情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

電波監理審議会に放送の不偏不党に関する調査権限を与えるのは先走りでは?

2010-04-20 05:58:05 | メディア(知るための手段のあり方)
 今回の放送法改正案に、電波監理審議会に放送の不偏不党に関する調査権限を与える条項が盛り込まれていることを、先日、ある人に教えてもらった。総務省のサイトで確認すると、確かに、そのような条項が盛り込まれている。しかし、不偏不党に関する調査を行う権限を与えると、特定の番組、特定の放送局について、偏向しているという判断を下しかねない。電波監理審議会が政府から独立したものと様変わりするのであれば、そのような調査権限を与えることもありうるかもしれないが、現状では、政府が恣意的にこの権限を利用する可能性があり、賛成できない。そもそも、総務省は、民主主義の基礎となるインフラであるICT分野において、国民の権利保障等の在り方について検討するため、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」を開催しており、その中で、表現の自由の砦をいかに設けるかを検討することになっているはずだ。そこでの議論を無駄にするような今回の放送法改正には問題があるというほかない。

◆改正法案:http://www.soumu.go.jp/main_content/000058204.pdf

 新しい条項は、


 一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障することに関する重要事項

 二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項

 三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることに関する重要事項

の3点について、電波監理審議会が自ら調査審議し、必要とみられる事項を総務大臣に建議することができるとしている(180条1項)。

 そして、そのために、同審議会は関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明などの協力を求めることができるとしている(180条2項)。


 表面上は、表現の自由を確保する方向での改正のように思われるが、NHKの番組改変事件のことを思い起こせば、ここで使われている「不偏不党」という言葉が恣意的に利用された場合に表現の自由が侵害される危険があることが分かると思う。

 そして、恣意的な利用を防ぐためには、少なくとも電波監理審議会の独立性が担保されなければならないが、選任方法などを含め、独立性を担保する改正は盛り込まれていないようだ。

 どうも、総務省の官僚は、電波監理審議会が、資料の提出、意見の開陳、説明などの協力を求めることができる先は、関係行政機関の長だから、直接、放送業者などの自由を制約するものではないといっているらしい。

 しかし、電波監理審議会から求められた関係行政機関が、事実上、放送局やプロバイダーに資料提出を求めたら、放送局などは拒めるのだろうか? そうは思わない。
 そもそも、175条には、【総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、放送事業者、基幹放送局提供事業者、有料放送管理事業者又は認定放送持株会社に対しその業務に関し資料の提出を求めることができる。】という規定もおかれようとしているのだ。

 もしかしたら、原口大臣の行政をチェックする機関をつくりたい、という「思い」が先走ったのかもしれないが、自民党がこのような改正をしようとしたら、胡散臭さを感じたに違いないし、そうだとすれば、民主党が改正しようとしているからかまわない、なんて言えるはずもない。

 そもそも、この点については、通信・放送の総合的な法体系の在り方に関する審議会でも議論をされていないはずだ。いったい、だれが何を根拠にこんなものを押し込んだのか?

 すでに閣議決定もされているようだが、議会で十分に検討し、この点について修正が加えられることを期待したい。

 しかし、官僚は、、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」の下記メンバーをピエロにしようとしているのだろうか?


上杉 隆(うえすぎ たかし)ジャーナリスト
宇賀 克也(うが かつや)東京大学大学院法学政治学研究科教授
後 房雄(うしろ ふさお)名古屋大学大学院法学研究科教授
音 好宏(おと よしひろ)上智大学文学部新聞学科教授
木原 くみこ(きはら くみこ)株式会社らむれす(三角山放送局)代表取締役会長
楠 茂樹(くすのき しげき)上智大学法学部法律学科准教授
工藤 泰志(くどう やすし)認定NPO法人 言論NPO代表
黒岩 祐治(くろいわ ゆうじ)ジャーナリスト
郷原 信郎(ごうはら のぶお)名城大学教授・コンプライアンス研究センター長、弁護士
五代 利矢子(ごだい りやこ)評論家
児玉 平生(こだま ひらお)毎日新聞社論説委員
重延 浩(しげのぶ ゆたか)株式会社テレビマンユニオン代表取締役会長・CEO
宍戸 常寿(ししど じょうじ)一橋大学大学院法学研究科准教授
中村 伊知哉(なかむら いちや)慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
根岸 哲(ねぎし あきら)甲南大学法科大学院教授
長谷部 恭男(はせべ やすお)東京大学法学部教授
服部 孝章(はっとり たかあき)立教大学社会学部教授
羽石 保(はねいし たもつ)中日新聞社論説委員
浜井 浩一(はまい こういち)龍谷大学大学院法務研究科教授
濱田 純一(はまだ じゅんいち)東京大学総長
深尾 昌峰(ふかお まさたか)特定非営利活動法人きょうとNPOセンター常務理事・事務局長
堀 義貴(ほり よしたか)株式会社ホリプロ代表取締役会長兼社長
丸山 淳一(まるやま じゅんいち)読売新聞東京本社論説委員

 


【ツイッターアカウント】yamebun

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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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