その1(←クリック)から続く
■■引用開始■■
取調べに関する規則と自白
16.委員会は、とりわけ、未決拘禁に対する効果的な司法的統制の欠如と、無罪判決に対して、有罪判決の数が非常に極端に多いことに照らし、刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さに深刻な懸念を有する。委員会は、警察拘禁中の被拘禁者に対する適切な取調べの実施を裏付ける手段がないこと、とりわけ取調べ持続時間に対する厳格な制限がなく、すべての取調べにおいて弁護人の立会いが必要的とされていないことに懸念を有する。加えて、委員会は、国内法のもとで、条約第15条に違反して、条約に適合しない取調べの結果なされた任意性のある自白が裁判所において許容されうることに懸念を有する。
締約国は、警察拘禁ないし代用監獄における被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べ立会いといった方法により体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。加えて、締約国は、取調べ時間について、違反した場合の適切な制裁を含む厳格な規則を速やかに採用すべきである。締約国は、条約第15条に完全に合致するよう、刑事訴訟法を改正すべきである。締約国は、委員会に対し、強制、拷問もしくは脅迫、あるいは長期の抑留もしくは拘禁の後になされ、証拠として許容されなかった自白の数に関する情報を提供すべきである。
刑事拘禁施設における拘禁状態
17. 委員会は、過剰収容を含む刑事拘禁施設の一般的な拘禁状態に懸念を有する。革手錠の廃止を歓迎する一方で、「第二種手錠」が、懲罰で、不適切に用いられている申立があることについても、懸念をもって留意する。委員会は、刑事施設制度のなかに独立した医療スタッフが不足していること、被収容者に対する医療的援助が著しく遅滞していることについて懸念を有する。
締約国は、拘禁場所における状態の向上のために、また、国際的な最低基準に従って、実効的措置をとるべきである。とくに現在の過剰収容について措置をとるべきである。締約国は、拘束具について厳格な監視を確保し、とくにそれが懲罰として用いられることを防ぐために措置をとるべきである。さらに、締約国は、適切で、独立した、かつ迅速な医療的援助がすべての被収容者にあらゆる時に施されるよう確保すべきである。締約国は、医療設備やスタッフを厚生労働省のもとにおくことを検討すべきである。
昼夜間独居処遇の使用
18. 委員会は、2005年に成立した受刑者処遇法が昼夜間独居処遇の使用を制限する規定を設けているにもかかわらず、長期にわたる昼夜間独居処遇が継続して用いられているとの訴えについて深い懸念を有する。委員会は、特に次の点について懸念を有する。
a) 3ヶ月後の更新に制限がないというように、事実上、昼夜間独居処遇の期間に制限がないこと。
b) 10年を超えて独居とされている被拘禁者の人数。一つの例では42年を超えている。
c) 昼夜間独居処遇が懲罰として使用されているとの訴えがあること。
d) 昼夜間独居処遇とされている被収容者に対して、精神障害について不適切なスクリーニングしかなされていないこと。
e) 昼夜間独居処遇を課す決定に対して、通常の処遇に戻すための効果的な手続きの不足。
f) 昼夜間独居処遇の必要性を決定する際の基準の欠如。
締約国は、国際的な最低基準に従って、昼夜間独居処遇が限定された期間の例外的な措置となるように現在の法制度を改正するべきである。締約国は長期にわたる昼夜間独居処遇を受けている全ての事例について、当該拘禁が条約に反すると考えられる場合には、これらの者を(この状態から)解放するという観点から、心理学的に、及び、精神医学な評価に基づいて、組織的な(systematically)調査を行うことを検討するべきである。
死刑
19.最近の立法が死刑確定者の面会及び通信の権利を拡大したことに注目しつつも、委員会は、死刑を言い渡された人々に関する国内法における多くの条項が、拷問あるいは虐待に相当し得るものであることに深い懸念を有する。とりわけ、
a) 確定判決の言渡し後、独居拘禁が原則とされ、死刑確定後の長さをみれば、いくつかの事例では30年を超えていること、
