たた&にせ猫さんの備忘録

―演劇、映画、展覧会、本などなど、思うままに―

『建築家とアッシリア皇帝』シアタートラム

2022年11月28日 | 日記
     『建築家とアッシリア皇帝』シアタートラム 2022.11.
        2022年11月21日(月)~12月11日(日)

  作:フェルナンド・アラバール 翻訳:田ノ口誠悟 上演台本・演出:生田みゆき
  出演:岡本健一 成河

  世田パブのメール会員になっているので、時々お知らせが入る。腰の手術をしてから、術前よりは座っていられるようになったが、やはり長い芝居はつらい。二人芝居ならそれほど長くないだろうと、チケットセンターに電話したところ、チケットが取れた。案外簡単に取れたので、あまり人気のない演目なのかと思っていたら、当日は補助席まで満席。若い観客が多かった。そして、大変なことになんと2時間50分の長いお芝居だった。少しは情報を入れておけばよかったと不安になる。

  ストーリーも一切予習していなかったので、ブログを書くにあたって、トラムのページを見て、ああそうだったのかと思うとともに、ストーリーを知らなくても何ら困らなかったという思いも。
  
  一応ネットからストーリーを張り付けると、
  絶海の孤島に墜落した飛行機から現れた男は自らを皇帝(岡本健一)と名乗り、島に先住する一人の男を建築家(成河)と名付けて、近代文明の洗礼と教育を施そうとする。お互いの存在を求め合いながらも、ぶつかりあう二人。そのうち二人は、いろいろな人物の役を演じはじめ、心の底にある欲望、愛憎、そして罪の意識をあからさまに語り出す。その行為はやがて衝撃的な結末を生みだすきっかけになっていく……。

  前半は上記のストーリー的な展開、建築家が島を出ていき…。後半は皇帝の罪、母親との関係についての断罪に話が展開して、皇帝は殺され、建築家が取り残され、結構グロテスクな話になり、そしてまた最初に戻ったところで劇は終わる。
  
  有名な不条理劇ということだが、不条理劇という理屈っぽさよりあれこれごったで、とっ散らかりながらも、圧倒的という。にせ猫さんは野田秀樹風という感想だったけれど、野田秀樹なら、結構どこかで理屈っぽくて違った治まり方かなあと。皇帝の妄想の話にも、それこそ病院の一室の話にもせず、最初の場面に戻る潔さ。

  いろんなテーマが次々投げ入れられ、ごっこ遊び風にいろんな役を次々演じていく―哲学的だったり、卑猥だったり、深刻だったり。演劇人なら、一度はやってみたいと思うだろう。とはいえ大変な運動量。成河さん、岡本さんともにせりふの通り良く、観客をガンガン引っ張っていき、観客は、役者さんたちのエネルギーにその時々付いて行く格好。にせ猫さん、二日目だから良いけど、終わりまでこれでやるのと心配するほど。

  岡本さんは50歳は過ぎておられるはずだが、身のこなしの軽いこと。二人のフィジカルの強さに裏打ちされた、役の変化自在さ。時に、何処まで言ったっけと会場に問う本音的な間合いも笑いを誘い、膨大なせりふと格闘する演者のうまさ。
  二人芝居を堪能。
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『西行 語り継がれる漂泊の歌詠み』 五島美術館

2022年11月23日 | 日記
     『西行 語り継がれる漂泊の歌詠み』 五島美術館 2022.11.18
        二〇二二年十月二十二日土~十二月四日日

  書道のお仲間と『西行』展に。何度か五島美術館に足を運んでいるが、今までで一番混んでいたかも。西行って人気があるんだ!
  展示は4部構成。第一部は西行とその時代、第二部は西行と古筆、第三部は西行物語絵巻の世界、第四部は語り継がれる西行。

  第一部、早速国宝が4点。平治物語絵巻は先日ボストン美術館展で<平治物語絵巻三条殿夜討ち巻>が出ていたが、今回は<平治物語絵巻六波羅行幸巻>。やっぱり描写が緻密で、色彩もきれい。
  西行筆の<僧円位書状>と<一品経和歌懐紙>、<藤原定家筆拾遺愚草 下>も国宝。相変わらず仮名は読めないけれど(前より釈文と見比べると少しわかるのがうれしい)、闊達、自由に書かれた筆致。墨の濃淡がくっきりしているが、掠れというのはない。<円位書状>など、なんかすごい書きっぷり。
  第二部は一条摂政集、曾丹集切、白河切、五首切、月輪切など、伝西行筆。
  第三部は西行物語絵巻の世界で、西行の人生、足跡が絵巻になっている。鎌倉時代のも江戸時代のもある。尾形光琳、俵屋宗達も描いている。
  第四部の語り継がれる西行では、西行の歌や人生の一コマが絵画や能の題材になり、江戸時代の読み本、パロディにもなっていたり。西行物語って人気があって、人口に膾炙していたんだと。

