材の種類(鋼材、木材、石、コンクリート、その他)、寸法、接合方法(鋼材:ボルト、リベット、溶接)、ブレース(筋かい)の材料と構成  
35 梯子の設置の仕方(櫓の内部、外部、櫓の横架材利用)構成部材 手すりの有無など
36 脚部のデザイン 単脚、複合脚(トラスの組み方やアーチの有無 カーブの様子) 
37 基礎:独立基礎、一体型(塊状)基礎
38 消防信号表示板の有無 銘版の有無と記載内容(製造所名、製造年、寄贈者名など)
39 付加されているもの スピーカー、サイレン、アンテナ、照明、ウインチ、ホース掛けなどの有無  その他


4 その他 

今朝(16日)塩尻市の西条地区の火の見櫓を観察してきました。

本稿では上に挙げた観察ポイントのうち、
1 火の見櫓の立地、環境  
10 周辺の状況・環境に注目してみます。



撮影日130816 以下同じ







 火の見櫓は道路沿いに立っていることが多いです。火災の発生をいち早く伝えるという機能からすればこれは当然のことと言えるでしょう。消防団員が駆け付けやすいですから。辻に立っている場合も少なくありません。道路沿いだと比較的見通しが効きやすいということもあるかもしれません(直線道路ならば)。



中にはこのようなところに立地ているものもあります。まわりの樹木が生長して周囲の見通しが効かなくなっています。この火の見櫓はうっかり見過ごすところでした。

火の見櫓は景観上のアクセントです。にもかかわらず周辺環境と違和感無く調和しているところがすばらしいです。