b) 死刑確定者とその家族のプライバシー尊重のためと主張されている、不必要な秘密主義と処刑の時期に関する恣意性。とりわけ委員会は、死刑確定者が自らの死刑執行が予定されている時刻のわずか数時間前に執行の告知を受けるため、死刑確定者とその家族が、常に処刑の日にちが不明であることによる精神的緊張を強いられることを遺憾とする。
締約国は、死刑確定者の拘禁状態が国際的な最低基準に合致するものとなるよう、改善のためのあらゆる必要な手段をとるべきである。
20.委員会は、死刑確定者の法的保障措置の享受に対して課された制限、とりわけ以下の点に関して深刻な懸念を有する。
a) 再審請求中であっても、弁護人と秘密接見をすることが不可能である点を含めて、弁護人との秘密交通に関して死刑確定者に課せられた制限、秘密交通の代替手段の欠如、及び確定判決後の国選弁護人へのアクセスの欠如
b) 死刑事件における必要的上訴制度の欠如
c) 再審手続ないし恩赦の申請が刑の執行停止事由ではないという事実
d) 精神障害の可能性のある死刑確定者を識別するための審査の仕組みが存在しないこと
e) 過去30年間において死刑が減刑された事例が存在しないという事実
締約国は、死刑の執行をすみやかに停止し、かつ、死刑を減刑するための措置を考慮すべきであり、恩赦措置の可能性を含む手続的な改革を行うべきである。すべての死刑事件において、上訴権は必要的とされるべきである。さらに、締約国は、死刑の実施が遅延した場合には死刑を減刑し得ることを確実に法律で規定すべきである。締約国は、確実に、すべての死刑確定者が、条約に規定された保護を与えられるようにすべきである。
迅速かつ公平な調査、不服申立ての権利
20-2. 委員会は、以下の事項に懸念を表する。
a) 警察留置場における実効的な不服申立制度の不足。刑事被収容者処遇法が、そうした責務を有する独立機関を創設しなかったことは残念である。委員会は、2007年6月に設置される留置施設視察委員会に関する情報が不足していることに留意する。
b) 刑事施設視察委員会に、拷問等に関する調査について充分な権限が不足していること。
c) 法務省の職員が事務局を務めていることによって、刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会の独立性が不十分であること、また、被収容者及び職員にインタビューできず、またあらゆる関連文書に直接アクセスできないことから直接的に事案を調査する権限が限られていること。
d) 不服申立てをする権利に法的制限があること、また不服申立てをしようとする際に弁護士による援助を受けることが不可能であること。
e) 不服申立てを行ったことによって、また、賠償請求にかかわる時効によって却下された訴訟を行ったことによる不利益的影響を受けたとの報告があること。
f) 受理した申立数、着手されまた完了された調査の数、さらにその結果の数について情報の不足、これには侵害者の数とその者が受けた判決に関する情報も含む。
締約国は、警察留置場または刑事拘禁施設の双方における被収容者からの拷問等の申立てすべてについて、迅速、公正で、かつ実効的な調査を行う独立メカニズムを設置すべきである。締約国は、被収容者が不服申立ての権利を充分に行使できるように確保するために、拷問等行為についての時効の撤廃、不服申立てをするための法的援助の利用の確保、証人に対する脅迫からの保護措置の設置、及び賠償請求の権利を制限するあらゆる規定の見直しなどを含む、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、法執行官によって行われたことが疑われる拷問等に関する申立てについて、犯罪種別、エスニシティ、年齢、性別ごとの詳細な統計データを、また、関連する調査、起訴、刑罰、または懲戒処分についての詳細な統計データを提供すべきである。
人権教育及び研修
21.委員会は、条約に違反する尋問手続を記した取調官のための研修マニュアルが存在するとの報告に注目する。さらに、委員会は、人権教育、特に女性及び子どもの特別な人権についての教育が、組織的には、刑事拘禁施設の職員に対して提供されているだけで、警察留置場の職員、取調官、裁判官及び入管収容施設の保安担当職員に対する教育カリキュラムには十分に含まれていないことに懸念を表する。