  展示室2では蒔絵の硯箱、黄瀬戸の平茶碗、土佐光起の<三夕図>、井原西鶴画や応挙の<江口君図>、好きな作家の古径の<西行法師>などが展示。

  作品数が多く、充実した展示内容。皆さん時間をかけて熱心に見ておられる。

  一息ついて、庭に出てみたが、紅葉はまだ。たっぷり見たので、後はランチ。
  漂泊の歌詠みということだがどうやって生活していたのだろうと話題に。当時の有名文化人だから、招待が多かったのではなど推測してみる。

  さて、目下本の整理中。仕事関係の専門書を古書店に売っても二束三文なので、後輩にもらっていただこうと、本を整理していたら、未読の一般書もいろいろ出てきた。辻邦生の立派な外箱付の『西行花伝』。これを読めばいろいろ分かるかな。
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『将軍家の襖絵』根津美術館

2022年11月23日 | 日記
     『将軍家の襖絵』根津美術館 2022.11.13
       2022.11.3(木・祝)~12月4日(日)

  サントリー美術館の後は根津美術館に。久しぶりの美術展ハシゴ。

  根津美術館は建物の風情よく、展示もいつも品が良いので、浜松在の友人も気に入るかなと連れ立ってきたが、企画展についてはあまり吟味していなかった。
  表題が『将軍家の襖絵』というので、なぜが江戸城とか二条城とか、江戸時代のお城の襖絵と思い込んでいて、サブタイトルの『屏風絵でよみがえる室町の華』を見落としていた。室町時代、足利将軍の会所の襖絵の展示だった。
  
  ―会所とは人々が集まって能・狂言を鑑賞し、連歌会や茶会を催した建物。
  室町文化の象徴ともいえる会所の襖は、将軍家御用絵師である周文絵師をはじめとする、当代を代表する画家の絵で飾られた。ただし、これらはすべて失われ現存しない。
  今回の展覧会は、足利将軍邸の会所襖絵における典型的な画題を選び、室町後期から江戸時代に制作された屏風絵を集め、一堂に展示することによって<将軍家の襖絵>の世界をよみがえらせる企画。―

  襖絵が25点展示されている。
  序章は足利将軍家の絵画―唐絵と和製の唐絵、第1章は山水荘厳―四季山水と瀟湘八景、第2章は将軍の理想―勧戒と狩猟、第3章は和歌世界の領有―名所と遊楽、第4章は周文画の記憶―山水景の中の花と鳥

  テーマに沿った襖絵がそれぞれ3~7点展示されているが、襖絵は大きさがあるので、どれも立派。天章周文伝の水墨画の風情、式部輝忠の韃靼人狩猟図が面白く、天橋立図の緑が少しなつかしい。
  夏珪様式、馬遠様式など解説されている。最近『中国絵画入門』宇佐美文理著・岩波新書を読んでみたけれど、画家の名前はおよそ覚えられないので、この二人の画家の名前、本に出てきてた??。
  P112にありました。……南宋院体画を最も特徴的に示すのは、馬遠あるいは夏珪の、例えば右下に岸、左上に遠山を描くという、小画面の対角に景を配置する、いわゆる「馬一角」と称される小画面の山水である。……雪舟とかに影響を与えたらしい。
  
  同時開催は<仏教美術の魅力―天部像―><古代中国の青銅器><彫漆―あこがれの唐物><茶人の正月―口切―>
根津の青銅器はきれいで、その中でも、双羊尊がかわいくて好きだが、友人も気に入ってくれて、うれしかった。

  青銅器の後は、庭を少し散策。紅葉はあまりしていなかったが、庭においてある石のベンチに座っておしゃべり。心地よい空間。
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『美をつくし 大阪市立美術館コレクション』サントリー美術館

2022年11月15日 | 日記
     『美をつくし 大阪市立美術館コレクション』サントリー美術館 2022.11.13
         2022.9.14水➤11.13
  
  チラシによりますと―<美(み)をつくし>大阪市章でもある「澪標」になぞらえたもの。難波津の航路の安全のために設けられた標識「澪標」のように、美の限りを尽くしたコレクションの世界に身を尽くしてご案内します―。
  <なにコレ>のキャッチコピー。なにわのコレクションということらしい。

  友人が浜松から上京、4時に知人に会うまで時間があるとのことで、一緒に美術館巡りをすることに。
  サントリー美術館は企画展の最終日なので、混んでいるかと心配だったが、比較的ゆったりしていました。

