エッセイ 大皿 課題 【食器】 2018年7月28日
夫の転勤である時期地方都市に住んだことがある。
知らない土地は知人もなく、子供が学校に行った日中、デパートや町の商店街によく出かけた。
若い頃と違って洋服などにはあまり目が向かず、食器や小物雑貨、インテリア等に興味をもった。
デパートは季節ごとに目新しくレイアウトされている。
巡っているうちに、器などの良さを知った。
町の中心のアーケードに、老舗の瀬戸物屋があった。
長い時間、棚のあちこちを見て回り一つの物を決める。
決めても迷う。そんな風にして、少しずつ自分の物になった。
刺身を盛るであろう大鉢は、今はお正月にお節の盛り合わせに使う。
フルーツの大皿は息子たちが来た時など、何種類かの果物をカットして一つに盛り合わせる。
最近出番の少なくなった大きな土鍋はおでんを入れる。
蓋を取った時の湯気もご馳走になる。
あの時買った駒盆も大切に使っているが、魚の盛り付けに使う皿は勿体なくて、普段は引き出物に貰った皿を使っている。
孫が泊まりに来て、刺身が食べたいと言う。
三人でデパート地下の魚売り場に行った。
夫はいいところを買えと言うが予算もある。
それに中トロばかりを食べさせるのは贅沢だ。
一柵は中トロ、もう一つはいつも買う物と二柵買った。
家に帰ってパックから外した。
水洗いをし、キッチンペーパーで拭き取り、まな板に並べると見分けがつかない。
黒の大皿に大根のけんの白、庭で摘んがシソの緑、赤い刺身のご馳走が出来た。
孫はいつも食事の手伝いをするが、さっきからまな板から目を離さない。
「はーい、食卓に運んで」
「中トロはどの辺?」
「言わない、聞いたらそこを食べにくいでしょ」
銘々の器に盛ってもいいのだが、折角の食事、大皿から取り分けた方が楽しいはずだ。
先生の講評・・・孫に使った大皿は転勤先で買ったもの?