締約国は、法執行官、特に取調官に対する教育カリキュラムに関するあらゆる素材が公にされるよう確保すべきである。さらに、裁判官や入管職員を含むあらゆる種類の法執行官は、特に、拷問、子ども及び女性の権利に焦点を当てた、自身の職務における人権の実現について定期的に訓練を受けるべきである。
賠償及びリハビリテーション
22.委員会は、人権侵害の被害者が救済及び十分な賠償を得るにあたって直面している困難があるとの報告に懸念を表する。委員会は、また、時効や移民に対する相互主義の原則など賠償の権利に対する制限についても懸念を表する。委員会は、拷問又は虐待の被害者が求め、また得ることができた賠償に関する情報が不足していることについて遺憾を有する。
締約国は、拷問又は虐待のすべての被害者が、賠償及びリハビリテーションを含む救済の権利を十分に行使することができるよう確保するために、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、国内においてリハビリテーション・サービスを設置するための措置をとるべきである。締約国は、委員会に対し、被害者に対して提供されたあらゆる賠償又はリハビリテーションに関する情報を提供すべきである。
23. 委員会は、第2次世界大戦中の日本軍性奴隷のサバイバーを含む性暴力被害者に対する救済措置が不充分であり、性暴力及びジェンダーに基づく拷問等禁止条約違反を防ぐために有効な教育的その他の措置がとられていないことに懸念を表明する。「癒しがたい心の傷」によって苦しめられていると、締約国の代表が事実として認めている戦時中の性的虐待のサバイバーは、締約国が公式に事実を否認し続け、真実を隠匿あるいは公開せず、虐待の刑事上の責任者を訴追せず、適切なリハビリテーションを提供しないことによって、継続する苦痛と再トラウマ化を経験している。
委員会は、教育(第10条)と救済措置(第14条)がともに、この条約において締約国に課されている義務のさらなる違反行為を防ぐための手段であると考える。締約国によって公式に否認が繰り返され、訴追されず、適切なリハビリテーションが提供されていないことはすべて、拷問等禁止条約において締約国に課されている、教育及びリハビリテーション措置を通じて防止することも含めて、拷問と虐待を防止するという義務に違反することにつながっている。委員会は締約国に、性及びジェンダーに基づく暴力の根本原因である差別に取り組む教育を提供し、また刑事免責を防ぐ措置を含め、被害者に対するリハビリテーション措置をとることを勧告する。
ジェンダーに基づく暴力と人身売買
24. 委員会は、法執行機関の職員による性暴力を含む、ジェンダーに基づく暴力及び拘留中の女性と子どもに対する虐待についての申し立てが相次いでいることに懸念を表明する。委員会はまた、締約国のレイプに関する法規の範囲が、男女間の生殖器による性交渉のみに適用され、男性被害者に対するレイプ等、その他の形態による性的虐待を除外する限定的なものであることに懸念を表明する。加えて委員会は、締約国において、国境を超えた人身売買が、政府によって発行される興行ビザの目的外使用によって促進され、そのうえ確認された被害者への支援措置が不適切なままであるために、人身売買の被害者が不法移住者として取り扱われ、救済措置をとられることなく国外に強制送還されるなど、依然として深刻な問題となっていることに懸念を表明する。委員会はまた、駐留外国軍を含む軍関係者による女性及び少女に対する暴力を防止しまた加害者を訴追するための効果的な施策が不足していることに懸念を表明する。
締約国は、ドメスティック・バイオレンス及びジェンダーに基づく暴力を含む、性暴力及び女性に対する暴力を根絶するために防止措置を導入し、また責任者の告訴を前提として、拷問あるいは虐待に関するあらゆる申し立てについて早急かつ公平な調査を実施すべきである。委員会は締約国に対し、興行ビザの利用が人身売買を促進しないよう利用を制限すること、十分に資源を配分すること、関連する刑法の適用を積極的に追求することなど、人身売買対策の強化を要請する。また締約国が、法執行官及び司法関係者が被害者の権利とニーズに敏感になることを確保するための研修を実施すること、警察に専門部署を設置して被害者のためのよりよい保護と適切なケア、とりわけ安全な住居、シェルター、心理社会的な支援へのアクセスを提供することを推奨する。締約国は、駐留外国軍によるものも含め、あらゆる被害者が司法裁判所に救済措置を申し立てできるよう措置をとらなければならない。
