情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その3

2006-10-04 19:28:55 | 共謀罪
日本が国際組織犯罪防止条約の協議段階で提案した第3のオプション,それは,日本でも刑法にある幇助,教唆,共同正犯,さらに,判例上認められている共謀共同正犯だった。条文は,次のとおり。

(iii) Participation in acts of an organized criminal group that has the aim of committing a serious crime, in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the crime.
(重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に,自らの参加がその重大犯罪を実現することに貢献することを知りながら,参加すること)

これに対し,イギリスの条文は,

b. Other activities of the group in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim.
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

である。

違いは,最後が the crime か the above-described criminal aim かだ。

the crimeの場合,組織犯罪集団がまさに行おうとしている犯罪を成し遂げることに貢献することを知りつつ,その集団の行為に参加するのだから,まさに幇助,あるいは共同正犯,共謀共同正犯に該当する。たとえば,抗争相手を殺すという計画を立てているときに,それを知りながら,その殺人計画で使われる包丁を購入するような場合,これに該当する。

これに対し,イギリス案は,組織犯罪集団がいろいろな犯罪をしていることを知りながら,そういう犯罪を助長する行為全てがあたる。特定の犯罪を助長する必要はないのだ。たとえば,ある組織が表面上,合法な団体を装っているが実際には暴力団である場合,その暴力団に事務所を貸すような行為がこれにあたると思われる。日本では,その事務所を利用してある犯罪が現に行われることを認識しているような場合でなければ,犯罪にはならない。イギリス案は,暴力団の役に立つような行為を全て犯罪にしてしまうのだ。

結局,日本の第3のオプションは,日本の現在の刑法体系で十分に対応できる内容のものであったのだ。

この提案は,【日本の国内法の原則では,犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり,共謀や参加については,特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって,すべての重大な犯罪について,共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない。しかも,日本の法律は,具体的犯罪を実行しないである犯罪組織に参加すること自体を犯罪化する規定を有していない。それゆえ,参加行為の犯罪化を実現するためには,国内法システムの基本原則の範囲内で実現化するほかない】(前回紹介した提案理由5項)という考え方に基づいてなされたものだ。

この日本の第3のオプションは,英米法,大陸法以外の国々に歓迎された。このときのやりとりを記した公電文には,タイが日本の提案を支持したことが次のように記載されている。

「日本の提案を支持する。
タイの国内法では,特定の犯罪との関わりがない限り,参加罪のような形態の行為を処罰することはできず,現在のオプション1,2では,条約上の義務を果たすことができない。オプション2は,organized criminal group の重大犯罪への関与に焦点を絞っているので,オプション1よりは良いが,日本の提案の方がさらに良い。」

さらに韓国も「日本の提案を支持する」と賛成し,「オプション1と2では,オプション2の方が好ましいが,韓国では,conspiracyは一部の重大判事にしか規定がなく,criminal associationは,暴力犯罪など特定の犯罪に限って規定がある。したがって,現在のオプション2のように,重大犯罪一般に,conspiracyやcriminal association」を導入することは,我が国の基本的な法制に一致せず,受け入れ難である。その点で,日本の(Ⅲ)の提案は,conspiracyやcriminal associationの概念を合わせた規定であり,韓国としてはもっとも受け入れやすいので,日本の提案を強く支持する」と賛意を表した。

また,中国も「日本と韓国が述べたことはよく検討すべき問題であり,良い指摘であると考える」と日本案を高く評価してした。

他方,米国は,「このような規定は,加(カナダ)が述べたように,処罰化の義務をループホールにしてしまうおそれがある。ただし,参加罪の処罰化については,各国に何らかのflexibilityを持たせる必要があると考えており,この点については,十分に検討したいし,提案をした日本や,それを支持した韓国等との間で十分に話し合い,妥協案を探る必要があると考えている」と表明した。

日本は,米国を相手にした堂々と論陣を張り,他国の賛同を背景にして日本が受け入れられる条約にすることに成功しつつあるように思われた…。





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1 コメント

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日本の外交官の活躍に感動 (風緯度曼)
2006-10-05 08:25:56
伏魔殿とも呼ばれた外務省にも強く正論を通した方がいるのですね

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