つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 福は内

2024-02-03 13:51:49 | 楽しい仲間
    
    
   エッセイ 福は内 【冬(新年)・自由課題】 2010・1・8
  先生の講評・・・
        ユーモラスでのどか、温かい夫との一日。
        平凡でいて夢の様だ。この意識を筆者は持っているのか。
        あるいは何気なく書いたのか。表現を意識化すること。
     つつじのつぶやき・・・
        エッセイ教室に通いだして2年目の作品です。
        今夜も、夫と同じ会話をするかもしれません。

節分の日、夫は、休暇中で家に居た。
「節分だから、早めに豆播きをしてね」
「暗くなったらね」
「もう」
「そうだ、庄平が帰ってきたらやらせよう」
いつも面倒な事から逃げようとする、夫の悪い癖だ。
暗くなってきたのに、どこの家からも、豆まきの声がしない。
そういえば、最近声がしなくなったなと感じる。
昔、子供達が小さかった頃は、何処かの家が始めると、
あちこちで「福は内、鬼は外」と声がした。
「お母さん、お庭は外だよね」と言った、息子の顔を思い出す。
お正月過ぎの、平凡な日常が、何となく賑やかになったものだ。
 
夕食のてんぷらを揚げているが、揚げたてを食べたい。
夫は、まだテレビの前で粘っている。
「早く豆まきして」と急きたてると、ようやく立ち上がり
「恥ずかしいから、小さい声でやろう」と言う。
「駄目よ、大きな声でやらないと、縁起が悪いでしょう」
 豆の入っ枡を渡した。
「どこからやるの」と言う、
「どこでもいいわよ、好きな所からまいて」
「福は内、鬼は外」と、奥の部屋から声が聞こえてきた。
折角閉めた雨戸を開けている、段々声が大きくなった。
それを聞いているうちに、何だか可笑しくなってきた、
我が家だけが豆まきをしている。
鍋の前で笑っている私を見て、
夫は、「鬼は外」と言いながら、豆をぶつけてきた。
私は、本当に可笑しくなって、大声で笑ってしまった。
夫もつられて、「バッカヤロウ」と、眉毛を下げて笑う。
この先、夫婦二人きりになっても、こんな風に、
節分の豆まきを続けていくのだろうか。
久し振りに、夫と顔を見合わせて、大きな声で笑った。
やっぱり「福は内」だった。
「若しかして、足りないかもしれないけど、年の数だけ食べて」と、
枡に、半分以上残った豆を返してきた。

 
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「俺がやっとく」 | トップ | 春ですね。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

楽しい仲間」カテゴリの最新記事