つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 抽斗

2022-01-22 13:44:46 | 楽しい仲間
 

                         先生の講評……ノスタルジーの紗幕を通した人物表現が巧み。
                                                       過去の人間が、今に生きているようだ。


                       エッセイ 抽斗 課題【忘れる・記憶する】2014.2.28

               私の育った小さな町の通りに、二軒の店があった。
                軒の低いおシンさんの店は鍋、釜、笊から茶碗、菓子や子供向けの籤まで、何でも屋の店。
               もう一軒は、「煙草や」と呼ばれている、間口の広い蔵構えの商店。
               煙草やは、「たばこ」の赤い看板や、塩の青い看板がぶら下がっていた。
               又、何かの鑑札や、板塀にキッコーマン醤油、油などの看板も取り付けてあった。
 
               重い硝子戸を開けて入ると、二段框の板敷はピカピカに磨かれて、壁には、一面大小の抽斗があった。
               その前の大きな火鉢の前に、髪をひっつめたに結ったおばあさんがいつも座っている。
               皺々の顔、歯の無い口をもぐもぐしながら、小さなキセルでたばこを吸っている。

               「葉書きを何枚と、切手を下さい」等と言うと分からなくなる。
               抽斗を開けたり閉めたり、何度も聞き返し、首を振りながら怒った顔になる。
               すると奥から、モンペをはいた小柄なおじいさんが出てくる。
               「あいよ、何だね」と愛想よく話を聞いて、背伸びするようにして抽斗から出してくれる。
               おばあさんのことを、皆は「もぶれている」と言っていた。
                もぶれるの意味は分からなかったが、今でいう認知症だったのだろう。

               あの頃は砂糖から油まで、大抵量り売りだった。
                煙草やの土間には、酒や醤油、味噌の樽がいくつも置かれ、それを量るのは、養子のサトルさんの仕事だ。

               学校から帰ると、「煙草や」にお使いに行く。
                木しゃもじを持ったサトルさんは、味噌樽と秤の間を小刻みに動き、何度も量り、決しておまけはしない。

               煙草やは沢山の山林を持っていた。
                雨が降り続いて、農作業が遅れるような時でも、山の材木は一雨ごとに太くなり、益々金持ちになる、と、町の人               
               は噂をしていた。
 

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エッセイ トン汁

2022-01-11 12:04:45 | 楽しい仲間
                

                  先生の講評……トン汁を入り口にして、歳月の経過と家族の変化を描く。
                                       そう、ひたすら身の回りの生活の微細を描くべし。
                                       具体描写の中に、文末の「愛」が込められた。



                  エッセイ トン汁 課題【野菜】 2016.5.22

            もう三十年余り、生活クラブという生協に入っている。
            組合員と生産者で話し合いながら運営する。
            添加物は最低限に、産地が分かる、そして無駄な流通コストを抑える。

            生協の事は、子供の通う幼稚園のお母さんに教えてもらった。
            当時は各地域で、小さな班を作って共同購入するのが主だった。
            近所に班が無かったので、友人と三人で始めた。
            牛乳は注文数が足りなくて、遠くの班に入れてもらった。
            共同購入なので、一班、一セット単位で注文をするが、分け方が難しかった。
            例えばお肉は一頭買いなので、好きな所ばかりは買えない。
            ビフテキにするような高い肉と、細切れやヒキ肉も一緒にくる。
            金額とグラム数の分け方が面倒で、同じ値段にして順番に回した。
            又季節の物は全員が欲しい、スイカを三つに分けた事もあった。

            毎週同じような材料を注文するから、献立も同じ様になってしまう。
            同じ様と言えば、よく、トン汁を作る。
            ジャガイモと人参、大根、牛蒡、最後に葱、野菜はこの五品。
            メーンは豚肉と豆腐。
            味付けは、味噌と少量の日本酒。
            以前はコンニャクも入れたが、今は夫婦二人、一枚のコンニャクは多すぎるので入れない。
            経験からの一知恵がある。
            一、豚肉と野菜を炒めたら、お酒を入れて臭みをとる。
            二、野菜が煮崩れをしない様、アクをとったら味噌を三分の一入れる。

            毎日お味噌汁を作っていると飽きる。
            その点トン汁にすると、おかずは干物と少しの何かがあれば充分。
            材料は大体冷蔵庫に入っているので、献立に困った時に作る。

            長男はトン汁が好きだった。
            「おっ、いい匂い」と言って、鍋の蓋を開ける。
            トン汁のおかずは、鯵の干物と納豆が、ゴールデンコンビだと言っていた。
            今新しい家庭でも食べているだろうか。

   

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2022年 明けましておめでとうございます

2022-01-01 16:24:21 | 楽しい仲間


 2022 あけましておめでとうございます
まだコロナ禍は続くのでしょうか、早くお引きとりいただきたいです。

元旦、良いお天気。
ニューイヤー駅伝楽しみました。
旭化成の「相沢晃選手」かっこよかった!
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