精神障害を持つ個人
25.委員会は、私立の精神病院で働く精神科指定医が精神的疾患を持つ個人に対し拘禁命令を出していること、及び拘禁命令、私立精神病院の管理・経営そして患者からの拷問もしくは虐待行為に関する不服への不十分な司法的コントロールに懸念を表明する。
締約国は公立及び私立精神病院における拘禁手続きについて、実効的かつ徹底した司法コントロールを確保するために必要なあらゆる措置を採るべきである。
26. 委員会は、締約国に対し、条約22条に基づく受諾宣言を検討し、よって、委員会が通報を受ける資格を有することを認め、通報を検討することができるようにすることを勧奨し、また同時に条約の選択議定書の批准も検討するよう奨励する。
27. 委員会は、締約国が国際刑事裁判所のローマ規程の加盟国となることを検討するよう奨励する。
28. 締約国は 委員会に提出された報告書、委員会による結論及び勧告が、適切な言語で、公式のウェブサイトや報道機関、NGOを通じて、広く公表することを奨励されている。
29. 委員会は,締約国に対し,国際人権条約機関によって最近,勧告された「報告に関する調和的ガイドライン内の共通重要文書(the Common Core Document in the Harmonized Guidelines on Reporting)」(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)の要求に沿って重要な文書を提出することを勧める。
30. 委員会は、締約国に対し、本文書パラグラフ14,15,16及び24に含まれる委員会による勧告に対する返答に関して1年以内に情報を提供することを求める。
31. 締約国には、2011年6月30日までに第2回報告書を提出することが勧められる。
■■引用終了■■
写真はこちら(←クリック)から。死刑廃止に向け活動する田鎖弁護士。
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。なお、安倍辞任までの間、字数が許す限り、タイトルに安倍辞任要求を盛り込むようにしています(ここ←参照下さい)。
■■引用開始■■
取調べに関する規則と自白
16.委員会は、とりわけ、未決拘禁に対する効果的な司法的統制の欠如と、無罪判決に対して、有罪判決の数が非常に極端に多いことに照らし、刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さに深刻な懸念を有する。委員会は、警察拘禁中の被拘禁者に対する適切な取調べの実施を裏付ける手段がないこと、とりわけ取調べ持続時間に対する厳格な制限がなく、すべての取調べにおいて弁護人の立会いが必要的とされていないことに懸念を有する。加えて、委員会は、国内法のもとで、条約第15条に違反して、条約に適合しない取調べの結果なされた任意性のある自白が裁判所において許容されうることに懸念を有する。
締約国は、警察拘禁ないし代用監獄における被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べ立会いといった方法により体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。加えて、締約国は、取調べ時間について、違反した場合の適切な制裁を含む厳格な規則を速やかに採用すべきである。締約国は、条約第15条に完全に合致するよう、刑事訴訟法を改正すべきである。締約国は、委員会に対し、強制、拷問もしくは脅迫、あるいは長期の抑留もしくは拘禁の後になされ、証拠として許容されなかった自白の数に関する情報を提供すべきである。
刑事拘禁施設における拘禁状態
17. 委員会は、過剰収容を含む刑事拘禁施設の一般的な拘禁状態に懸念を有する。革手錠の廃止を歓迎する一方で、「第二種手錠」が、懲罰で、不適切に用いられている申立があることについても、懸念をもって留意する。委員会は、刑事施設制度のなかに独立した医療スタッフが不足していること、被収容者に対する医療的援助が著しく遅滞していることについて懸念を有する。