  展示は、<祈りのかたち 仏教美術> <日本美術の精華 魅惑の中近世美術> <はじまりは「唐犬」から コレクションを彩る近代美術> <世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術> <江戸の粋 世界が注目する近世工芸>のコーナーに分かれて展示、解説も丁寧です。

  仏教美術では、菩薩立像、大般若経、法華経、春日社寺曼荼羅が印象的。書道を習うようになって、経典の巻物を見るたびに圧倒されるというか。金泥が光っています。

  展示期間による入れ替えがあり、チラシにある「豊臣秀吉像」を見ることができなかったのがちょっと残念。
  尾形光琳の図案集。こういうのを見て修練したり、発注したりしていたのかと。
  さすが森狙仙の「猿図」、もふもふ。関蓑州の「象図屏風」の象が大きくて、迫力あり。海を渡って連れてこられて、象もさぞ大変だったのでは。写楽の「田辺文蔵」は写楽だった。北斎の肉筆の「潮干狩図」はチラシに写真あり。

  橋本関雪の「唐犬」。今村紫紅の「業平東下り」、紫紅は好きな画家。上村松園の「晩秋」はやはりすごい。

  中国美術コレクション、古い石造仏が魅力的。白磁、青磁の美しいこと。

  そして江戸の粋、近世工芸では数多くのカザールコレクションが展示されている。
  櫛、印籠、根付、小さくてデザインは凝っていて、緻密な彫や造形。集め始めたらやめられなくなりそうな品々。獅子舞牙彫根付のアニメに見送られて外へ。
  
  キャッチコピーはなにコレと軽い感じだったが、展示内容は重みありでした。
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『女の一生』新橋演舞場

2022年11月12日 | 日記
     『女の一生』新橋演舞場 2022.10.20
       2022年10月18日(火)~23日(日)

  作:森本薫 補綴:戌井市郎 演出:段田安則
  出演:大竹しのぶ 風間杜夫、銀粉蝶、段田安則、高橋克実他

  杉村春子さんが生涯947回にわたって主人公を演じた当たり役で、杉村さん亡き後も、別の役者さんで何度か再演されている。日本演劇を代表する不朽の名作と言われている演目。古臭い感じもするが、好きな役者の段田さんが演出・出演。高橋さんも好きで、大竹さん、風間さん、銀粉蝶さんと達者な役者さんぞろいで、外れない芝居のはず、ということで、にせ猫さんがチケットを取ってくれた。久しぶりの新橋演舞場。
  結構な人気で、会場に着くとお弁当に長蛇の列、あっという間に売り切れ。

  お話は、日露戦争で旅順が陥落し、日本中を熱狂させた日から始まり、空襲で東京が焼け野原になったところで終わる。
  清国との貿易で一家を成した堤家だが、当主はすでに亡くなり、妻のしず(銀粉蝶)が義弟・章介(風間杜夫)に助けられながら、困難な時代を処していた。そのような堤家に、戦災孤児の布引けい(大竹しのぶ)が迷い込み、そのまま女中になる。甲斐甲斐しい働きぶりを見せるけいは、しずに重宝がられる。次男・栄二(高橋克実)とけいはお互いにほのかな恋心を抱くようになるが、しずは跡取りである長男・伸太郎(段田安則)の気弱な性格を気がかりに思い、気丈なけいを嫁に迎えて、堤家を支えてもらう事を望む。しずの恩義に抗しきれないけいは、伸太郎の妻となる。家の柱となり、家を切り盛りするが、家や商売を優先する気丈さに学者肌の夫は家出し、やがて娘も去っていく…。昭和20年、焼け跡の廃墟に佇むけいの前に、思想犯として受刑していた栄二が戻ってくる。
  
  押し寄せる困難、孤独に対して『誰が選んでくれたのでもない。自分で選んで歩きだした道ですもの。』と、自分を奮い立たせるせりふが、杉村春子氏の生きざまと相まって、戦中戦後の困難な時代の中、自分を通して生きる人間の矜持を感じ、戦後の厳しい状況時に、前に進んでいく強さ、復興への希望を喚起されたのではと。

  確かに人生は誰のものでもなく、その時々直面することに対して曲がりなりにも対処していかなければならない。
  声高に自分で決めたことだからどのような結果になってもそれを受け入れ、進んでいくと言う、あるいはそこまで言わなくても、あの時ああ決めざるを得なかった、受け入れて進んでいくしかないのよねえと諦念を自問自答するーそれは人生の時間が経った人の言葉かもしれない。年配者向きかも。

  お話は時系列に則って進み分かりやすく、演者さんたちの芸達者に助けられ、サクサク見ることができる。笑える場面もうまく作られているし、深刻な場面もある。大竹さんをはじめ、若い時から演じるのだが、声の高さ、身のこなしなど上手に演じ分けられていて皆さんさすが。お芝居らしいお芝居を見たという感想。
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