情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

国民投票法理由に戦争展の後援拒否した野田市と附帯決議

2007-08-19 14:27:32 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 
 
 少し古い話だが、【千葉県野田市で市民団体が18、19日に開催予定の「平和のための戦争展」をめぐり、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の「公務員による地位利用」にあたりかねないことを理由に、野田市が後援要請を断っていたことが分かった】という朝日新聞の記事には触れざるを得ない。


 まず、事実経過は、次のとおりらしい。

【戦争展は、野田・九条の会や同市被爆者の会などでつくる実行委員会が主催し、市中央公民館で今年初めて開く。広島・長崎の原爆写真や野田と戦争とのかかわりなどについて展示。野田・九条の会も訴えをアピールするという。
 後援申請を受けた野田市は7月、後援しないことを決め、実行委に文書で通知した。理由は(1)9条改正反対を訴える内容が含まれ、政治的傾向が顕著(2)発議可能となる3年後に国会で9条改正が発議されるのは必至で、どのような考えに基づく行事でも後援するのは公務員の地位利用につながる、というものだった】

 では、野田市がいう公務員の地位利用に関する条文(日本国憲法の改正手続に関する法律)を確認してみよう。

【第百三条 国若しくは地方公共団体の公務員若しくは特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。第百十一条において同じ。)若しくは特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。第百十一条において同じ。)の役員若しくは職員又は公職選挙法第百三十六条の二第一項第二号に規定する公庫の役職員は、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない】

これだけ読んでもよく分からない。そもそも、国民投票運動とは何なのか?

答えは101条にある。

【第百一条 投票管理者、開票管理者、国民投票分会長及び国民投票長は、在職中、その関係区域内において、憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為(以下「国民投票運動」という。)をすることができない】

つまり、国民投票運動とは、「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」なのだ。

しかし、まだ、分からない。「憲法改正案」とは何のか?

この答えは、14条にある。

【第十四条 協議会は、次に掲げる事務を行う。
 一 国会の発議に係る日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)及びその要旨並びに憲法改正案に係る新旧対照表その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明並びに憲法改正案を発議するに当たって出された賛成意見及び反対意見を掲載した国民投票公報の原稿の作成】

つまり、憲法改正案とは、「国会の発議に係る日本国憲法の改正案」のことなのだ。


これですっきりした「国民投票運動」とは、「国会の発議に係る日本国憲法の改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」というわけだ。

ということは、現時点では、「国会の発議に係る日本国憲法の改正案」というものは、存在していないのだから、国民投票運動をしようと思ってもしようがないわけだ。

野田市の回答について、主催者側は、【「憲法改正案が発議されてもいないのに、地位利用を理由にするのはおかしい」と納得していない。】というが、もっともなことだ。

そもそも、この法案は、成立するに際して次のような附帯決議が可決されている。

【一、公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の規制については、意見表明の自由、学問の自由、教育の自由等を侵害することとならないよう特に慎重な運用を図るとともに、禁止される行為と許容される行為を明確化するなど、その基準と表現を検討すること。】

野田市の判断は、この附帯決議が心配したとおり、意見表明の自由を侵害するものとなっている。

もちろん、野田市がある行事を後援するかどうかは、野田市の判断だから、後援を強制することは出来ないが、少なくとも、「日本国憲法の改正手続に関する法律」の公務員の地位利用規程と関連して後援を断ることは、表現の自由の侵害を助長することになる。

なぜ、野田市が公務員の地位利用なるものを後援を断ったのか…。

条文をよく読まなかったのか、それともあえてこの条項を持ち出すことでほかの自治体や全国約400万公務員にプレッシャーをかけようという自民党の意向を反映したものなのか…。

いずれにせよ、法案成立前に批判されたとおり、公務員の地位利用に関する規定が表現の自由を侵害する事例が早くも出てきたのであり、憲法改正発議までに公務員の地位利用に関する規定は削除する必要があることが裏付けられたのではないだろうか。













★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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