締約国は、拘禁場所における状態の向上のために、また、国際的な最低基準に従って、実効的措置をとるべきである。とくに現在の過剰収容について措置をとるべきである。締約国は、拘束具について厳格な監視を確保し、とくにそれが懲罰として用いられることを防ぐために措置をとるべきである。さらに、締約国は、適切で、独立した、かつ迅速な医療的援助がすべての被収容者にあらゆる時に施されるよう確保すべきである。締約国は、医療設備やスタッフを厚生労働省のもとにおくことを検討すべきである。
昼夜間独居処遇の使用
18. 委員会は、2005年に成立した受刑者処遇法が昼夜間独居処遇の使用を制限する規定を設けているにもかかわらず、長期にわたる昼夜間独居処遇が継続して用いられているとの訴えについて深い懸念を有する。委員会は、特に次の点について懸念を有する。
a) 3ヶ月後の更新に制限がないというように、事実上、昼夜間独居処遇の期間に制限がないこと。
b) 10年を超えて独居とされている被拘禁者の人数。一つの例では42年を超えている。
c) 昼夜間独居処遇が懲罰として使用されているとの訴えがあること。
d) 昼夜間独居処遇とされている被収容者に対して、精神障害について不適切なスクリーニングしかなされていないこと。
e) 昼夜間独居処遇を課す決定に対して、通常の処遇に戻すための効果的な手続きの不足。
f) 昼夜間独居処遇の必要性を決定する際の基準の欠如。
締約国は、国際的な最低基準に従って、昼夜間独居処遇が限定された期間の例外的な措置となるように現在の法制度を改正するべきである。締約国は長期にわたる昼夜間独居処遇を受けている全ての事例について、当該拘禁が条約に反すると考えられる場合には、これらの者を(この状態から)解放するという観点から、心理学的に、及び、精神医学な評価に基づいて、組織的な(systematically)調査を行うことを検討するべきである。
死刑
19.最近の立法が死刑確定者の面会及び通信の権利を拡大したことに注目しつつも、委員会は、死刑を言い渡された人々に関する国内法における多くの条項が、拷問あるいは虐待に相当し得るものであることに深い懸念を有する。とりわけ、
a) 確定判決の言渡し後、独居拘禁が原則とされ、死刑確定後の長さをみれば、いくつかの事例では30年を超えていること、
b) 死刑確定者とその家族のプライバシー尊重のためと主張されている、不必要な秘密主義と処刑の時期に関する恣意性。とりわけ委員会は、死刑確定者が自らの死刑執行が予定されている時刻のわずか数時間前に執行の告知を受けるため、死刑確定者とその家族が、常に処刑の日にちが不明であることによる精神的緊張を強いられることを遺憾とする。
締約国は、死刑確定者の拘禁状態が国際的な最低基準に合致するものとなるよう、改善のためのあらゆる必要な手段をとるべきである。
20.委員会は、死刑確定者の法的保障措置の享受に対して課された制限、とりわけ以下の点に関して深刻な懸念を有する。
a) 再審請求中であっても、弁護人と秘密接見をすることが不可能である点を含めて、弁護人との秘密交通に関して死刑確定者に課せられた制限、秘密交通の代替手段の欠如、及び確定判決後の国選弁護人へのアクセスの欠如
b) 死刑事件における必要的上訴制度の欠如
c) 再審手続ないし恩赦の申請が刑の執行停止事由ではないという事実
d) 精神障害の可能性のある死刑確定者を識別するための審査の仕組みが存在しないこと
e) 過去30年間において死刑が減刑された事例が存在しないという事実
締約国は、死刑の執行をすみやかに停止し、かつ、死刑を減刑するための措置を考慮すべきであり、恩赦措置の可能性を含む手続的な改革を行うべきである。すべての死刑事件において、上訴権は必要的とされるべきである。さらに、締約国は、死刑の実施が遅延した場合には死刑を減刑し得ることを確実に法律で規定すべきである。締約国は、確実に、すべての死刑確定者が、条約に規定された保護を与えられるようにすべきである。
迅速かつ公平な調査、不服申立ての権利
20-2. 委員会は、以下の事項に懸念を表する。
a) 警察留置場における実効的な不服申立制度の不足。刑事被収容者処遇法が、そうした責務を有する独立機関を創設しなかったことは残念である。委員会は、2007年6月に設置される留置施設視察委員会に関する情報が不足していることに留意する。
b) 刑事施設視察委員会に、拷問等に関する調査について充分な権限が不足していること。
