情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

弁護士報酬をクレジットで受領することの正否について

2006-04-09 08:22:30 | 適正手続(裁判員・可視化など)
いま,日本弁護士連合会では,弁護士の報酬をクレジット契約によって受領することを認めるか否かで,ちょっとした争いが起こっている。

従前,日弁連は,「弁護士がクレジットカード会社と加盟店契約を締結することは相当でないと思料する」(1992年理事会承認「見解」)という立場をとっていた。

しかし,現に,数人の弁護士がクレジット会社と加盟店契約をしている実態を背景に,昨年5月,日弁連弁護士業務改革委員会が適切なガイドラインを定めることを前提としてクレジットによる支払を認めるべきであるという決議をした。

しかし,クレジットの問題にこれまで取り組んできた日弁連消費者委員会は,依頼者の秘密保持が保てない,報酬が高額化するおそれがあることなどを理由に真っ向から反対している。

個人的には,確かに,債務整理関係の依頼者を中心に,約束したとおりの弁護士報酬を支払わないケースもあり,クレジットにしてもらえたら楽だというのは分からないでもない。

しかし,弁護士がほかの業務と同じように効率だけを考えて楽なシステムを採用していいのだろうか?業種業種によって,守るべき最低限のルールというのがあり,一般的なシステムは必ずしも妥当しないのではないだろうか。

たとえば,朝日新聞の箱島・元社長は,朝日を「普通の会社」にすると言って,経済性を重視したが,その結果,週刊朝日の連載記事をめぐり消費者金融大手の武富士から約5000万円を受領するなどの不祥事を引き起こし,退陣を余儀なくされた。

弊害はそれだけではない。箱島体制下で,朝日新聞は大きく右に舵をとってしまった。「普通の会社」であろうとすることの当然の帰結だろう。現政権との緊張関係を維持したままでは(特に長期一党政権下では),「普通の会社」にはなれないからだ。

いま,弁護士会は,司法改革の波に乗っているが,個人的には,司法改革は,弁護士を普通の事業主にすることにつながるのではないかと危惧している。

今回のクレジット契約騒動も,弁護士を普通の事業主(採算重視)としてしまうことによって,弱者切り捨てにつながるのではないかと危惧する。

司法は,民主主義=多数決=その時々の多数派による航路を定める立法,そしてその舵取りをする行政によって,多数派のための政策実現を優先する結果として少数派の人権が侵害されることを防ぐ役割を有している。

その司法を担う弁護士が「カネがないならクレジットでもして用意して来んかい!!」というのでは,少数派の切り捨てがますます進むことになりかねない。「カネがない人」のために,法律扶助という制度があるのであり,クレジット契約を可能とするよりも,法律扶助制度を拡充することを目指すべきであることは明らかではないだろうか?


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