情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

グリーンピース「横領」鯨肉「窃取」事件で、鯨肉を送った船員の証言が嘘であると示すDNA鑑定証拠採用

2010-06-09 00:30:56 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 小沢氏の事件でにわかにクローズアップされた検察審査会の手続きについて、疑問を抱かざるを得ない事態が判明した。グリーンピース(GP)のメンバーが、船員によって横領された疑いが濃い鯨肉を船から自宅に送られる途中、運送会社のターミナルで確保して告発した事件で、GPのメンバーの鯨肉確保行為が建造物侵入・窃盗の疑いで審理されている刑事訴訟で、鯨肉は調査捕鯨を請け負っている共同船舶からもらったお土産であり、不正に持ち返ったものではないとする船員の供述が虚偽であることを裏付けるDNAの鑑定結果が6月8日、青森地裁で証拠採用されたのだ。

 このDNA鑑定結果は、前回の公判期日に、この船員が、GPのメンバーによって確保された鯨肉(畝須と呼ばれる高級肉)について、同僚の船員からもらった5本を二分割して10本にしたものだという説明をしていたことの真偽をはっきりさせるために弁護側が請求したもの。

 そもそも、調査捕鯨を請け負っている共同船舶側の説明では、お土産として支給される畝須は2本。他方、この船員が鯨肉をもらったと警察に説明した船員は4人。2本ずつもらっても、8本にしかならず、2本足りない(自分がもらった畝須は別の段ボールに入れたと法廷で証言した)。

 弁護側は、この船員は、数合わせのために、二分割したという説明をしたと考えた。

 そこで、警察が捜査段階で行っているらしいとみられたDNA鑑定の鑑定結果を開示するよう検察官に請求したところ、鑑定結果が出ていることが判明し、この日の証拠申請及び採用となった。

 DNA鑑定の結果、10本の畝須は、2頭の鯨(仮にAとBとする)から取られたものであることが分かった。そして、なんと、Aから取られたものが7本、Bから取られたものが3本であった。(冒頭の写真がその結果、10本の畝須からの各2個の検体とGPのメンバーがサンプルとして切断していた3本の切れ端からの各1個の検体合計23検体について調べている。下側の6個(3個から2個ずつ採取したもの)が同じDNA型であることが分かる)

 もし、5本の畝須を二分割したのだとしたら、同じDNA型を持つものが常に2本づつあるわけであり、7:3となるはずがない。

 つまり、船員の鯨肉の入手経路は嘘であったことが明白になったのだ。

 問題は、GPのメンバーが告発した船員による業務上横領は、メンバーが逮捕された日に不起訴とされ、さらには、検察審査会もこの4月、不起訴相当(不起訴で構わない)の判断をした。

 しかし、検察審査会には、DNAの鑑定結果は提出されていないはずであり、お土産としてもらった5本の畝須を二分割したという船員の説明を正しいと考えて、横領はないと判断したと思われる。

 しかし、船員のこの説明が虚偽であることは、本日、科学的に明らかとなった。

 不起訴相当と判断した検察審査会のメンバー11人は、この結果をどう受け止めるのだろうか?

 実は、検察審査会の不起訴相当の判断は、自宅に鯨肉を送った船員の尋問が行われた5月の直前である4月に下された。もちろん、GP側は、その尋問の結果を踏まえてから判断するようにと検察審査会に申し出ていたが、叶わなかった。

 この船員は尋問で、鯨肉をもらった人の名前さえ満足に上げることができず、捜査段階でもらったという人について、その人からはもらっていないと断言した。その日の午前、あげたとされる側の船員は、同じ法廷であげたことを証言していたにもかかわらず…。

 ●なぜ、検察審査会は、船員に対する証人尋問を待たずに判断をしてしまったのだろうか。

 ●11人の審査会のメンバーは、DNA鑑定の結果について、おそらく知らなかったと思うが、DNA鑑定の結果を知っていたら、不起訴相当の判断は違っていたのではないだろうか。

 この2つの質問を聞いてみたいと思いませんか?

 補佐する弁護士でもいい。どなたか、ぜひ、この質問に対して答えてほしい。

 
 GPのメンバー2人に対する求刑は1年6月だった。

 判決は9月6日午後2時。弁護団の一員として無罪判決が下されると確信しているが、それまでに、検察審査会の問題も含め、新たな事実が浮かび上がることも期待したい。

 そして、検察審査会の不透明な手続きが少しでも改善され、外部からのチェックが働くようなシステムとなることを願っている。

 そもそも、検察審査会が検察による恣意的な不起訴(おめこぼし)を問題として取り扱うものである以上、そこで、どのような資料・情報をもとに検討がなされたかくらいは明らかにしなければ、検察の不当なお目こぼしの有無をチェックすることはできない。

 菅政権が透明度の高い政治を目指すのであれば、ぜひ、この点も改善してほしい。


※ABC(豪州のテレビ局)が放送したこの事件に関する番組。6分くらいから内部告発者の証言(ここは日本語)もある→http://www.abc.net.au/foreign/content/2010/s2921893.htm







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