7/5(月)、職場の歓送迎会で、「古都の宿 むさし野」(奈良市春日野町90番地)という老舗の料理旅館を訪ねた。昭文社の『にっぽんの旅14 奈良・大和路』というガイド本には《文人墨客が親しんだ木の香漂う宿》《谷崎潤一郎、山岡鉄舟の常宿だったことで知られ、古くから多くの文人墨客に親しまれてきた。若草山の麓にたたずむ数寄屋造りの建物は、木造2階建てのひなびた風情。旬の食材を生かした懐石料理や冬は鍋料理も味わえる》とある。文人墨客のほか、皇族も利用される。ロビーには山岡鉄舟が「これを宿賃代わりにしてほしい」として書いた横軸が飾られている。
職場の歓送迎会だったが、夏場とあって、ご覧のとおり見た目も涼しげな料理がお膳に運ばれてきた。こちらの女将・山下育代さんは、「女将の独り言」というブログを書いておられ、産経新聞にも取り上げられた。タイトルは《もてなしの心 ブログも続ける奈良・若草山麓の「むさし野」女将》(「関西ういーくえんど」産経新聞 08.1.27付)だ。
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080127/trd0801271208009-n1.htm
《文豪にも愛された老舗を祖母の代に買い取り、孫の山下育代さん(50)が3代目女将を継承。格式ある伝統や、恵まれた環境に勝るとも劣らない最高のもてなしを、日々宿泊客に提供し続けている。むさし野は、少なくとも江戸時代末期には茶屋として営業していた。当時の奈良奉行が一服したという日記の記録もある。文豪・谷崎潤一郎の『吉野葛』にもその名が登場。終戦直後には、進駐軍の保養所として、また大阪経済界の重要な会議場としても使われた》。
《奈良県下市町在住の山下さんの祖母が昭和20年代、経営不振で売りに出されていたむさし野を買い取ったのが、一族での経営の始まりだ。「全くのずぶの素人だった」(山下さん)という祖母が、女将でありながら着物姿で洗い物もする姿を、幼いころから目の当たりにしてきた。3姉妹の長女として育ったが、一時期は宿を継ぐのを敬遠し、芸術系の大学に進学。卒業後も洋裁の専門学校に通ったが、体の弱い2代目女将の母を思い、20代半ばで3代目を継いだ》。
《父からは「この宿をつぶそうが大きくしようが、好きにすればいい」と言われた。ただ、最初にフロント係を任されたときには「厨房や客室など)裏のことも分かるようになれ」と気配りを教えてくれた》。
《接客係を任されると、長年勤めていた接客係の従業員たちが「伝統に甘んじて接客をないがしろにしている」と感じ、全員解雇。自ら面接し、新しい接客係を採用した。「慣れが出て、お客さまを見た目で判断するのが一番恐ろしい。常に謙虚な気持ちでなくては」。自分に言い聞かせる教訓でもある》。
お刺身は、鮮度抜群!
