透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「ゴッホのあしあと」原田マハ

2024-02-25 | A 読書日記

『モダン』
『異邦人』
『楽園のカンヴァス』
『美しき愚かものたちのタブロー』
『黒幕のゲルニカ』
『本日はお日柄もよく』
『たゆたえども沈まず』
『カフーを待ちわびて』
『デトロイト美術館の奇跡』
『リーチ先生』
『リボルバー』
『フーテンのマハ』
『ジヴェルニーの食卓』
『常設展示室』
『アノニム』
『風神雷神』




 上掲の原田マハの作品を読んできた。そして『ゴッホのあしあと』(幻冬舎文庫2020年8月10日初版、2023年7月5日9版)を読んだ。

『たゆたえども沈まず』の副読本とでも言うべき一冊。本書でその創作の背景が明かされるが、ゴッホに想いを寄せるマハさんのゴッホゆかりの地を巡る旅の記録でもある。本書は『たゆたえども沈まず』を読んでから読むのが望ましい。

本書では2020年の7月に蓼科で書かれた「失われた春 ――あとがきにかえて」が一番印象に残る。2020年3月、コロナウイルスが蔓延したパリで都市封鎖(ロックダウン)を体験したマハさん。あとがきでマハさんはその時の心情を書いている。

**流れゆくセーヌの川音を聴きながら、いま、自分が直面している孤独。私は初めて我が身をゴッホにぴたりと重ね合わせることができた。そして、彼が人生のどん底にいたときにこそ、最も清澄で、最も美しいタブローの数々を生み出した、その強さを思った。**(167,8頁)

ゴッホへの深い共感。

**セーヌ川が流れる静かな音は、私の耳の奥にいまも響いている。〈失われた春〉の調べは、この先も幾度となく私の中に蘇るだろう。そしてそのつど、孤高の画家、フィンセント・ファン・ゴッホを思うに違いない。古い友人をふと思い出しては、たまらなく会いたくなるように。**(169頁)

ゴッホへの敬愛の念。


 


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