つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ マラソン(二)

2022-10-31 15:09:42 | 楽しい仲間
                 
       エッセイ マラソン(二) 
       課題【前進・後退・立ち止まる】 2019.11.22


        先生の講評……「マラソンの天使」のキーワードで文章全体が締まった。
                    ワンポイント、ここぞという言葉の使用方法だ。


  応援した所は、地下鉄を上がってすぐの高架下だった。
  古い鉄柱と歩道の間に花壇があり、狭い場所だが応援の人が
  何人もいた。
  夫は待つのは嫌だと言って帰った。
  一人でその空間に入っていくのは不安だったが、何とか入り込めた。
  スマホのニュースから情報を知りたいと思ったが、直後とはいえ過去の
  結果等だった。
  手持ち無沙汰に、おやつを食べ、仲間にメールをしてその時を待った。

  空はすっかり晴れ、暑くなってきた。
  本番のオリンピックは真夏の開催だから、この位は想定内だが少し心配だ。
  タイムより二番以内に入らなければいけない、今回は本当のかけっこだ。
  普段、マラソンはテレビで見ている。
  解説者が選手の名前や順番、走り等の見どころを教えてくれる。
  今回は情報の無い、目の前の状況だけを見て応援するので心細い。

  選手が帰ってきた。
  往路の時よりばらけているが、興奮して見ているから誰が誰だか
  よく分からない。
  ただただ「がんばれ!」の声しか出せなかった。

  大きな塊が行ってから設楽選手が一人、力の入らない走りでやってきた。
  スマホで失速したことは分かっていた。
  さっき通過した集団は、殆どが帽子を被り、サングラスをかけていた。
  設楽選手は両方ともしていなかった。
  暑かったのだ。
  「帽子を被っていればよかったのに」と思いながら、大きな声で
  何度も名前を呼んだ。
 
  終わってから、様々な声があった。
  「氷をうまく利用すればよかったのに」
  「ペースを少し落とせばよかったのに」
  「世界では、あの位の強い戦いをしなければ勝てない」

  前半の走りを観た人は、皆同じ夢をみた。
  私は、真っ白いパンツがひらひらと駆け抜けた最初の姿を忘れない。
  「マラソンの天使」を見たように思ったことを。
 


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エッセイ マラソン(一)

2022-10-22 12:46:44 | 楽しい仲間

      エッセイ マラソン(一) 課題【幸運・不運】 2019.11.8  
 

         先生の講評・・・息子を間接的に描きたい。どうにじませていくか連作(二)あたりで期待したい。
         つつじのつぶやき・・・先日、立川の昭和記念公園で箱根駅伝の予選会がありました。
                       お正月の本戦、社会人のニューイヤー駅伝、
                       そしてオリンピック出場にと長い道の途中、本気の走りを観てきた時の感動です。
 
             
  私は息子の出身校で三年間、父母会の手伝いをした。
  活動の中に「箱根駅伝」の応援があった。
  お正月は、スタート地点や沿道で幟を持ち旗を振って応援した。
  それ以来「駅伝」のファンになった。
  父母会から卒業しても、仲間達とはいつも箱根の話題が出る。

  九月十五日、早起きしてMGC(マラソングランドシップ)を見に行った。
  公式の大会で上位に入った選手が、オリンピックに出場出来る二枠を競う。
  男子が三十人余り、女子は十人程。一般のランナーはいない。

  出身校で、箱根を走った五人がいると知らせが来た。
  その中に有力選手が二人いる。まじかで応援をしたかった。

  今回はスタート地点から四キロ程の、面影橋の往路にシートを敷いた。
  それ程の暑さではなかったが、晴れてきた空に、段々暑く  
  なるのが心配だった。
  スタートをした時間を見計らったのか、急に大勢の人達が集まってきた。
  ヘリコプターが低空で爆音を響かせ、交通規制された広い道路を
  関係車両が通り過ぎる。
  遠くの方から、深いどよめきが波のように聞こえてきた。

  見えた、テレビカメラの車と白バイ、そして真っ白いユニホームが。
  もう設楽選手が飛び出したと、周りの人達がスマホをかざす。
  本当に一人で、あのまんまの「設楽悠太」が目の前に近づいてきた。
  テレビで見る姿はいつも淡々と走っている。
  今朝は走り始めてから間が無いせいか、何時もより精悍な表情で
  走り抜けた。
  大きなストライドで、あっという間だった。

  何て言って応援したか覚えていない。
  ただ全身の力の限り叫んだ気がした。
  あとの四人を探したが、サングラスをかけ集団で走って来たから
  良く分からない。
  何が何だか、興奮して見ている内に行ってしまった。
  殆どの人達は帰り始めたが、私はあの姿をもう一度見たい。
  あの走りをもう一度確かめたいと、復路の道路に移動した。
 







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エッセイ シルバーモンスター

2022-10-07 12:24:15 | 楽しい仲間


           先生の講評・・・心の歪み、みにくさにいたたまれない感性。
                     心の審美に敏感だ。


    シルバーモンスター 課題【自由課題】 2019.12.27

  ここの所ずーと好いお天気が続いている。 
  昼前にバスに乗った。
  半分位の乗客は、殆どが座席に座り、車内はゆったりとしていた。
  道路も混んでいない。
  もうすぐすぐ駅に着くという所に、小さな信号がある。
  横断をする人と、信号待ちの車とで、そこだけ混んでいた。

  前の方で、重い物を落としたような音がし、少しざわついた。
  バスがゆっくり、歩道の方に移動した。
  のろのろと横切った軽自動車に、ぶつけた様だ。
  若い運転手が、「運賃は結構ですから、此方で降りて下さい」と
  済まなそうに言った。
  乗客は皆、「あーぶつかったの」と気軽に降り始めた。
  私も皆の後についてタラップを降りようとした。
  直ぐ後ろの年配の男が、「だから駄目なんだよ、立川バスは」と、
  捨て台詞を吐いた。
  私は吃驚して振り向いた。
  私の気持ちとは、かけ離れた言葉だった。
  「何を言ってるんですか?」と、思わず声が出た。
  その剣幕に、降りた男は急いで反対の方に行ってしまった。
  運転手だって間違って起こしてしまった事だろう、
  それを非難する等考えられなかった。

  駅に歩きながら、怒りが段々膨らんできた。
  あの場面がもう一度あったら、「人が困った時、その言葉はないで
  しょ?」と、大きな声で言ってやりたいと。
  運転手には、「大丈夫?」とも声を掛けたかった。

  テレビで見たが、足を組んだ女性の膝を、新聞紙で叩く男がいた。
  女性は何度も足を組む。その度に叩く男。

  随分前に、こんな場面を見た事がある。
  昼間だったが、地下鉄は空いていた。
  斜め前の席に、派手な格好をした女性が大きく足を組み、
  気取った様子で周りを見回していた。
  駅に着いた時、私の隣に座っていた中年の男が、思いっきり膝を
  叩いて降りて行った。
  席から半分落ちかけた女性は、何が起きたのか分からない様だった。
  発車した後は、頬がプーと膨れていた。
  少し痛快にも感じたが、降りながら叩くのは卑怯だなとも思った。
  相手が反撃をしないと判っている時だけ、行動を起こすなんて嫌な男だ。
 
    
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