《平成4年の年の瀬。近くのごみ置き場で不審火があり、燃え移って建物の3分の1が焼けた。幸い客にけがはなかったが、崩れ落ちた屋根をみて恐怖感を覚え、「もうやめたい」と弱音を吐いた》。
《さらに、再建にあたっては、周辺一帯が風致地区であることから、安価な鉄筋コンクリート建ては認められず、瓦1枚に至るまで忠実な木造建築の再現を迫られた。それでも、過去に宿泊したことのある全国各地の小・中学生から義援金が届いたり、励ましの手紙をもらったりして、再起を決意。約1年半後、ようやく営業再開にこぎつけた》。
《「閉鎖的と思われたくない」と、17年からは「女将の独り言」と題したブログも地道に続けている。「たとえお客さまにしかられるときでも、逃げてはだめ。伝統や恵まれた立地条件におもねることなく、常に謙虚に耳を傾けることが大切」。最高のもてなしを心掛ける女将の厳しい一面を表情にのぞかせた》。
※山下育代さんのブログ「女将の独り言」
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi
「女将の独り言」は、さほど頻繁には更新されないが、折々の話題が出ていて、奈良の風物詩になっている。直近の記事は7/11付で、《暑中お見舞い申し上げます。七夕も終わりいよいよ夏本番、梅雨明けが待ちどうしい頃となりました。奈良では、7月31日から8月4日まで光とあかり祭が開催されます》。奈良公園で、「全国光とあかり祭in奈良」というイベントが行われるのである。
http://www.akarisai.com/
《全国の光のイベントが、奈良でご覧になれます。お昼は1300年祭をご見学いただいて、日が暮れたら光のイベントでお楽しみ下さい。夜の奈良公園は、少し涼しくなってまた違う奈良を見ていただけると思います》。
炭火で焼かれた天然鮎を、アツアツでいただいた
先日、女将さんの末娘の山下実穂さんが、NHKテレビに出演されていたのを拝見した。「関西もっといい旅~悠久の時 鹿とともに」(09.10.30放送)という25分の番組が、再放送されていたのである。局のHPによると《今回の「関西もっといい旅」は、奈良の鹿に出会う旅。旅人が、鹿を親友に持つ女子高生に出会い、角きり行事を観戦する中で、人と鹿がこれからも共に暮らしていく息づかいを感じる。 また、今回の旅では、鹿の案内人が登場し、奈良の鹿の歴史や、鹿のナレーションなどで、奈良の鹿を紹介する》。
女将さんのブログには、この番組のことも出ていた。09.10.10付の記事で、タイトルは《鹿娘現る!!》。《いよいよ鹿娘のデビューです。ひょんなことから、下の娘が鹿のぷーちゃんとやらとTVに出る事になりました。ぷーちゃんが、鹿の角(つの)きりに出る事になってその関係で娘も取材されるそうです》《まあ、奈良のPRになればよいのですが、それよりも今は中間テストの真っ只中です。鹿の事はテストに出ないと思うんですけど…?》。
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi?num_begin=35&mode=&session=
オンエア後のブログ記事(09.10.31付)には《ご声援有難うございました》《昨晩は、番組をご覧になったお客様、親戚、お友達と、沢山の方々から 見たよ!!とお電話を頂き有難うございます。なんか娘がテレビに出るとなると、私の方が落ち着かなくてドキドキしました。ともかく、余計な事しゃべらずにマズマズ大人しくしていてくれてよかったです。鹿って可愛いモンですね?!》。
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi?num_begin=30&mode=&session=
《公園の鹿達とは、私も生まれた時から一緒なんですが、娘みたいに名前をつけたり人生相談に乗ってもらったりした事は、1度もありません。何か違うものがあるんでしょうね…?怖くて怖くて、逃げてばかりいました。番組を見て、鹿に対する気持ちが少し優しくなりそうです》。オチが効いている。《私も若い男前の雄鹿を、紹介してもらおうかな?》。鹿男が聞いていたら、旅館に飛び込んで来るかも知れない。
食事をいただきながら女中さんに、「“むさし野”という名前の由来は」(この辺りの地名だった)とか、食材の名前だとかをあれこれ質問したが、嫌な顔もせず、ちゃんと確かめて答えて下さった。
