寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3376話) 戻った傘

2022年09月10日 | 出来事

 “昨秋、日傘をなくしました。私は高校生から日傘を使っています。近年は普段用、おしゃれ用、予備の三本を持ち、紛失したのは一番気に入っていたおしゃれ用でシルバーにピンク掛かったものでした。自宅内外の思い付くところを捜しても見当たりません。年が変わり、春を迎えました。時々訪ねる呉服店先の傘立てにあるではないですか、あのなくした日傘が。「他の人のかも」と思いましたが、次に訪れたときも店先にあったため、店のスタッフに尋ねてみました。回答は「ずっと傘立てにあって冬や雨の日はしまいましたが、季節が巡ってきたのでまたそこに出したのです」。自分が忘れたものだと確信しました。保管してくれていた店に感謝しつつ、あの日傘をまた使っています。”(8月18日付け中日新聞)

 愛知県弥富市の主婦・大河内さん(52)の投稿文です。何ヶ月間店の傘立てに残されていたのであろうか。推測するに半年以上であろう。多分普通であれば、こんな忘れ物は数ヶ月で処分されるところではないだろうか。ただ置いておくだけではない。天気によって出し入れする。目障りでもあろう。よくぞ保存され、持ち主に遭遇できたものである。お互い感激ではなかったろうか。やはり誠意は通じるものである。
 小さなことながら、誠意が通じると嬉しいものである。こんな体験をいくつ持つことができるか、それが人生の豊かさに通じる気がする。本当は誰も数多く遭遇しているはずだ。ただすぐ忘れる。ボクは3年連用日記を書いている。2年目、3年目の時は前年、前々年分の文をよく読む。こんなことがあったのか、多くのことを忘れている。感激を新たにするのもまた必要である。