労使の分配関係から見れば
経済発展のプロセスを簡単に見てみましょう。ある意味ではこれは単純なことです。
一国のGDPは、それを生み出した「労働(雇用者報酬)」と「資本(営業余剰)」に分配されます。その分配関係を決めるのは労使関係(労使交渉)で、税制などがその補完・調整をします。
その分配の結果で労働(人間、家計)は生活し資本は蓄積(技術開発・企業設備)され、人間は、その資本を活用してより高い生産性を実現し、より大きなGDPを生産します。
この繰り返しが経済成長で、生活水準は向上、技術は進歩、世界は人間にとって、より豊かで快適になっていきます。
ここで最も大事なのは、人間が資本を使って生み出した成果、GDPを、労働と資本の間でどう配分するかという問題です。労働経済でいう「労働分配率(+資本分配率=100)」です。資本主義の初期には、資本への配分が多すぎ、労働搾取の問題や消費不足によるデフレという問題もあったようです。マルクスが正義感を持って主張したのは、この配分のアンバランスでしょう。
一方、今日の民主主義社会では、多くの国で、労働組合の勢力が強く、賃金上昇は生産性上昇を上回り、労働分配率は上昇、利益(資本分配)は減り、資本蓄積は不足、経済は停滞、賃金コストインフレが常態化します。国際競争力は弱化、経常赤字国になります。政府は緊縮政策をとろうとしますが、国民は緊縮政策を嫌い、政権を失いたくない与党はポピュリスト化して、財政出動で景気刺激、賃金コストアップは続き、財政、経常収支の両方が赤字(双子の赤字)になり勝ちになります。
緊縮政策をとらずにこれを是正するには、赤字国の賃金コストを下げ、黒字国の賃金コストを上げればいいわけで、黒字国の為替レートを切り上げればいいという事になります。例えば、10パーセント円高にすれば、日本の賃金コストは国際的には10パーセント上がります。国際投機資本や格付け会社がそうするように仕向ければいいわけです。
日本の労使の賃金コスト抑制のための努力はこれで無意味になります。
問題は、こうした対症療法で、赤字国と黒字国のバランスは回復するのでしょうか。経験的にはそれは無理なようです。赤字国が、その根源である、労使の配分関係を健全な形に変えなければ、為替レートで調整しても、単に一時的な改善で、また同じことが起こります。これはその国の、国民の意識・知識のレベルと態度の問題です。
日米間では、$1=¥360から、$1=¥80まで日本が譲歩してやったのに、アメリカの赤字は止まりません。アメリカ人の意識と行動が変わらない限り、駄目なのです。
最終的には、アメリカもギリシャもスペインもイタリアも、フランスも、労使関係を見直し、合理的な賃金決定が出来るようにならないと、この世界経済の混乱は直らないのです。そのことを知らしめる経済学、就中、労働経済学の教育、健全な労使関係への理解と行動が実は最も必要なことなのです。
経済発展のプロセスを簡単に見てみましょう。ある意味ではこれは単純なことです。
一国のGDPは、それを生み出した「労働(雇用者報酬)」と「資本(営業余剰)」に分配されます。その分配関係を決めるのは労使関係(労使交渉)で、税制などがその補完・調整をします。
その分配の結果で労働(人間、家計)は生活し資本は蓄積(技術開発・企業設備)され、人間は、その資本を活用してより高い生産性を実現し、より大きなGDPを生産します。
この繰り返しが経済成長で、生活水準は向上、技術は進歩、世界は人間にとって、より豊かで快適になっていきます。
ここで最も大事なのは、人間が資本を使って生み出した成果、GDPを、労働と資本の間でどう配分するかという問題です。労働経済でいう「労働分配率(+資本分配率=100)」です。資本主義の初期には、資本への配分が多すぎ、労働搾取の問題や消費不足によるデフレという問題もあったようです。マルクスが正義感を持って主張したのは、この配分のアンバランスでしょう。
一方、今日の民主主義社会では、多くの国で、労働組合の勢力が強く、賃金上昇は生産性上昇を上回り、労働分配率は上昇、利益(資本分配)は減り、資本蓄積は不足、経済は停滞、賃金コストインフレが常態化します。国際競争力は弱化、経常赤字国になります。政府は緊縮政策をとろうとしますが、国民は緊縮政策を嫌い、政権を失いたくない与党はポピュリスト化して、財政出動で景気刺激、賃金コストアップは続き、財政、経常収支の両方が赤字(双子の赤字)になり勝ちになります。
緊縮政策をとらずにこれを是正するには、赤字国の賃金コストを下げ、黒字国の賃金コストを上げればいいわけで、黒字国の為替レートを切り上げればいいという事になります。例えば、10パーセント円高にすれば、日本の賃金コストは国際的には10パーセント上がります。国際投機資本や格付け会社がそうするように仕向ければいいわけです。
日本の労使の賃金コスト抑制のための努力はこれで無意味になります。
問題は、こうした対症療法で、赤字国と黒字国のバランスは回復するのでしょうか。経験的にはそれは無理なようです。赤字国が、その根源である、労使の配分関係を健全な形に変えなければ、為替レートで調整しても、単に一時的な改善で、また同じことが起こります。これはその国の、国民の意識・知識のレベルと態度の問題です。
日米間では、$1=¥360から、$1=¥80まで日本が譲歩してやったのに、アメリカの赤字は止まりません。アメリカ人の意識と行動が変わらない限り、駄目なのです。
最終的には、アメリカもギリシャもスペインもイタリアも、フランスも、労使関係を見直し、合理的な賃金決定が出来るようにならないと、この世界経済の混乱は直らないのです。そのことを知らしめる経済学、就中、労働経済学の教育、健全な労使関係への理解と行動が実は最も必要なことなのです。