tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差問題: 日本の場合

2015年03月01日 10時18分11秒 | 経済
格差問題: 日本の場合
 日本の場合の格差問題というのはどうなのでしょうか。確かにいま日本の社会でも(あたかも春闘のさなかですが)、格差問題は、かなりの程度、関心の的になっています。

 ピケティの格差論は、資産格差の拡大が中心ですが、日本の場合はフロー、つまり所得格差の問題が中心で、資産格差の問題はあまり語られません。
 格差が世代間にも引き継がれていくといった問題も、日本では、現在の所得格差が学歴格差を通じて次世代に引き継がれていくことになれば問題だということでしょう。

 格差問題が語られるようになったのは、特にここ数年で、原因は非正規労働者の拡大によると思われます。そしてこの問題は、円高不況による「失われた20年」の中で、企業がサバイバルと雇用維持の狭間でとった、窮余の一策としての非正規の採用増の結果です。
 
 「失われた20年」以前、日本は北欧と並んで世界でもトップクラスの格差の小さい国だったことをご記憶の方もおいと思います。

 最近の人手不足基調の中で、企業は人材確保の面から非正規の正規転換を本気で考え始め、教育訓練を通じて、企業の長期的発展に役立つ人材に育てようという姿勢が見えて来ています。
 これからの日本経済の安定した成長の中で、労使の協力によって、こうした動きがますます徹底することを願う所です。

 正規への転換を望む非正規労働者は、雇用の38パーセントといわれる非正規労働者の中で派遣労働を中心に約3分の1ではないでしょうか。残りは家計補助や学生アルバイト、高齢退職者で、自由度の高い働き方を希望する方がたでしょう。

 日本の資産格差は、かつて「3代相続すればゼロになる」と言われた相続税の仕組みもあり(最近も更に見直されていますが)、実質的には欧米よりも、さらには急速に発展するアジア諸国よりも小さいのではないでしょうか。
 
 というのも、日本の資産価値の中で突出して大きいのは土地評価額で、バブルの時代には、日本の土地を全部売れば、面積25倍のアメリカが4つ買える(単位面積当たりの価格100倍)と言われたほどで、バブル崩壊で下がりましたが、半分程度(全国市街地平均)といったところでしょう。しかし、住んでいる土地は売れません。相続税支払でやむなく手放す人も多いようです。
 
 トップ企業の経営者の報酬も欧米に比べれば少額で、巨万の富を蓄積するような事にはなりませんし、成功した創業者の資産も相続の問題に直面します。

 日本人は、本来が真面目で、モノづくり、実体経済を大事にして、「等しからざる」を憂いつつ、豊かで住み易い国を作ってきました。この道は誤りでなかったように思います。


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