tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

キャピタルゲインで年金原資?

2009年06月18日 10時51分22秒 | 経済
キャピタルゲインで年金原資?
 貨幣経済が発展すると、いろいろなところに資本が蓄積されます。家計に、企業に、国や地方公共団体に、差し当たって使わないカネが溜まるわけです。
 日本では、ご承知のように1500兆円という巨大なカネが、個人貯蓄という形で蓄積されています。
 こうして蓄積されたお金は、大きく分けて、2つの方向に動くことになります。

 第1の方向は、実体経済の成長を目指す投資です。人類の経済社会は「資本蓄積→投資→資本蓄積→投資」のサイクルで発展成長してきました。蓄積されたお金が、成長を支えたわけです。

 投資の内容は具体的に言えば、技術開発、生産設備、流通システムなどへの投資、さらに、こうした実体経済活動の高度化は、すべて人間が考えて行うわけですから、人間に対する投資、「 教育」です。最近の言葉ではHRD(human resource development:人的資源開発)です。
 人間社会の発展は、その社会を構成する人間の質によって決まりますから、実はこれが最も重要なのでしょう。

 第2の方向は、ギャンブルです。サイコロでも、カードでも、何かを道具に使って、賭けをし、損したり得したりするという方向です。これも人類の歴史と共に古い蓄積資本(時にはお金を借りてでも)の活用法で、宗教、占い、社交、遊びなどと結びついて、かつてのドバから競馬、宝くじ、サッカーくじまで進化してきました。しかし、これらはすべてゼロサムゲームで、経済成長とは関係ありません。

 今の金融資本主義、マネー資本主義というのは賭けの道具として経済事象のいろいろな側面を活用したものです。株価、金利、為替などなど。
 しかし、サッカーの勝敗がサッカーくじに関係ないように、マネー資本主義のマネーの流れは、実体経済の成長発展に関係ない、という訳には行きません。実体経済のお金もマネーゲームのお金も区別できないからです。しかも、古代エジプトからそうであったように、この世界にはインチキの影が付きまといます。

 本来マネー資本主義が標榜したのは、金融の活性化、実体経済の安定に効果があるということだったようです(今でもそう言う人は大勢います)。しかし、「欲に目がくらみやすい」という人間の弱さからでしょう、実体経済の混乱により巨大な効果を持ってしまったようです。

 繰り返し述べていますように、マネーゲームによる利得(キャピタルゲイン)は社会の富を増やす(経済成長をもたらす)わけではありません。

 ところで、年金というのは、積み立て方式にしても、賦課方式にしても、将来の経済成長を前提にしないと成り立ちません。利息も後代負担も経済が成長するから可能になるのです。
 その年金が、その蓄積資本を自分を支えてくれる第1の方向(実体経済への投資)でなく、 キャピタルゲイン目当ての投資(第2の方向)に走って、果たして理にかなっているのでしょうか。


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