tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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頭塔(ずとう)

2009年10月18日 | 奈良検定
頭塔(ずとう)というものが奈良にあるとは、奈良市に移り住んで25年経つまで知らなかった。恥ずかしながら、『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』(山と渓谷社刊)を読んで初めて知ったのだ。

これまで読んだ中で最も分かりやすい頭塔の説明が『奈良県の歴史散歩(上)』(山川出版社刊)に出ているので、紹介する。


「史跡頭塔保存顕彰会」のパンフレットより。他の写真はすべて9/8に私が撮影したもの

《頭塔石仏(奈良市高畑町921) 破石町(わりいしちょう)バス停から80mほど南へくだって西へ折れると、奈良町へ向かう清水(しみず)通りが延びている。清水通りに入ってすぐ右手の小高い丘が、頭塔(国史跡)である。かつては全体が鬱蒼とした森であったが、2000(平成12)年復元・整備が完了し、北側半分に方形7段の土塔(どとう)の姿がよみがえった》。



《奈良時代の僧玄の頭部を葬った塚であるとの伝承もあったが、これは767(神護景雲元)年、東大寺二月堂修二会(しゅにえ)の創始者実忠が建立したといわれる土の仏塔である。その姿は独特でほかに類例を見ない。7段あるうち奇数段には浮彫りや線彫りり石仏(国重文)が配置されており、発掘前から13基が確認されていた。いずれも天平時代のもので、三尊仏(さんぞんぶつ)や独尊仏(どくそんぶつ)・五尊仏など、天平仏画によくみられる図案である》。



《1986(昭和61)年から奈良国立文化財研究所によって発掘調査され、あらたに14基の石仏が見つかり、そのうち9基が重要文化財に追加指定された。これほど多くの文化財がまとまっている場所は、ほかにはない。現在、復元された北側には、見学デッキが設置され、周囲を見て回ることができる。なか、石仏のうち1基は大和郡山城の石垣に使用されている。またこの頭塔の内部に、創建当初の塔があることも判明している。見学の際は、頭塔入口向かいの仲村表具店に申し出て、鍵を借用する》。



いかがだろう。短いながら、うまく頭塔の要点がまとめられている。発掘調査の際に書かれた「頭塔-その系譜と造立構想-」(九州大学総合研究博物館教授 岩永省三氏)により若干補足すると《このような土の塔の類例は少なく、大阪府・大野寺土塔、岡山県赤磐郡・熊野遺跡などがあるにすぎない》。造塔の目的は《恵美押勝の乱後に称徳天皇が懺悔の意味で国家安穏を祈って造営したとする説(堀池春峯氏)が有力》。



実忠は《土木建築の新技術を持ち、技術者集団を擁していたらしく、多くの土木工事のほか、東大寺の経理・財政にも業績を残し、東大寺二月堂修二会を創始した人物としても知られる。頭塔の名は平安時代末にさかのぼるが、奈良時代の僧玄の首塚とするのは伝説に過ぎず、ドトウがなまってズトウとなり、玄伝説と結びついて頭塔と呼ばれるようになったのが真相らしい》。

頭塔は国の史跡に指定されているが、『奈良県の歴史散歩』に出ているように、お向かいの仲村表具店さんが現地管理されてきた(私が頭塔を訪ねたときは、雑草を鎌で刈っておられた)。見学を希望する場合は、仲村さんに電話でお願いすれば、午前9時から午後5時までの間に見学することができる。個人の方がこのように史跡を守って下さっているとは、全く頭が下がる。奈良では、よくこういうことがある。「史跡頭塔保存顕彰会」の連絡先は「奈良県教育委員会 文化財保存課内」となっているから県の管轄だが、よほど予算が乏しいのだろうか。



頭塔は、07年1月に人気テレビ番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系)で紹介された。インドネシアにある世界最大の仏教建造物、ボロブドゥール遺跡(世界遺産)と比較して取り上げられたそうだ。オンエアのあとは一時的に見学者も増えたそうだが、今は訪れる人も稀である。
※「世界ふしぎ発見!」を見て頭塔を訪ねた人の「旅の日記」
http://2tabi.fc2web.com/diaryzuto.html

頭塔へは、ならまちを抜け、ぶらぶらと歩いて行くこともできる。平城遷都1300年祭の2010年には、現地に管理人を置き、春と秋の一定期間中は自由に見学できるそうなので、ぜひお訪ねいただきたい。

※奈良市高畑町字頭塔921
奈良交通 市内循環バス「破石町」バス停西すぐ(駐車場なし)
車の場合は県営高畑駐車場から南へ徒歩約300m
入場は、頭塔南側の清水通り沿い(高畑郵便局から東へ徒歩すぐ)
見学時間は9時から17時 200円
問合せは史跡頭塔保存顕彰会(奈良県教育委員会文化財保存課内)
0742-27-9866(ダイヤルイン)
※見学希望者は、現地管理者の仲村表具店さん
(頭塔南側入場口から東すぐ)に連絡(0742-26-3171)

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4 コメント

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見学に行くぞ (畳薦)
2009-10-21 18:12:14
 「頭塔」ぜひデッキに登って見学したい。ついでに堺の土塔もどうなったか見に行きたい。とは言うものの、今月は停年生活の身に急変で
11月頭まではお仕事。電話を入れてぜひとも訪ねたい。
返信する
合格体験記 (tetsuda)
2009-10-22 05:39:41
畳薦(たたみこも)さん、コメント有り難うございました。誠に勝手ながら、3月にお書きいただいたソムリエの合格体験記を引用して、記事(10/22付)にさせていただきました、ぜひご覧下さい。また何かありましたら、コメントを頂戴いたしたく。

> 「頭塔」ぜひデッキに登って見学したい。

ぐるっと一周できるようになっています。ぜひ、落ち着かれたらお訪ね下さい。
返信する
ちょうど (ゆきたんく)
2011-05-26 01:09:00
こんばんわ、初めまして。
ゆきたんくと申します。
拙サイト幸たんくの管理人です。

「世界ふしぎ発見!」で取り上げられる2週間前にボロブドゥールにいました。
2007年12月29日のことです。
そしてその丁度1年前の2006年12月30日には頭塔におりました。
 確かに構造は似ていると思います。
 その規模の違いは甚だしいものですが。
 何らかの関係はあると思います。
 私のホームページで触れています。
 リンクのたびたんくから国内→奈良県→頭塔
 海外→インドネシア→12/29のタブ→ボロブドゥールで見れます。
 情報がおかしいところがあったら教えていただけると幸いです。
返信する
ボロブドゥール (tetsuda)
2011-05-26 05:06:40
ゆきたんくさん、コメント有り難うございました。情報満載の貴ホームページ、拝見しました。

> 「世界ふしぎ発見!」で取り上げられる2週間前にボロブドゥールにいました。

うーん、これはすごい遺跡です。

> 情報がおかしいところがあったら教えていただけると幸いです。

おかしいも何も。こんなに詳しく紹介していただいたのですね。工事中のお写真は、貴重な資料です。

来年は「古事記完成1300年」。奈良県下のゆかりの地を、ぜひお訪ねいただきたく。
返信する

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