tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

8月消費者物価指数、基調は安定へ

2024年09月20日 14時51分19秒 | 経済

今朝、総務省統計局から2024年8月の消費者物価指数が発表になりました。

結論から言うと、現状、日本の消費者物価指数は安定基調で、それを乱しているのが政府の場当たり的な補助金政策と地球温暖化による異常気象だということです。

アメリカでは、雇用統計と消費者物価指数がFRBの金融政策を左右する主要な統計ということになっているようですが、それはこの2つの統計が、アメリカの実体経済の現状を反映すると、関係者みんなが理解しているから成り立つのです。

アメリカが立派ということではありませんが、経済関係の統計などはなるべく本来の経済の動きを示してくれた方が経済状態を理解するためには好都合でしょう。

ということで、発表になりました8月の消費者物価指数を見てみましょう。

マスコミは前年比2.8%の上昇としているものが多いようです。これはこの所、政府が消費者物価指数の「総合」の数値ではなく「生鮮食品を除く総合」の数字をメインの数字として使っているからのようで、「総合」は3.0%です。

   消費者物価指数対前年上昇率(%)

このところ天候不順などで生鮮食品や生鮮魚介や鶏卵の価格が上がっていたので、低い方にしたのでしょう。

政府は数字が低い方がいいと考えるのでしょう。政府が補助金を出して物価をさげたりします。エネルギーの価格が上がったとき石油元売りなどに補助金を出して、ガソリン、電気料金、ガス料金を下げました。  

上のグラフで見ても2023年の2月から2024年1月にかけて、青と赤の線が大きく凹んでいるのが解ります。その時説明しましたように、政府の補助金で電気・ガス料金が下げられたけっかです。

緑の線は上に膨らんでいます。青・赤の線はエネルギー料金が入っていますから下がっていますが、緑の線は「生鮮とエネを除く」ですから補助金の影響はなく、本来は緑の線の上に青・赤の線が来ているはずなのです。1年たつと対前年上昇率は本来の位置に戻り、また上昇を始めます。政策で統計が歪んでいます。

緑の線は、エネルギーと生鮮食品を除いていますから国内の正常な経済活動による物価の動きということで「コアコア指数」などといわれますが、これはこのところ下げてきて2%になりました。日本経済自体によるインフレは2%程度になったということでしょう。

8月の物価上昇は、補助金の期限切れ、電気代26%、ガス代11%、それに生鮮の野菜・果物の12%と0%の上昇によるものです。うるち米の30%の上昇は緑の線に含まれていますから、農政の不具合によるコメの値上がりがなければ緑の線も0.1ポイントほど下がっていたでしょう。

下のグラフは原指数の動きですが、次第に、もう少し緩やかな上がり方になるように思います。

   消費者物価指数の推移


8月消費者物価指数、基調は安定へ

2024年09月20日 14時49分03秒 | 経済

今朝、総務省統計局から2024年8月の消費者物価指数が発表になりました。

結論から言うと、現状、日本の消費者物価指数は安定基調で、それを乱しているのが政府の場当たり的な補助金政策と地球温暖化による異常気象だということです。

アメリカでは、雇用統計と消費者物価指数がFRBの金融政策を左右する主要な統計ということになっているようですが、それはこの2つの統計が、アメリカの実体経済の現状を反映すると、関係者みんなが理解しているから成り立つのです。

アメリカが立派ということではありませんが、経済関係の統計などはなるべく本来の経済の動きを示してくれた方が経済状態を理解するためには好都合でしょう。

ということで、発表になりました8月の消費者物価指数を見てみましょう。

マスコミは前年比2.8%の上昇としているものが多いようです。これはこの所、政府が消費者物価指数の「総合」の数値ではなく「生鮮食品を除く総合」の数字をメインの数字として使っているからのようで、「総合」は3.0%です。

 

 

このところ天候不順などで生鮮食品や生鮮魚介や鶏卵の価格が上がっていたので、低い方にしたのでしょう。

政府は数字が低い方がいいと考えるのでしょう。政府が補助金を出して物価をさげたりします。エネルギーの価格が上がったとき石油元売りなどに補助金を出して、ガソリン、電気料金、ガス料金を下げました。  

上のグラフで見ても2023年の2月から2024年1月にかけて、青と赤の線が大きく凹んでいるのが解ります。その時説明しましたように、政府の補助金で電気・ガス料金が下げられたけっかです。

緑の線は上に膨らんでいます。青・赤の線はエネルギー料金が入っていますから下がっていますが、緑の線は「生鮮とエネを除く」ですから補助金の影響はなく、本来は緑の線の上に青・赤の線が来ているはずなのです。1年たつと対前年上昇率は本来の位置に戻り、また上昇を始めます。政策で統計が歪んでいます。

緑の線は、エネルギーと生鮮食品を除いていますから国内の正常な経済活動による物価の動きということで「コアコア指数」などといわれますが、これはこのところ下げてきて2%になりました。日本経済自体によるインフレは2%程度になったということでしょう。

