tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げと人民元高の共通点と相違点:その2、中国の場合

2010年10月10日 15時15分59秒 | 国際経済
賃上げと人民元高の共通点と相違点:その2、中国の場合
 欧米の為替戦略に対する対応のやり方については、中国は日本と真反対のようです。日本は、欧米から言われれば、素直にハイ解りましたと円切り上げに応じたり(プラザ合意)、マーケットは原則まともなものと判断し、マーケットの動きにあまり抗わないようです。

 一方、中国は、欧米からいくら切り上げろといわれても、人民元のレートは外国に決めてもらうものではない、「自分で判断する」と譲りません。プラザ合意が日本の「失われた10年」をもたらしたという日本の大失態を見て、十分に勉強しているからと言われます。

 もちろん中国は、基本的には共産党一党独裁国家で、為替の自由化もしていない、つまり体制の違う国だという事もあります。しかし、体制の違いを別にしても、中国の対応のほうが、日本の対応より余程国益に適っているといえましょう。

 日本の場合も、プラザ合意の時$1=¥240を$1=¥190ぐらいと思っていたようですが、国際投機資本もあり、120円までいってしまいました。120円などは予想していなかった、190円ぐらいにしておいてくれといっても、誰もそんなことは構ってくれません。

 中国の場合は、まだまだ巨大な低開発部分を内蔵した経済で、人民元高で大いに儲けようと手ぐすね引いている国際投機資本に勝手にやられたら、過度の切り上げで中国経済が破滅しかねないという危惧を当然持っています。例え中国元がいくら高くなっても、それはマーケットのせいだと誰も責任を取ってはくれません。

 それならば、と中国は、人民元切り上げと同じコストアップ効果を持つ「賃金の水準の引き上げ」でインフレを起こし、何年か後には、中国の国際競争力は、「もうそんなに高くないよ」「インフレで物価が上がったから」という方向を選んでも不思議はありません。(表題の「共通点」)
 そのほうが、コスト上昇、インフレ高進の裁量権は自分が持つことが出来、中国経済を破滅させるような危険は犯さずに、国際的な調整をやることが出来ます。

 その上、デフレの経済・社会への悪影響を考えれば、自主的な政策によるインフレ経済と共存するほうが、政治も企業も社会もずっと楽で、経済・社会の健全性も維持出来ます。(表題の「相違点」)

 世界経済の安定や繁栄などにはまったく関心がなく、自分がいかに多額のキャピタルゲインを上げるかしか考えない国際投機資本が闊歩する今日の世界経済の中では、この判断のほうがずっとまともという事かもしれません。
 かつて、アジア経済危機の時、マレーシアのマハティールさんが、為替管理を導入して、ヘッジファンドに対抗したのが思い出されます。


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