料理も美味しいし、ロケーションも雰囲気も抜群の料理旅館である。なら燈花会の見物にも便利だ。ぜひいちどお訪ねいただきたい。
職場の歓送迎会だったが、夏場とあって、ご覧のとおり見た目も涼しげな料理がお膳に運ばれてきた。こちらの女将・山下育代さんは、「女将の独り言」というブログを書いておられ、産経新聞にも取り上げられた。タイトルは《もてなしの心 ブログも続ける奈良・若草山麓の「むさし野」女将》(「関西ういーくえんど」産経新聞 08.1.27付)だ。
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080127/trd0801271208009-n1.htm
《文豪にも愛された老舗を祖母の代に買い取り、孫の山下育代さん(50)が3代目女将を継承。格式ある伝統や、恵まれた環境に勝るとも劣らない最高のもてなしを、日々宿泊客に提供し続けている。むさし野は、少なくとも江戸時代末期には茶屋として営業していた。当時の奈良奉行が一服したという日記の記録もある。文豪・谷崎潤一郎の『吉野葛』にもその名が登場。終戦直後には、進駐軍の保養所として、また大阪経済界の重要な会議場としても使われた》。
《奈良県下市町在住の山下さんの祖母が昭和20年代、経営不振で売りに出されていたむさし野を買い取ったのが、一族での経営の始まりだ。「全くのずぶの素人だった」(山下さん)という祖母が、女将でありながら着物姿で洗い物もする姿を、幼いころから目の当たりにしてきた。3姉妹の長女として育ったが、一時期は宿を継ぐのを敬遠し、芸術系の大学に進学。卒業後も洋裁の専門学校に通ったが、体の弱い2代目女将の母を思い、20代半ばで3代目を継いだ》。
《父からは「この宿をつぶそうが大きくしようが、好きにすればいい」と言われた。ただ、最初にフロント係を任されたときには「厨房や客室など)裏のことも分かるようになれ」と気配りを教えてくれた》。
《接客係を任されると、長年勤めていた接客係の従業員たちが「伝統に甘んじて接客をないがしろにしている」と感じ、全員解雇。自ら面接し、新しい接客係を採用した。「慣れが出て、お客さまを見た目で判断するのが一番恐ろしい。常に謙虚な気持ちでなくては」。自分に言い聞かせる教訓でもある》。
お刺身は、鮮度抜群!
《平成4年の年の瀬。近くのごみ置き場で不審火があり、燃え移って建物の3分の1が焼けた。幸い客にけがはなかったが、崩れ落ちた屋根をみて恐怖感を覚え、「もうやめたい」と弱音を吐いた》。
《さらに、再建にあたっては、周辺一帯が風致地区であることから、安価な鉄筋コンクリート建ては認められず、瓦1枚に至るまで忠実な木造建築の再現を迫られた。それでも、過去に宿泊したことのある全国各地の小・中学生から義援金が届いたり、励ましの手紙をもらったりして、再起を決意。約1年半後、ようやく営業再開にこぎつけた》。
《「閉鎖的と思われたくない」と、17年からは「女将の独り言」と題したブログも地道に続けている。「たとえお客さまにしかられるときでも、逃げてはだめ。伝統や恵まれた立地条件におもねることなく、常に謙虚に耳を傾けることが大切」。最高のもてなしを心掛ける女将の厳しい一面を表情にのぞかせた》。
※山下育代さんのブログ「女将の独り言」
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi
「女将の独り言」は、さほど頻繁には更新されないが、折々の話題が出ていて、奈良の風物詩になっている。直近の記事は7/11付で、《暑中お見舞い申し上げます。七夕も終わりいよいよ夏本番、梅雨明けが待ちどうしい頃となりました。奈良では、7月31日から8月4日まで光とあかり祭が開催されます》。奈良公園で、「全国光とあかり祭in奈良」というイベントが行われるのである。
http://www.akarisai.com/
《全国の光のイベントが、奈良でご覧になれます。お昼は1300年祭をご見学いただいて、日が暮れたら光のイベントでお楽しみ下さい。夜の奈良公園は、少し涼しくなってまた違う奈良を見ていただけると思います》。
炭火で焼かれた天然鮎を、アツアツでいただいた
先日、女将さんの末娘の山下実穂さんが、NHKテレビに出演されていたのを拝見した。「関西もっといい旅~悠久の時 鹿とともに」(09.10.30放送)という25分の番組が、再放送されていたのである。局のHPによると《今回の「関西もっといい旅」は、奈良の鹿に出会う旅。旅人が、鹿を親友に持つ女子高生に出会い、角きり行事を観戦する中で、人と鹿がこれからも共に暮らしていく息づかいを感じる。 また、今回の旅では、鹿の案内人が登場し、奈良の鹿の歴史や、鹿のナレーションなどで、奈良の鹿を紹介する》。
