つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 谷川岳の珈琲(2)

2019-06-23 07:48:37 | エッセイ

エッセイ 谷川岳の珈琲(2)  課題【欲しい・飽きる】 2017/9/2 

土が雨に流された道は、ごつごつして歩きにくい。
沢の水が音を立てて流れている。

一寸した平地に出た所で、安藤さんは小さなテントを立てた。
そしてザックの中からコンロを出し、汲んだ沢水でお湯を沸かし、約束の「谷川岳の珈琲」を作り、カップに取り分けた。

テントの中は狭く、寄り添ってしゃがんだ。
帽子をとると、三人とも濡れた髪が顔に張りつき、化粧の落ちた顔が可笑しいと、長い時間笑った覚えがある。

帰り道は、だだっ広いまっすぐな道路が続き、たまに材木を積んだトラックが通る、誰とも会わない道だった。
そういう所だから、勿論トイレは無い。
林さんは我慢が出来ないと言った。
隠れる窪みも見当たらない。仕方がないので道の端に傘を広げて用を済ませた。

私の番になり同じようにしたが、二人に見られてるような気がしてうまくいかない。
トラックが来ることも心配だった。
「じゃあ三人の傘で囲ってあげる、車が見えたらすぐに知らせるから」と言って先に歩いて行った。

山では、男性が用を足すために列を離れる時は、「雉を打ちにいく」、女性は「お花を摘みにいく」と言うのだと安藤さんは教えてくれた。

彼女は駅までの道を歩きながら、山岳会のこと、次に行く山の事、仲間内のあれこれや、費用の事などを話した。
私と林さんは「くたびれないの」「寒くはないの」、「お風呂はどうするの」などと、たわいのない質問をした。

以前は囁くように話し、すぐに弱気になっていた安藤さんとは見違えるようだった。
すっかり、何か、自信を掴んだらしかった。
私と林さんは相も変わらず、仲間内だけで、強気なことを言っているだけのような気がした。

 

          

 

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風と共に去りぬ

2019-06-04 14:00:32 | つぶやき・・

 月曜日、「午前10時の映画」を観てきました。
 今週は「風と共に去りぬ」全部でした。
 10時から午後2時まで途中7分間の休憩が入り、4時間ぶっとおしです。
 観に行くのにかなり勇気が入りましたが、大丈夫でした。
 お茶、サンドウイッチ、ひざ掛け、下着を1枚多くして万全に。
 100均で売っているスリッパがあるともっと良かった。

 先日BSで放映していたのを録画をして観ていたのですが、何か物足りなかったので・・・。
 今度は原作をもう一度読みたいと思っています。

 女性が持っている感情がぜ~んぶ「わかる」何度見ても面白いですね。

 

 

 

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エッセイ 谷川岳の珈琲(1)

2019-06-01 09:44:54 | エッセイ

エッセイ 谷川岳の珈琲(1) 課題【切符・証明書】 2017・9・8

若い頃、いつも集まっていた友人達と、近くの山へ行くことが多かった。
その中の一人、安藤さんは背が高く、おしゃれな気取り屋さんだった。
体力はありそうなのに、すぐに弱気なことを言う。
山道が長く続き、足元が危なっかしい時など、皆も我慢しているのにそれを言うから、途端に「弱虫ね」となる。
「私は銀座で生まれたの、こんな所は無理よ」
「育った所は違うでしょう」
その後アテネフランセに通い、通訳になると言って会社を辞めた。

一年ほどしてから皆で会った。見違えるように体格ががっちりとして、日焼けしている。
私たちはどこか「フランス」的な雰囲気を予想していたから驚いた。
通訳はどうしたのかと聞くと、「無理」、後は何にも聞かないでと言うように強い口調で言った。
その代り新宿の山岳会に入って登山をしていると言う。
私たちは行ったこともない、遠くの有名な山を縦走したとか、雪山にビバークする等と、歯切れよくしゃべった。

「今度一緒に谷川岳に行こうよ、沢の水で入れた美味しい珈琲を飲ませてあげる」谷川岳とは腰が引けたが、今迄大きな顔をした手前、林さんと私が行くことになった。

その日は天気が悪く、雨と風が吹いていた。
安藤さんは大きなザックを背負ってきた。
上越線の土合駅だったか長い駅の階段を上り、改札口で「東京からです」といって切符を出した。
又長い道を歩いて山に登り始めた。
樹木の生えてない岩山に取り付いたが、強い風が下からも煽る。
背中でザックがぐらぐらと揺れる。
霧で何にも見えない。
不安がる私たちに「平気よ」と言いながら暫く登ったが、降りてきた男性グループに「やめた方がいい」と言われ、何か話をしていたが、諦めたのか下ることした。

本降りになった沢道を、それぞれが黙って歩いた。

 
               

 

            

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