寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3103話) 百万遍

2021年03月02日 | 知識

 “私の住む地区には昔から百万遍という正月の行事があって、中学生以下の男の子だけで大きな数珠を持って地区内の五十軒くらいを回ります。私の長男も孫も参加していました。
 百万遍とは百万回極楽往生を祈願して、七日間に百万回念仏を唱えること。京都の知恩寺発祥の仏教行事とか。子どもたちは鉦を鳴らしてくるので、近くに来ると玄関を開け、線香を立てて待っています。子どもたちが回ってくると、玄関の中で家の者も一緒になって「チンチクリンノナンマイダ」と三回唱えて大きな数珠を回し「ヘイッ」と頭の高さに上げるのです。
 ところが今年はコロナ禍のため、子どもたちは全員マスクを着用し、家の中には入りません。しかも数珠を持とうとしたら「コロナのため、おうちの方はご遠慮ください。子どもだけで回します」と言われてしまいました。
 長男の参加していた頃は小学四年から、孫の時は小学一年から中学三年までの参加でした。近年は少子化のため、子どもが少なくなり、女の子も参加し、さらに親御さんが何人か付いているのです。時代ですね。この行事が絶えることなく続いてほしいと思いながら、子どもたちの鉦の音の余韻に浸っていました。”(2月6日付け中日新聞)

 岐阜県中津川市の志津さん(女・87)の投稿文です。もちろん初めて知る行事です。地方にはまだいろいろな行事があるものです。
 さて我が地域です。ボクの子供頃を思い出せばまだいろいろありました。破魔矢、七夕祭り、湿り祭り、虫祭り等々これらは全くなくなりました。しゃぎと(左義長)、国府宮の裸祭、そして結婚式や葬式、これらはまだ残っていますがその形は全く違ってきています。こうした歴史を書き残したものは、ボクが知る限り昭和31年発行の「千秋村史」くらいしか見当たりません。何事も一朝一夕にできるものではありません。経緯、歴史を知ることは大切です。ボクにできることはないか、ということをもう10年以上前に思いました。そして数人の高齢者にこの思いを話し、何でもいいからメモにして欲しいと頼みました。私もそれ以上言いませんでしたので、何を聞くこともない内に亡くなってしまいました。
 そして今、やるなら一時も早いほうがいい。書いてもらうのではなく、こちらから聞き取る、そしてまとめる。まとめたものが紙1枚でも2枚でもいい。まずはすること、と思い立ちました。そして数人の長老に協力をお願いしました。どうなることでしょう。