c) 法務省の職員が事務局を務めていることによって、刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会の独立性が不十分であること、また、被収容者及び職員にインタビューできず、またあらゆる関連文書に直接アクセスできないことから直接的に事案を調査する権限が限られていること。
d) 不服申立てをする権利に法的制限があること、また不服申立てをしようとする際に弁護士による援助を受けることが不可能であること。
e) 不服申立てを行ったことによって、また、賠償請求にかかわる時効によって却下された訴訟を行ったことによる不利益的影響を受けたとの報告があること。
f) 受理した申立数、着手されまた完了された調査の数、さらにその結果の数について情報の不足、これには侵害者の数とその者が受けた判決に関する情報も含む。
締約国は、警察留置場または刑事拘禁施設の双方における被収容者からの拷問等の申立てすべてについて、迅速、公正で、かつ実効的な調査を行う独立メカニズムを設置すべきである。締約国は、被収容者が不服申立ての権利を充分に行使できるように確保するために、拷問等行為についての時効の撤廃、不服申立てをするための法的援助の利用の確保、証人に対する脅迫からの保護措置の設置、及び賠償請求の権利を制限するあらゆる規定の見直しなどを含む、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、法執行官によって行われたことが疑われる拷問等に関する申立てについて、犯罪種別、エスニシティ、年齢、性別ごとの詳細な統計データを、また、関連する調査、起訴、刑罰、または懲戒処分についての詳細な統計データを提供すべきである。
人権教育及び研修
21.委員会は、条約に違反する尋問手続を記した取調官のための研修マニュアルが存在するとの報告に注目する。さらに、委員会は、人権教育、特に女性及び子どもの特別な人権についての教育が、組織的には、刑事拘禁施設の職員に対して提供されているだけで、警察留置場の職員、取調官、裁判官及び入管収容施設の保安担当職員に対する教育カリキュラムには十分に含まれていないことに懸念を表する。
締約国は、法執行官、特に取調官に対する教育カリキュラムに関するあらゆる素材が公にされるよう確保すべきである。さらに、裁判官や入管職員を含むあらゆる種類の法執行官は、特に、拷問、子ども及び女性の権利に焦点を当てた、自身の職務における人権の実現について定期的に訓練を受けるべきである。
賠償及びリハビリテーション
22.委員会は、人権侵害の被害者が救済及び十分な賠償を得るにあたって直面している困難があるとの報告に懸念を表する。委員会は、また、時効や移民に対する相互主義の原則など賠償の権利に対する制限についても懸念を表する。委員会は、拷問又は虐待の被害者が求め、また得ることができた賠償に関する情報が不足していることについて遺憾を有する。
締約国は、拷問又は虐待のすべての被害者が、賠償及びリハビリテーションを含む救済の権利を十分に行使することができるよう確保するために、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、国内においてリハビリテーション・サービスを設置するための措置をとるべきである。締約国は、委員会に対し、被害者に対して提供されたあらゆる賠償又はリハビリテーションに関する情報を提供すべきである。
23. 委員会は、第2次世界大戦中の日本軍性奴隷のサバイバーを含む性暴力被害者に対する救済措置が不充分であり、性暴力及びジェンダーに基づく拷問等禁止条約違反を防ぐために有効な教育的その他の措置がとられていないことに懸念を表明する。「癒しがたい心の傷」によって苦しめられていると、締約国の代表が事実として認めている戦時中の性的虐待のサバイバーは、締約国が公式に事実を否認し続け、真実を隠匿あるいは公開せず、虐待の刑事上の責任者を訴追せず、適切なリハビリテーションを提供しないことによって、継続する苦痛と再トラウマ化を経験している。
委員会は、教育(第10条)と救済措置(第14条)がともに、この条約において締約国に課されている義務のさらなる違反行為を防ぐための手段であると考える。締約国によって公式に否認が繰り返され、訴追されず、適切なリハビリテーションが提供されていないことはすべて、拷問等禁止条約において締約国に課されている、教育及びリハビリテーション措置を通じて防止することも含めて、拷問と虐待を防止するという義務に違反することにつながっている。委員会は締約国に、性及びジェンダーに基づく暴力の根本原因である差別に取り組む教育を提供し、また刑事免責を防ぐ措置を含め、被害者に対するリハビリテーション措置をとることを勧告する。
