つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ クリスマス・イブ

2015-12-22 12:02:53 | エッセイ

エッセイ クリスマス・イブ

「お母さん、分かったぞ」買い物から帰りドアーを開けると、長男の大きな声がした。
「さっき、山洋堂から三国志が届いているって電話があった、クリスマスに間に合いましたって」

クリスマス・イブの夕方の話である。
プレゼント用にと、先週から近所の本屋に頼んでいた漫画、三国志のシリーズものだ。
長男は小遣いを貯めては買っていた、だからクリスマスプレゼントに纏めて買おうとしたのだが、何巻か抜けていた。
それが揃ったとの連絡だ。
「そう」と平静を装ったが慌てた、本屋さんは正直すぎる。

「サンタクロースはやっぱりお父さんと、お母さんだったんだ」
「違うよ、疑うとサンタさんはこないよ」と言うと「変だと思ってたよ、ずーと前も高島屋の紙に包んであったもの」

長男は五年生、二男はまだ幼稚園。
長男は本当のことを知ってもいい、だけど二男の夢を壊してはいけない。
「それはお父さんがプレゼントをしたいからって頼んでいたのものよ、疑ったら本当にサンタさんが来づらいよ」

困った、今からではデパートにも行けない、夫は年末の追い込み中だ。
約束したコーンスープもまだ作っていない。

夫は子どもたちが寝てから帰ってきた。
「この前、会社の懇親会で貰った物は」という。
袋の中を見ると、大きく「闘魂」と書かれた将棋と、訳の分からないゲームが入っていた。
仕方がない、あの子の知らない包装紙に包み変えた。

K君のお母さんは、プレゼントを上げる時一工夫をするとか。
寝る前、子供達と一緒に雨戸を少し開けておき、入口にお盆に載せた紅茶を置くのだそうだ。
深夜、プレゼントを置き、雨戸を閉めて冷えた紅茶を半分だけ飲んでおく。
「サンタさんは忙しいから全部は飲めないの」と。

父や母はいっぱい嘘をつく。

     
  課題 【七つの大罪】   2015・11・27

  先生の講評  結語の父や母はいっぱい嘘をつく。 が、とても優しい。
           その前の伏線(事例)がたっぷり効いているのでストンと心に落ちる。
           構成、描写も良い。殆んど直せない。

  つつじのつぶやき・・・
               
結語、「父」「母」「いっぱい」「嘘をつく」
               分かりやすい短いことばの中に、
               大きな意味の4つの言葉が入っている。
               と、コメントもいただきました。
               
今年最後の授業、褒めていただきました。
                  
               皆さま、良いお年をお迎えください。



               かつてツリーに飾られていた小物達   
              

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エッセイ 北の窓

2015-12-13 13:28:52 | エッセイ

エッセイ 北の窓

外を見ると、道路に落ち葉が沢山落ちている。
夕べ風が吹いた、関東地方の北風一号だという。
北側に玉川上水があり、遊歩道の椚やコナラの大木から、この時期毎日落ち葉が舞う。
地面に落ちた枯葉は、お向かいの家の前に小さな山になっている。

私の家は二階にリビングがあり、キッチンの北側がカウンターになっている。
そこに炊飯器やトースター、電話機の子機などが置いてあり、作業台としても欠かせない。
その前に半間ほどの窓があり、いつも、何気なく表の通りを見ている。

雨の時は小さな水たまりに、降る雨の量を知り、出かける者への傘や情報を、又自分の外出の予定を考える。

雪が降ると、赤い消火栓の標識の上に、椚の木に積もった雪がどさっと落ちる。
スノータイヤのジャリジャリと音がする他は人も通らない、通りを眺めているのも好きだ。

通りから一軒入っている。
家を出て表通り
に出、右は駅、左に行くのはバス停にと行き先が分かる。

息子たちは休みの日、それぞれが勝手にどこかに出かける。
長男は自転車で道の真ん中を曲がる。
ぶきっちょであけっぴろげなところは私に似ている。

玄関を閉める音がする。
「出かけるんだ」と窓から覘くと、二男は見られているのが分かるのか、素早く消えてどっちに行ったか分からない。
私はそういうところもある。

夫は、見られているのを見越してゆっくり手を振る。
「いってらっしゃい」と言いたいが、ご近所に知れるのが嫌だから声は出さない。
私が出かける時は、大抵窓を全開にして「行ってらっしゃい、お母さん」と声をかけてくる、それが恥ずかしい。
だから分からないように静かに自転車を出す。

夜、窓が明るいと誰かが待っている。
「おかえり」と「いってらっしゃい」の北の窓でもある。

   課題 【窓・屋根・柱】  2015・11・13

  先生の講評  
     
 窓からの眺めにしぼり、自然の移ろいと家族の姿を写生する。
      二人の子に自分を重ねているのが、写生を超えた味がある。

                                 
       
じのつぶやき ・・・夜、かさこそと音がする。
                    風があるんだなと感じる。
                    毎日箒と塵取りの出番。
                    これも好きなつつじです。

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エッセイ 青空

2015-12-05 12:20:25 | エッセイ

エッセイ 青空

私は朝起きた時、晴れていると元気になる。
曇りや雨の日は何となく頭も体も重い。
気のせいなのか、又は自然に敏感なのだろうか。

長年、朝早く勤めに出る夫を送り出す生活を続けてきたが、若い頃、お天気の悪い日はもっと大変だった。
なかなか目が覚めず、まるで夢遊病者の様だった。
夫が出勤しても、まだ学校に行く子供たちがいたから、なかなか自分のペースには戻れなかった。
今はあの頃のような辛さはないが、やっぱりお天気がいい。

曇りの朝、サークルの集まりで横須賀に行った。
中央線はラッシュアワーの時間だった。
余分な時間がかかるが立川から始発電車に乗ることにした。
列の後ろについたが、到着した電車に乗る人と乗らない人で列が乱れる。
始発電車は乗客を降ろした後、ドアーを一旦閉じてから空ける。
何とか席には座れたが立っている人もいた、ヤレヤレである

荻窪のあたりから青空が見えた、気持ちがはやる。

品川駅始発の京浜急行に乗る。
車内は空いていた。

横須賀中央駅で降り、三笠港から、沖に見える猿島に行く。
連絡船で十分ほどだ。
猿島は無人島で夜間誰も居なくなる。
乗船券を半分ちぎってくれたので「帰りにこの半券を見せるのですね」と言ったら、帰りは見せなくていいと言う。
確かに片道だけの利用はない。

東京湾に浮かぶ猿島は、江戸幕府が外国船の侵入を防ぐために築き、明治には陸軍省、海軍省の所管軍の要塞だった。
一時期、一般の立ち入りは出来なかったそうだ。

私は海水浴やバーベキューでにぎわう夏に来たことがあるがが、秋の猿島は始めてだった。
弾薬庫跡や崩れかけた石垣、明治時代のレンガのトンネルは、静かに時を過ごしているようだった。

頂上の見張り台から、真っ青に晴れた空と東京湾を見ると、やっぱり私はお天気人間だ。
久しぶりに、桟橋まで駆けっこをしてしまった。

  課題 【朝・昼・晩

  先生の講評  
     
 青の部分は説明過多。
      主題に沿って描写を省略すること。
      天候の変化で気持ちが変わる様子が巧く書かれている。

                                 
       
じのつぶやき ・・・勉強不足です。

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