情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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NHK受信料請求訴訟判決はマスメディアの怖さを分かっていない~年金に受信料流用疑惑も…

2009-07-28 23:44:34 | メディア(知るための手段のあり方)
 NHKから受信料の支払いを請求された男性二人に対する訴訟の判決が28日、下された。受信料を支払えという判決はわずか20頁、うち、裁判所の判断部分は8頁。受信料契約を解約するためには、テレビを破棄するほかなく、民放さえ見ることができなくなることから憲法21条の規定する知る権利に反するなどという主張に対して、「原告(NHK)の放送を受信することのできる受信機を廃止しない限り原告との放送受信契約の解約を禁止するというものにすぎず、民放のテレビ番組の視聴を妨げまたは原告のテレビ番組の視聴を強制するものではないから」違憲ではないなどと結論づけた。

 受信料の支払いをしないとテレビを持つことができず、ひいては民放を見ることすらできない、ってのはおかしいでしょう…という問いに答えているとは到底思われない。

 つまり、【原告(NHK)の放送を受信することのできる受信機を廃止しない限り原告との放送受信契約の解約を禁止する】ということは、【民放のテレビ番組の視聴を妨げ】ることと、イコールのように思われるのですが、どうでしょうか?

 今回の判決が十分な吟味をして結論を出したのならまだしも、上のような理由にならない理由、まさに結論だけの判断では、公共放送のあり方に関する訴訟の判決としてはまったく物足りない。

 折しも、NHKの受信料がNHKOBの年金に拠出されていることが報道された(週間ダイヤモンド http://diamond.jp/series/inside_e/09_07_25_001/)。

【日本放送協会(NHK)が、本来、積み立てから給付すべき退職者の企業年金の一部を、受信料収入から補填して給付していることが、関係者の話で明らかになった。
 関係者によると、その額は2007年度が約100億円、08年度が約120億円に上っているという。
 勤続年数などで企業年金の支給額は異なるが、NHKによれば平均支給額は月12万円程度と民間に比べて高い。つまり、退職者に対する高待遇を維持するため、一部とはいえ「皆様の受信料」を使って尻ぬぐいしているのだ。】

 そう、NHKOBのために一時的に流用される受信料を支払わないとテレビを持つことができず、民放を見ることすらできない…。そんなのって単純に変だよね~。

 男性らはおそらく控訴するだろう。東京高裁は「皆様のNHK」の「年金に流用される受信料」についていかなる判断をするのだろうか…。

 もう少し付け加えると、戦時中、日本はマスコミが政府・軍によって統制され、勝てない戦争で多くの尊い命が失われた。マスコミが悪用されたとき、いかに恐ろしい力を発揮するか、ということに対する反省のもと、放送法がつくされたはずだった。しかし、肝心な「政府から独立した委員会」による放送行政が、電波監理委員会がつぶされたために、実行できなくなった。市民のための放送が、結局、政府のための放送となったのだ。

 判決を読むと、放送というものがいかなる影響を与えるのか、市民に受信料を支払わせることの意味は何か、いまのNHKのあり方は市民のためのメディアといえるのか…などについて真剣に考えたのかどうか、疑わしいと言わざるを得ない。

 判決は、「原告(NHK)は、広告主や国家はもちろん視聴者から(放送受信契約の相手方)からも一切の影響を受けず、自らの表現の自由を全うすることによって、『豊かで良い放送を行う義務』を実践することが求められているというべきで」と述べている。

 確かに、広告主や国家=政府からの独立は必須だろう。しかし、政府からの独立が実現していないにもかかわらず、視聴者からの独立を確保させてしまうのでは、結局、政府とNHKのためのNHKということになるだろう。 

 裁判官は、自らが書いた上の一文の意味をよく考え直してほしい。




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