ジェンダーに基づく暴力と人身売買
24. 委員会は、法執行機関の職員による性暴力を含む、ジェンダーに基づく暴力及び拘留中の女性と子どもに対する虐待についての申し立てが相次いでいることに懸念を表明する。委員会はまた、締約国のレイプに関する法規の範囲が、男女間の生殖器による性交渉のみに適用され、男性被害者に対するレイプ等、その他の形態による性的虐待を除外する限定的なものであることに懸念を表明する。加えて委員会は、締約国において、国境を超えた人身売買が、政府によって発行される興行ビザの目的外使用によって促進され、そのうえ確認された被害者への支援措置が不適切なままであるために、人身売買の被害者が不法移住者として取り扱われ、救済措置をとられることなく国外に強制送還されるなど、依然として深刻な問題となっていることに懸念を表明する。委員会はまた、駐留外国軍を含む軍関係者による女性及び少女に対する暴力を防止しまた加害者を訴追するための効果的な施策が不足していることに懸念を表明する。
締約国は、ドメスティック・バイオレンス及びジェンダーに基づく暴力を含む、性暴力及び女性に対する暴力を根絶するために防止措置を導入し、また責任者の告訴を前提として、拷問あるいは虐待に関するあらゆる申し立てについて早急かつ公平な調査を実施すべきである。委員会は締約国に対し、興行ビザの利用が人身売買を促進しないよう利用を制限すること、十分に資源を配分すること、関連する刑法の適用を積極的に追求することなど、人身売買対策の強化を要請する。また締約国が、法執行官及び司法関係者が被害者の権利とニーズに敏感になることを確保するための研修を実施すること、警察に専門部署を設置して被害者のためのよりよい保護と適切なケア、とりわけ安全な住居、シェルター、心理社会的な支援へのアクセスを提供することを推奨する。締約国は、駐留外国軍によるものも含め、あらゆる被害者が司法裁判所に救済措置を申し立てできるよう措置をとらなければならない。
精神障害を持つ個人
25.委員会は、私立の精神病院で働く精神科指定医が精神的疾患を持つ個人に対し拘禁命令を出していること、及び拘禁命令、私立精神病院の管理・経営そして患者からの拷問もしくは虐待行為に関する不服への不十分な司法的コントロールに懸念を表明する。
締約国は公立及び私立精神病院における拘禁手続きについて、実効的かつ徹底した司法コントロールを確保するために必要なあらゆる措置を採るべきである。
26. 委員会は、締約国に対し、条約22条に基づく受諾宣言を検討し、よって、委員会が通報を受ける資格を有することを認め、通報を検討することができるようにすることを勧奨し、また同時に条約の選択議定書の批准も検討するよう奨励する。
27. 委員会は、締約国が国際刑事裁判所のローマ規程の加盟国となることを検討するよう奨励する。
28. 締約国は 委員会に提出された報告書、委員会による結論及び勧告が、適切な言語で、公式のウェブサイトや報道機関、NGOを通じて、広く公表することを奨励されている。
29. 委員会は,締約国に対し,国際人権条約機関によって最近,勧告された「報告に関する調和的ガイドライン内の共通重要文書(the Common Core Document in the Harmonized Guidelines on Reporting)」(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)の要求に沿って重要な文書を提出することを勧める。
30. 委員会は、締約国に対し、本文書パラグラフ14,15,16及び24に含まれる委員会による勧告に対する返答に関して1年以内に情報を提供することを求める。
31. 締約国には、2011年6月30日までに第2回報告書を提出することが勧められる。
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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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