つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 年末の旅行(5)

2018-12-27 07:55:45 | エッセイ

エッセイ 年末の旅行(5) 課題【靴・履物】2018.4.27

古都に響き渡る除夜の鐘を聞きたいと思ったことも、旅行の目的の一つだった。

今日は大晦日。

昼間歩き回って疲れてはいたが、頼んでいた年越しそばを食べてその時を待った。
なかなか時間が過ぎない。お茶を飲もうとラウンジに行った。
カウンターでは静かにお酒を飲んでいる人が多い。
いつもこんな風にゆったり時を過ごしているのがろうか。

暫くして「鳴りましたよ」とウェーターが教えてくれた。
室内ではよく聞き取りにくいので庭に出る。
確かめたわけではないが、大きく聞こえるのは近くの元興寺、遠くに聞こえるのが興福寺かもしれない。
何組かの人たちが「おめでとうございます」「二〇一八年ですね」などと声をかけてくれる。

年が明けた。

奈良ホテルが戦前からある由緒あるホテルだとは、迂闊にも知らなかった。
最近は大理石の床や、シャンデリァが煌めく近代的で大きなロビーが多いが、ここは質素にさえ見える和風のロビー、
天皇陛下御即位を祝して中央に大時計がある。15分毎に鳴るオルゴールの音を皇后さまは気にいられ、お帰りの時、戻られてもう一度お聞きになったとか。
またノーベル賞を受賞したアインシュタインが弾いたという古いピアノもある。

秋篠の宮様ご一家が来られた時、悠仁さまは廊下に飾られた年表に映っている若き日の秋篠宮さまを「あ、パパが」と言われたとか。

戦前、満州国皇帝が泊まられた時は、宴会用の器をセットで何百器も焼いたと、展示してあるところに案内をしてくれた。

先日、コーディネーター 加藤タキさんが、親交のあったオードリーヘップバーンのことを語った番組があった。
その中で、奈良ホテルに一泊の予定だったが、息子ルカ君の発熱で三泊し、その時の看病ぶりやエピソードなどを話ていた。

もう一度奈良ホテルの赤い絨毯の上を歩きたい。

   先生の好評・・・ゆったりした非日常を慈しんで書いている。
             典型的な場を選んでカットする。

 

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エッセイ 年末の旅行(4)

2018-12-20 12:53:41 | エッセイ


エッセイ 年末の旅行
(4) 課題【春・自由課題】 2018.4.1

気持ちのいい目覚めをした。
とてもいいホテルのようだ。

朝食のため、赤い絨毯が敷かれた廊下の先のロビーに行くと、豪華な食堂に案内された。
給仕の男性が私に椅子を引いてくれた。
夫が、
素早くその椅子に腰を下ろした。

「ここはレディファーストでしょ」と下を向いて笑ったら、夫も気づいて笑う。
男性も軽く笑った。

名物の茶粥が出た。
炊き合わせの野菜が一つ一つ美味しい。
目をみてうなづきあったが、椅子のことを思い出し、吹き出しそうになって困った。
何気なくよそおいながら、品よくふるまうのは難しい。

観光案内所で作ってもらったコース、西ノ京の唐招提寺からお参りした。
廬舎那仏、薬師如来、千手観音をまじかに見て手を合わせ、そこからゆっくり歩いて薬師寺に。
日光菩薩、月光菩薩にも手を合わせた。
朝早い時間だったせいか、観光客も少なく境内は閑散としている。
以前、東京の博物館で展示された時は七十万人以上の見学人で溢れたとか。

お目当ての大仏様に、夫は「これが見たかったんだよ」そして何度も「すげー、すげー」を連発する。
改めて見てみると、大きいだけではない重厚さと、何かわからない仏様のありがたさを思った。
こんな立派な像が残せる日本は凄いと思った。
特に山門の円柱の柱に、八百年以上も風雪に耐えた木の重厚さを感じ、何度も撫でてしまった。

大仏殿の北東の柱が邪気を逃がすという意味で穴が開いており、「柱くぐり」ができる。

腹這になって抜けるが、大仏様の鼻と同じ、三十センチちょっとの穴、長さは百二十センチ。
行列に並んで挑戦してみた。
でも、弱った腹筋ではズリズリとは進めず途中で引き返した。
再度挑戦しに来なければいけない。

ホテルに戻ると、部屋のテーブルの上に小さなお供えと蜜柑、鹿の置物のしつらいができていた。
明日はお正月だ。

 先生の講評・・・日常と違う体験で、年末と新年を夫婦で迎えるその楽しさが
                        素直に伝わってくる。
           長年働き連れ添った夫に愛嬌がある。