8月の物価上昇は、補助金の期限切れ、電気代26%、ガス代11%、それに生鮮の野菜・果物の12%と0%の上昇によるものです。うるち米の30%の上昇は緑の線に含まれていますから、農政の不具合によるコメの値上がりがなければ緑の線も0.1ポイントほど下がっていたでしょう。

下のグラフは原指数の動きですが、次第に、もう少し緩やかな上がり方になるように思います。


見えて来たアメリカの金利政策の方向

2024年09月19日 14時26分52秒 | 経済

アメリカの中央銀行FRBの9月の金融政策決定会合(FOMC)が終わり、政策金利の下げ幅は0.5%と決まって、思惑で揺れた金融市場も当面落ち着くことになりそうです。

基軸通貨国であるアメリカの政策金利の動向は、世界中の為替レートに影響を与えることになります。特に経済関係が多様に入り組んでいる日本の場合は、いろいろな面で大きな影響を受けることになりますから、目が放せません。

勿論、実体経済への影響が大事ですが、アメリカの政策金利が、即座に影響する為替レート、その影響を受けるマネーマーケットなども大変でしょう。その関係者は発表前から、情報を集めシミュレーションし、勝ち筋を狙うのでしょう。

今回のFOMCの政策金利の引き下げは0.25%か、0.5%かに絞られていましたが、0.5%に決まったことは、FRBは、アメリカ経済の活発化、雇用の安定といった積極面に対する強い意識の表れでしょう。

ただ、パウエルFGB議長は、今回の大幅引き下げは、今後についても大幅引き下げを示唆するものではない、11月のFOMCは今後の雇用指標、物価指標といったデータ次第で0.5%もありうるし0.25%もありうるといった 微妙な発言で FRBの現実的な態度を示すとともに、無用な憶測や思惑排除にも対応しているようです。

しかし、今回の思い切った政策金利の引き下げで、アメリカ経済の対する積極的な態度を明確にしたことで、基本的な政策方針は、アメリカ経済の順調な成長という視点にあることは理解されてのではないでしょうか。

もともとアメリカは経済活動が活発な国で、インフレ率は高めというのが体質のようです。そしてその方が雇用にとっても望ましいので、インフレ含みの経済成長という選択はあったのではないかと思うところです。 

アメリカの目指す2%インフレというのは、その理想形という理解なのだといった気もします。その意味では、イエレン財務長官が指摘していたように、すでにアメリカはインフレ抑制に成功して、軟着陸を果たしたとみてもいいのではないでしょうか。

そういう事であれば、今後のFRBの金利政策は、物価と雇用といった経済指標に即してキメ細かく運用していけばいいので、パウエルさんの言われるようにデータ次第ということになるのではないでしょうか。

翻って日本を見たとき、日本は,長年の異常なゼロ金利政策から、金利の正常化を進めなければならないという、経済と金利のアンバランス是正の要請の中で、意図的に政策金利の上昇を続けなければならないという困った状況の中にあります。

既に、8月の誘導金利の引き上げ(0.1%→0.25%)では雇用市場の株式の乱高下がありました。日銀は、マネーマーケットの混乱がないようにと繊細は注意を払いながら政策発表をしたようですが、マネーマーケットは過激な反応を示しました。

9月にはアメリカが金利を引き下げるという思惑と考え併せての神経質な反応になった面もあるでしょう。

そのアメリカの政策金利の動きが少しは解り易くなったということでしょうから、今後の日銀の政策決定は少しはやり易くなるのかもしれません。

実体経済に資し、マネーマーケットを混乱させない巧みな舵取りを望むところです。


雇用構造を変えるには:官製「働き方改革」の盲点

2024年09月18日 16時11分34秒 | 労働問題

このブログでは国が「働き方改革」を言うなどは「余計なお世話」で、働き方改革は必要に応じて労使が自主的に考えって実行するものという立場をとっています。

「賃上げ」の場合も同様ですが「官製春闘」はスローガンだけで、去年、今年、経団連が賃上げを認める姿勢を取り、連合内の主要単産が本気なって、やっと賃金が上がってきています。  

政府が日本の雇用構造に影響を与えたのは、「プラザ合意」という経済外交の大失敗の結果、大幅円高で企業が賃金水準の維持が出来なくなり、やむを得ず正社員を減らし、非正規社員の著増という雇用構造の悪化をもたらした事ぐらいでしょう。

ところで、技術革新が進み、雇用構造がそれに従って変わらなければならないというのは当然で、大変大事なことです。

実はそれを極めて上手にやって来ているのが日本企業なのです。これはコダックと富士フイルムの比較でも書きましたし、GMやGEの経営の変容でも書きました。今日現在の話では、日本製鉄のUSスチール買収の話があります。

アメリカの主要企業はでは軒並み産業構造の変化に雇用構造が対応できずに失敗をしているのです。

自民政権の「働き方改革」は、まさにアメリカ型の職務中心、職務がなくなれば解雇のアメリカ型雇用システムが素晴らしいという現実を知らない単純な欧米崇拝の結果なのです。

