情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「海兵隊は北朝鮮崩壊時の核除去のため」~毎日新聞はそれを信用したのか?

2010-04-02 05:45:10 | 有事法制関連
 昨日、第二次大戦における夜間戦闘機隊・飛行隊長美濃部正少佐の練習機による特攻反対表明を例にだして、正確な情報に基づく判断が必要であり、沖縄の基地問題についても、正確な情報を入手するべきだということについて書きました。

 偶然にもその日届いた毎日朝刊一面トップに、アメリカ太平洋海兵隊のキース・スタルダー司令官が防衛省幹部に対し、沖縄の海兵隊の役割について「南北の衝突より金正日体制の崩壊の可能性の方が高い。その時、北朝鮮の核兵器を速やかに除去するのが最重要任務だ」と伝えたとの記事が掲載された。
(http://mainichi.jp/select/world/news/20100401ddm001010008000c.html)

 確かにこれまでのような抽象的な「抑止力論」に比べれば、具体的な情報だといえる。

 しかし、この情報を毎日新聞がどこから入手したのか知らないが、

①本当にスタルダー司令官がそのようなことを話したのか

本当に話したとして、

②その発言は日本側の事前の要請に基づくものではないのか

③その発言は真実を伝えたのものではないのではないか=本音は別にあり、言い訳として述べただけただけではないか

という疑問を持たざるを得ない


 なぜなら、海兵隊が北朝鮮崩壊時に北朝鮮に乗り込んで核兵器の捜索に当たるためには、中国の了解が必要だ。そうしなければ、下手をしたら米中戦争が勃発しかねない。

 そもそも、中国はそれを了解するだろうか?という疑問が浮かぶ。

 もちろん、了解することもあるだろう。しかし、それには少し時間がかかる。崩壊した直後の数時間に海兵隊が乗り込むことなんてできないわけだ。中国と話し合って処理についてどう対処するかを決めた上で行動するからには、十分な時間が必要だ。それは数日以上かかるはずだ。よって、そういう理由で日本に海兵隊を置く必要があるとはいえない。


 もちろん、そのような話を米中政府が事前に協議しておく、ということもありうるだるう。しかし、そもそも、北朝鮮崩壊にはその兆候があるだろう。米国本土から海兵隊を送り込むだけの時間は十分にあるはずだ。

 記事には、韓国内での米韓共同演習で、核兵器などの撤去を目的とする米特殊部隊の移送についても練習されたということも書かれている。

 しかし、だからといって、日本に海兵隊を置く必要があるかどうかはまったく別の問題だ。

 もちろん、日本の安全保障上、そういう事態に備えて、海兵隊が日本にいた方が適切だという見解もありうるだろう。
 
 しかし、それは、日本の市民に十分な情報(北朝鮮の状況、海兵隊を駐屯させるために必要な費用、海兵隊がどのような行動を本当にしてくれるのか、など)が与えられたうえで、冷静に話し合ったうえで、判断されなければならない。

 思いやり予算をもらってハッピーな当事者である海兵隊の司令官が勝手に決められるような話ではない。自分の国の税金で沖縄に駐屯しているならまだしも、そうでないのだから、勝手に決めつけてもらっても困るわけだ。

 私は、この情報は、防衛省幹部のでっち上げもしくはうそと知りつつそのような言い訳を飲み込んで利用した、のどちらかである可能性が大きいと考えています。

 この日の毎日は、3面でも沖縄海兵隊の意義に関する論議を掲載しているが、そのなかの「なるほどドリ」という解説記事において、海兵隊のグアム移設後の人数について、米軍は実数は発表しないが4000人程度となるとの推測を掲載したうえ、

【ただ、政府は移転後も「定数で1万人が残る」を公式見解にしています。防衛省幹部は「1万人」について「中国へ与える心理的圧迫感こそが抑止力」と強調しますが、沖縄の人たちにとって海兵隊は日々接する存在。この感覚の違いが「抑止力」を巡る溝の大きさの要因です】

と書いている。

 違うな。「感覚の違い」なんて生易しいもんではない。

 いくら、日本政府が実数をぼかしたとしても、米側の情報はより事実に近いものが発表されるから、いったん移転してしまえば、実数はばれてしまう。そして、実際には、グアム移転後の沖縄海兵隊基地は、新兵を鍛える訓練施設として残っているに過ぎず、何らの抑止力にもならない部隊だということが明らかになるだろう。

 かりにそうではなく、4000人がまともな部隊として残るとしても、日本政府のみが人数をごまかそうとしても、中国が1万人もいると誤解するはずがないわけだ。米側の情報及び軍事衛星、諜報部員によって、実数に近い数字などを把握することはいとも簡単だ。

 もし、本気で防衛省幹部が、1万人とすることで中国に心理的圧力を与えられると信じているとすれば、そんなアホは直ちに更迭するべきだ。
 
 この幹部は、絶対に確信犯だ。

 つまり、「竹槍で米軍に対抗しよう」といって、国内の動揺を抑え込もうとした第二次世界大戦の指導者たちのように、事実と異なる情報を市民に与えて、自分たちに有利な展開にしてしまおうと考えているのだ。

 昨日も述べたように、このような馬鹿げた情報をそのまま掲載するのではなく、厳しく追及し、場合によっては、厳しく批判する、それこそが、ジャーナリズムだ。



 







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