女将さんのブログには、この番組のことも出ていた。09.10.10付の記事で、タイトルは《鹿娘現る!!》。《いよいよ鹿娘のデビューです。ひょんなことから、下の娘が鹿のぷーちゃんとやらとTVに出る事になりました。ぷーちゃんが、鹿の角(つの)きりに出る事になってその関係で娘も取材されるそうです》《まあ、奈良のPRになればよいのですが、それよりも今は中間テストの真っ只中です。鹿の事はテストに出ないと思うんですけど…?》。
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi?num_begin=35&mode=&session=
オンエア後のブログ記事(09.10.31付)には《ご声援有難うございました》《昨晩は、番組をご覧になったお客様、親戚、お友達と、沢山の方々から 見たよ!!とお電話を頂き有難うございます。なんか娘がテレビに出るとなると、私の方が落ち着かなくてドキドキしました。ともかく、余計な事しゃべらずにマズマズ大人しくしていてくれてよかったです。鹿って可愛いモンですね?!》。
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi?num_begin=30&mode=&session=
《公園の鹿達とは、私も生まれた時から一緒なんですが、娘みたいに名前をつけたり人生相談に乗ってもらったりした事は、1度もありません。何か違うものがあるんでしょうね…?怖くて怖くて、逃げてばかりいました。番組を見て、鹿に対する気持ちが少し優しくなりそうです》。オチが効いている。《私も若い男前の雄鹿を、紹介してもらおうかな?》。鹿男が聞いていたら、旅館に飛び込んで来るかも知れない。
食事をいただきながら女中さんに、「“むさし野”という名前の由来は」(この辺りの地名だった)とか、食材の名前だとかをあれこれ質問したが、嫌な顔もせず、ちゃんと確かめて答えて下さった。
料理も美味しいし、ロケーションも雰囲気も抜群の料理旅館である。なら燈花会の見物にも便利だ。ぜひいちどお訪ねいただきたい。
それにしても数寄屋風の素晴らしい外観でいかにも奈良らしい佇まいです。若草山からの展望でも全体の眺望に貢献されていると思います。
外観だけでなく中身も伴っているのですね。
今は景観全般について過渡期かもしれませんがいずれは風致地区周辺でもこのようなスタイルが奈良の町の調和モデルになり「景観と雰囲気なら日本では奈良」、という姿になって行けば素晴らしいことです。
「鹿娘」、初めて知りました。
また色々なストーリー展開楽しみにしていきたいものです。
> 数寄屋風の素晴らしい外観でいかにも奈良らしい佇まいです。
> 若草山からの展望でも全体の眺望に貢献されていると思い
> ます。外観だけでなく中身も伴っているのですね。
はい、外観も中身も素晴らしい料理旅館です。ウィークデーのお昼限定の会席(税サ込5000円)や、個室露天風呂のあるお部屋もあり、いろんな風に使えます。ぜひご利用下さい。
> 「鹿娘」、初めて知りました。また色々な
> ストーリー展開楽しみにしていきたいものです。
鹿を愛するお嬢さんと、鹿のぷーちゃん、こんな触れ合いもあるのだと感心しました。鹿って、人なつっこいですね。
また、過分なお言葉を頂き有難うございます。
奈良は今、全国各地からお客様がお見え頂き賑わっておりますが、今年の賑わいが来年へとつづくように願いたい物です。
私たちも、地元の皆様 ご旅行の皆様に、もう1度尋ねてみたい奈良、むさし野であるよう精進してゆくつもりでございます。
これからもご贔屓賜りますよう、お願い申し上げます。
有難うございました。
http://www.nara-musashino.com/cgi-bin/info/info.cgi
> 奈良は今、全国各地からお客様がお見え頂き賑わっております
> が、今年の賑わいが来年へとつづくように願いたい物です。
はい、全くその通りです。1300年祭が好評なので、驚くほど来県者が増えていますが、勝負は来年以降ですね。
美味しいお料理と立派な設備、温かいおもてなしで、多くのリピーターを呼んでいただけるものと期待しております。