現政府の「働き方改革」では、企業の新卒一括採用は非合理的だからやめるべきとなっています。日本企業はやめる気配はありません。これは雇用というものの本質の理解が、欧米と日本では違うからです。

日本では企業は人間集団です。人間集団の凝集力がシナジー効果を生んで、1+1が2以上の力を出すのです。欧米流の職務中心の採用では、個々人の能力を全部引き出しても100%で、そこまでは出ないのが普通でしょう。

欧米流では職務がなくなれば解雇されます。技術革新の時代です、解雇され、改めて進路を決め、勉強し、トレーニングを受けて新しい職務を探します。

日本の伝統的な方法は、技術革新などで企業の職務内容、職務構成が変わったとき、企業自体が自分のやる仕事を変えて行きます。繊維や窯業の産業から化学、電機、半導体へ業態を変えていくのは企業の当たり前の発展過程のようです。

従業員は手慣れた専門分野から共通点のある新分野に雇用は継続のまま企業内の再訓練再配置で安定した生活を保障されながら、高度技術企業の従業員に脱皮します。

ですから、日本には企業生命の長い会社がいくらでもあります。ドラッカーが日本の企業生命の長さに驚嘆し、自らの経営学に取り入れたことは知られています。

日本の失業率は欧米に比べて常に異常に低いことも知られています。人間集団ですからそこから排除するということは人間の尊厳という視点からも避けたいという意識が根底にあるからでしょう。

雇用という問題が、企業の利益を中心に判断される欧米のと、人間集団が協力してその時代に必要な仕事をして社会貢献するという経営理念を持つ日本企業との違いが判らずに、日本の雇用政策を考えても決してうまくいかないのは、こうした理由からだと考えています。


生産性向上は大切、その分配も大切

2024年09月17日 13時24分26秒 | 文化社会

昨日は敬老の日でした。折角の国民の祝日でしたが、高齢者を大切にする事と、経済成長や国家予算のやりくりという問題で、世界の先進国は軒並み年金問題で苦しんでいるといった現実を書きました。

前々回は、「働き方改革」に関連して、人手が足りないのはエッセンシャルワーカーなどの社会の重要な分野を含む対個人サービスの職務だと書きました。

こうした問題はみんな、生産性の向上と生産性向上の成果の分配の問題に関わる事ですということを今回は整理しておきたいと思います。

こう書いただけで、もうこのブログが「何を言おうとしているか解ったよ」とおっしゃる方もおられると思います。その場合は「巧く書けているか」採点して下さい。

前回、高齢化問題の中で「今の日本社会は、昔のように、絶対的窮乏の社会ではありませんから、GDPの配分を適正化すれば、何とでもなると思うのですが」と書きました。

日本人は、日本のGDP(より正確には国民所得)で生活しています。GDPが増えれば(経済成長)日本は豊かになります。GDPが増えるのは労働生産性が上がるからです。企業では生産性が上がれば賃金が上げられます。賃金が上がれば従業員は豊かになります。

ここまではいいのですが、やっている仕事によって生産性が上げやすい所と上げにくい所があります。端的に言って、技術革新が生まれやすい所は生産性が上がりますが、技術革新が起きにくい所は生産性が上がりません。

生産性の上がりやすい所の代表は製造業、上がりにくい所の代表は対個人サービスでしょう。

GDPは殆んど企業が創りますから、生産性の上がる企業は賃金が上がりやすく、生産性の上げにくい企業は賃金が上げにくいということになり、産業別、業種別、企業別、職種別で、賃金格差が生まれます。

労働経済学では、この格差は、労働需給によって調整される事になっています。必要な人が集まらないと賃金を上げなければならないという形で上がるのです。

今マスコミで報じられているのは、訪問介護やタクシーの人手不足です、労働経済の理論に従えば、訪問介護やタクシー料金が上がって、賃金も上がり人手不足が解消するのですが、訪問介護もタクシーも政府の許認可で、料金が決まっているので、生産性が上がらず、賃金が上げられない企業は、倒産、廃業でサービスが無くなるといったことのようです。

勿論史上最高の利益、ボーナスも最高といった企業が悪いわけではありません。それは企業努力の結果で,日本経済に貢献しているのです。

ただ、はっきり言えることは、産業構造の中で、生産性の上がりやすい所と上がりにくい所があるのは当然で、特に、高齢化が深刻化するような場合、対個人サービスという最も生産性の上がりにくい部門で人手不足が深刻になることは避けがたいということは自明です。

結局は、高生産性の分野が、生産性は上がらないが、健全な社会の維持のために存在が必須な、いわゆるエッセンシャルな分野の活動のための負担をすることで社会全体がスムーズに回転していくというシステムを「適切に上手に整備する」ということを真剣に考えていかなければならないのです。

これは、国、社会全体の大きな課題で、それに成功した国が、働きやすく、生活もし易い国民にとって望ましい国ということになるのでしょう。

そういう事を確り考えて政策を打つ政府を持ち、それが豊かで快適な国、社会に必須なことだという国民の意識と行動が最も大事ということではないでしょうか。