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エッセイ 年末の旅行(3)

2018-12-14 09:06:37 | エッセイ


ッセイ 年末の旅行
(3) 課題 【到着・出発】 2018年3月22日

 夕方奈良に着いた。明日からの一日半、どう観光するか、駅の案内所を訪ねた。
行きたい所、観たいものを聞かれた。
一番に観たいものは東大寺の大仏様と、以前、東京の博物館で展示された仏様も観たいと言った。
すると、遠い西ノ京の唐招提寺から出発して、最後に大仏様を観るというコースを作ってくれた。

やっと奈良を観光するのだという気持ちになってきた。 
奈良の街を知りたいと少し歩いてみたが、年末の商店街は早仕舞をしている。

 食事を済ませ、ホテルに行く道を教わった。
「大きな通りを春日大社に向かって、突き当たったら右に行く」とシンプルなものだったが、興福寺わきの通りは長い坂道だ。タクシーが来ないかと時々振り返ったが全然通らない。
歩くしかない。歩くのが嫌いな夫の不機嫌が伝わる。

 小高い森の中に、瓦葺の大きな建物が闇の中に浮かんでいる。
「まさかあそこじゃないよね」、ホテルを予約した時、ネットではそんなふうには見えなかった。

 門に奈良ホテルの看板があった。
思いがけなく立派なホテルだ。
玄関までの長いこと、車が何台も追い抜いていく。

 木造建築のクラシックなホテル。
回転ドアを押すとフロントの男性が何くれとなく世話をしてくれる。
スニーカーは履いてはいなかったが、ザックを背負って歩いてきたのが場違いのようで気遅れを感じた。

 部屋は二階の洋室だった。
私は普段、畳の生活をしている。ベットに二日間寝るのは少し気が重かった。

 カーテンを開けると、木枠にカットガラスがはめ込まれたクラシックな窓だったのでびっくりした。
外の暗闇に目を凝らすと五重の塔が見える。
調度品は落ち着いたものが多く、空調も丁度いい。ベットの硬さもいい。
そういえば、ネットに浅田真央さん宣伝のベットを使っていると出ていた。
しばらくして居心地のいい何かを感じた。

  先生の講評・・・旅行記には季節感の描写が大切。
           下線はもう少し様子を書き込みたい。
           旅の楽しみが描かれている。
           私もあのホテルに泊まりたい!

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エッセイ 年末の旅行(2)

2018-12-05 16:16:27 | エッセイ


エッセイ 年末の旅行(2) 課題【泣く・笑う】 2018年3月9日

 十二月に入って奈良に行くことにした。
半ば思いつきと言ったらいいような計画だった。
夫が年末に二日間休みがある「奈良に行こうかな」と言ったからだ。
正月休暇を使えば二泊三日の旅行はできる。

 ネットで宿の検索をした。
観光シーズンでもないのに市内の宿はどこも満室。
予算を少し上げて調べたら一つ見つかった。
勿体ないかとも考えたが予約をした。
旅費が三割引きになるジバング手帳を持っている、そ
れで補えばいいと駅に行った。

手帳を出すと年末には使えないと言う。
宿の予約をしてしまったのだから、普通に新幹線の切符を取ろうとしたら、年末のこの日は夜の遅い時間しかないという。
お正月の帰省ラッシュというものを忘れていた。
諦めかけていたら、友人が新幹線のこだまを使ったらと教えてくれた。
夫はすぐに駅に行き「朝の早いグリーン車しかなかったからそれにしたよ」と言って帰ってきた。

 朝早い出発だったから午前中に京都に着いた。
夕方までの時間を随分昔に行った清水寺から三年坂、ねねの道から知恩院、丸山公園へと記憶をたどって歩いた。

 清水寺の周りには、貸衣装の派手な柄の和服を着た外国人が大勢居たが、羽織もショールもなく、時々吹く冷たい風に身をすくめ、カメラを向けあっていた。

 小さな路地に入っていくと、すれ違う人は外国人が多い。
仕舞屋風の家の生け垣にメニューの紙が揺れている。
ドアを押すと、お店のマダムが「フォー」と指を四本立てた。
私たちの後ろに二人が続いたので四人連れだと思われたらしい。
「二人です」と言ったら、「外人さんかと思ったわ」と濃い化粧の顔が笑った。

 土地の人が、お正月の準備をしている。
三和土に水をまいたり、ガラスを拭いたり、雑巾を絞るバケツから微かに湯気が立っている。
いつもの年だったら、私もあんな風に忙しくしていただろうと思った。

先生の講評・・・旅行記が下線の部分で転調して良い。旅の時空間が日常と重なっている。

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